congenital heart disease: CHD
【発生頻度】 CHDの発生頻度は出生児100人に1人で、重症CHD児はその3分の1である。CHDは最も頻度の高い先天異常であり、乳児死亡原因の第1位である。
【胎児診断の目的】
・ 十分な術前情報により、手術成績向上に寄与する。
・ 合併症の予防により、後遺症の軽減と医療コストの削減に寄与する。
・ 出生前に妊婦および家族へ十分な説明ができる。
【現状】
・ 四腔断面像(four chamber view)に著しい異常をきたす疾患は高率に診断できる。(単心室、Ebstein奇形など)
・ 四腔断面像に所見が乏しく、流出路に異常所見のあるCHDの診断率は低い。(完全大血管転位症、両大血管右室起始など)
【治療】
・ 動脈管依存性CHD: 動脈管開存により肺血流が保たれている症例では、プロスタグランジンE投与によって、手術の適応となるまで動脈管を開存させる。
・ 卵円孔狭窄: バルーン心房中隔裂開術。
・ 大動脈全狭窄、肺動脈弁狭窄: バルーン弁形成術。
・ 高度の心拡大、心不全、呼吸不全を来す疾患では呼吸管理、抗心不全治療を行う。
● 超音波・ルーチンスクリーニング
Standard 2D Ultrasound Examination of the Heart
1)左右の決定法
モニター画面の右側に児頭、左側に足がくるような長軸断面をとる。プローブを反時計方向に回転させる。背骨を時計の文字盤の12時とすると、3時方向が左、9時方向が右になる。
2)腹部断面
・ 胃泡の位置を確認する。
・ 内臓錯位(心臓と胃が逆サイド):ほぼ100%心奇形が合併、他の奇形も多い
・ 内臓逆位(心臓、胃ともに右サイド):10~20%に心奇形が合併
3)four chamber view(4CV) 四腔断面像
・ 心胸郭断面積比 cardiothoracic area ratio(CTAR):正常35%以下
・ Cardiac Axis(脊椎-胸骨を結ぶ直線と心房中隔-心室中隔を結ぶ直線が作る角度): 正常 45° ±20°
4)five chamber view(5CV)
・ 4CVに大動脈も含めたview
5)three vessel view(3VV)
・ 肺動脈、大動脈、上大静脈が左前から右後ろに向かって一直線に並ぶ。大きさが肺動脈>大動脈>上大静脈の順番
6)three vessel trachea view(3VTV)
・動脈管と大動脈弓が下行大動脈で合流し、これらの血管の外側に気管をみる。
Matsui H et al., Circulation. 2008; 118: 1793-1801. Fig. Magnification of the 3-vessel and trachea view showing the pulmonary trunk (PA) leading into the arterial duct (D). The isthmus (I) is measured as shown by the line just before it enters the descending aorta and the duct measured opposite it (line). L indicates left; R, right; and Ao, aorta.
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問題 胎児心臓超音波検査法・四腔断面像で異常所見がみられる心奇形はどれか。1つ選べ。
a. Fallot四徴症
b. 完全大血管転位症
c. 両大血管右室起始
d. 小さな心室中隔欠損
e. Ebstein奇形
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正解:e
Ebstein奇形の胎児心エコー: 四腔断面像で右房が拡大し、僧帽弁に比べ、三尖弁が右室内に下降しているように見える。
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問題 心奇形のうち四腔断面像で異常を示さないのはどれか。1つ選べ。
a. 心内膜床欠損
b. Ebstein奇形
c. 完全大血管転位症
d. 単心室
e. 動脈管早期閉鎖
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正解:c
完全大血管転位の胎児心エコー:四腔断面像は正常所見。左室から肺動脈(血管が分岐する)が、右室から大動脈(血管がアーチを描く)が出ていることを確認する。正常では肺動脈が大動脈の左前方を走るが、完全大血管転位症(complete TGA)では大動脈が左前方を走る。合併する心室中隔欠損(VSD)、肺動脈狭窄症(PS)、動脈管開存(PDA)を描出し、各型の分類をする。