ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

Ebstein奇形

2011年07月31日 | 周産期医学

Ebstein anomaly

定義: 三尖弁のうち中隔尖と後尖が、正常の弁輪部より心尖部方向に偏位して右室内に付着する右室流入部の異常で、先天性心奇形の約0.5%とまれな疾患である。右室は右房化した部分と本来の右室機能を持つ部分に分けられる。

Ebsteinsdiagram

Ebstein

臨床症状: 症状は、生涯無症状のものから、胎児期から胎児水腫などの重篤な症状を呈するものまで種々ある。半数の例で、新生児期にチアノーゼや心雑音を有している。頻脈発作などの不整脈が多くみられ、時には突然死をきたすこともある。

病態:
・ 三尖弁は通常逆流を有し、約3/4に心房中隔欠損を合併する。
・ 右心不全徴候(肝腫大、頸静脈怒張)・チアノーゼ・心房性不整脈を呈する。
・ 本症の約20%にWPW症候群(発作性上室性頻拍を生じる)の合併をみる。

検査所見:
・ 著明な心拡大(箱型心陰影 "box shape")

Ebsteinxp

・ 胎児心エコー: 四腔断面像で右房が拡大し、僧帽弁に比べ、三尖弁が右室内に下降しているように見える。

Ebsteinecho

・ 全収縮期雑音(三尖弁閉鎖不全)、単一Ⅱ音(ⅡPの音が減弱するため)、心尖部に奔馬性調律(gallop rhythm)

治療: 軽症例は治療対象とならない。低酸素血症や重症不整脈を示した場合は治療の対象になる。外科的治療の成績は一定してない。三尖弁挙上転移術、三尖弁置換術などの手術治療がある。合併疾患のある場合は症例ごとに手術の方針を決める。

予後: 新生児期に高度の心不全・心拡大をきたした症例の予後は不良である。肺低形成をきたした場合も予後不良である。