Intestinal malrotaion
【概念】 胎生期に胎児の臍帯内で発達した中腸は、上腸間膜動脈を軸に反時計方向に回転し腹腔内に復帰する。中腸はさらに腹腔内で回転を続け、正常の位置で後腹膜に固定される。この過程のいずれかに障害が起こると、腸の位置異常を生じる。これを腸回転異常症という。
【発生頻度】 出生5000~10000に1人。
【臨床症状】 半数以上が生後2日以内に繰り返す胆汁性嘔吐で発症(十二指腸閉塞)、哺乳不良。中腸軸稔転を起こした場合は、広範な腸管の壊死をきたし敗血症・ショックとなるため、早期の診断と緊急手術を要する。60%の症例は新生児期に発症するが、1歳過ぎに発症する場合もある。
【診断】 超音波検査、注腸造影、上部消化管造影で診断可能である。
・ 腹部単純X線: double bubble sign
・上部消化管造影: cork-screw sign
・ 注腸造影: 回盲部が上腹部正中付近にある(確定診断)
・ 腹部CT: whirl sign
【治療】 中腸軸捻転を合併しなければ緊急手術の必要はないが、中腸軸捻転が疑われる場合には、腸管の壊死が急速に進行するため緊急手術を要する。
Ladd手術: 手術で捻転を解除し、Ladd靱帯を切離、盲腸・上行結腸から十二指腸・上部空腸を剥離して腸間膜根部を十分に伸展することで、捻転を予防する。回盲部を左下腹部にもっていき、虫垂切除を付加する。
中腸軸捻転で広範囲の腸壊死に陥った場合は、切除する腸管の範囲をできるだけ少なくすることを最優先にして壊死腸管を切除し、端々吻合を行う。
【予後】 腸管壊死を免れLadd手術が行われた例の予後は良好である。広範囲腸切除により短腸症候群をきたした症例の生存率は25~80%と言われる。短腸症候群によって小腸不全に陥った場合は小腸移植の候補となり得る。