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ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

癒着胎盤、問題と解答

2010年02月28日 | 周産期医学

【正誤問題】

(1)子宮内膜症は癒着胎盤の原因になりやすい。

(2)癒着胎盤は胎盤が子宮内膜基底層に付着するものをいう。

(3)子宮内膜掻爬術や子宮内容除去術の既往は癒着胎盤の危険因子の一つである。

(4)癒着胎盤は、楔入胎盤(狭義の癒着胎盤)、嵌入胎盤、穿通胎盤に分類される。

(5)既往帝切例の前置胎盤では1~2%に癒着胎盤が発生する。

(6)前置胎盤単独では癒着胎盤の原因とならない。

(7)前置胎盤の帝王切開では、術前に輸血と子宮全摘の可能性について説明しておく必要がある。

(8)癒着胎盤が疑われる症例では術前にカラードプラかMRIを施行する。

(9)癒着胎盤の原因はほとんどが先天的な原因による。

(10)癒着胎盤の治療では用手剥離を強行する。

解答 ――――――

(1)X 子宮内膜症は癒着胎盤の原因になりにくい。

(2)X 癒着胎盤は、胎盤の絨毛が子宮筋層内に侵入して、胎盤の一部または全部が子宮壁に強く癒着して、胎盤の剥離が困難なものをいう。 

(3)O 癒着胎盤の原因:①先天的な子宮内膜形成不全、②多産婦に多い、③子宮の手術瘢痕(帝王切開術後、筋腫核出術後、Strassman手術後、子宮形成術後など)、④子宮内膜の過度掻爬(人工妊娠中絶、子宮内膜病理組織検査)、⑤子宮奇形⑥粘膜下筋腫合併、⑦子宮腺筋症合併、⑧前置胎盤(前置胎盤癒着) 

(4)O

(5)X 既往帝切例の前置胎盤では10~15%に癒着胎盤が発生する。帝切既往回数が0回、1回、2回、3回、4回以上である前置胎盤患者の癒着胎盤合併率はそれぞれ、1~5%、14%、23%、35%、50%と報告されている。

(6)X 前置胎盤の約5~10%に癒着胎盤が合併する。前置胎盤の胎盤付着部位である子宮下部は脱落膜形成が乏しいためとされる。

(7)O 前置胎盤の帝王切開は出血多量となることが多いので、予定帝王切開においては同種血輸血または自己血輸血の準備を整えて行い、複数の医師が立ち会うことが望ましい。術中に出血コントロールが困難な場合には子宮摘出を考慮する。前置胎盤の4.5%症例に子宮摘出が必要であったとの報告もある。癒着胎盤を合併していた場合、出血量は前置胎盤単独の場合よりさらに増加し止血のための緊急子宮摘出頻度が増加する。

(8)O

(9)X 癒着胎盤の原因はほとんどが後天的瘢痕による。

(10)X 輸血血液を用意して、血管を確保の上で、胎盤用手剥離術を行う。付着胎盤や一部の楔入胎盤では用手剥離可能な場合もある。嵌入胎盤、穿通胎盤では大量出血をきたすリスクが高いので、大量輸血血液を準備した上で子宮摘出術を行うのが原則である。

******

【正誤問題】

(1)癒着胎盤の子宮温存治療では胎盤を二次的に除去する。

(2)癒着胎盤の治療の原則は子宮全摘出術である。

(3)前置胎盤では癒着胎盤が起こりやすい。

(4)癒着胎盤は絨毛が床脱落膜に侵入したものである。

(5)妊娠高血圧症候群では癒着胎盤を起こしやすい。

(6)子宮奇形は癒着胎盤の危険因子となる。

(7)子宮筋腫核出術の既往は癒着胎盤の原因とならない。

解答 ――――――

(1)O 弛緩出血やDICを認めず、妊孕性の温存を強く希望し、十分なインフォームドコンセントが得られた場合に限り、保存的治療の適応となる。その場合は、化学療法(MTX、エトポシド)、子宮動脈塞栓術(UAE)などが試みられることもある。

(2)O 輸血血液を用意して、血管を確保の上で、胎盤用手剥離術を行う。付着胎盤や一部の楔入胎盤では用手剥離可能な場合もある。嵌入胎盤、穿通胎盤では大量出血をきたすリスクが高いので、大量輸血血液を準備した上で子宮摘出術を行うのが原則である。

(3)O 子宮下部は脱落膜形成が乏しいため、絨毛が子宮筋層にまで侵入しやすく癒着胎盤が起こりやすい。

(4)X 癒着胎盤とは床脱落膜の欠損のため絨毛が子宮筋層に侵入したものである。

(5)X 妊娠高血圧症候群は癒着胎盤の危険因子とはならない。

(6)O 子宮奇形は着床異常をきたす。

(7)X 粘膜下筋腫などでは子宮内膜に手術操作が及ぶことがある。 


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