ズブラ・１２

酔うていく
馬鹿は酔うていく

ごまかしをしている自分の
恥ずかしさを忘れるために
魂が肉体から離れていくように
自分を現実から遊離させ
まるで物語を読んでいる
読者のように
たんたんと自分を語り始め
まやかしを吹き
見えると錯覚する霧の中に
都合のいい状況を作り
まんまと
自分を勝った側の立場に置くのだ

イエスを馬鹿にしたやつが
状況が暗いと見るや
イエスの味方についたように
狸が
人間の兄弟の中に紛れ込むように
馬鹿はまんまと
正義の庭の隅に棲みつく

ばれていないと
思い込んでいるうちはいいが
少しでも人が
おまえの正体はとうにわかっていると
におわせれば
大いに慌てて
馬鹿な言い訳を繰り返し
取り繕おうとするが
言う端から
人に嫌な顔をされるのがつらく
また一層馬鹿になる

そしてまた
酔うていく
酔うていく
馬鹿なのだこんなことは
嘘なのだ
幻なのだ
夢なのだ

おれはまだ
いやなことはしていない

これでいいんだ

馬鹿は酔うていく