ゾスマ・３９

アルバニアの道路掃除夫が
一銭の貯金もないというのに
ある日
好きなだけ女にもてたいと
悪魔に願った

すると悪魔は
リトアニアの教師から
きれいな服を盗んで持って来た

チェコスロヴァキアの市長から
立派な姿を盗んで持って来た
ルクセンブルクの大臣から
富と位を盗んで持って来た

そしてアメリカ人から人生を盗み
アメリカ人に生まれさせてやった

道路掃除夫の馬鹿はそこで
民主主義の自由をむさぼり
好きなことをやった
金をたらふくもうけて
女をあさり
妻を何度も替えた

女優が欲しいと思えば
悪魔は女優をつれて来た
隣人の妻が欲しいと思えば
悪魔は隣人の妻をつれて来た

自分の思い通りにならないものはない
そう思った馬鹿は
ある日とうとう
大統領に立候補した
そして大盤振る舞いをして
愚民を巻き込み
誇らかに世界最高の聖者になる決意を宣言した

だが選挙運動の最中のある日
彼はとうとう知った

アジアの片田舎の掃除夫が
天使のように美しい女をひとり
妻に持っていることを

その日から馬鹿は
何もかもが嫌になった
だが今更
立候補を取り下げるわけにもいかない

馬鹿はやり続け
とうとう選挙を勝ち抜いて
大統領になった

これを
永遠に語りついでいくがいい