ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

最近の産婦人科診療体制の動向について

2010年10月10日 | 飯田下伊那地域の産科問題

最近の産婦人科施設数に関するニュースで、産婦人科・産科を標榜する病院数は、一貫して減少し続け、過去20年間で4割減となったと報じられました。

その一方で、最近は産婦人科志望者が増加傾向にあり、産婦人科基幹病院の産婦人科責任者に対する産婦人科動向意識調査では、『1年前と比べて良くなっている』との回答が過去3年間連続して増加したとの調査結果が発表され、産婦人科医の現状認識が改善傾向にあることが示されました。

これは、我が国において、産婦人科診療体制の変革が徐々に進んでいるためと考えられます。もちろん現在の姿が最終段階というわけではなく、これからも時代とともに産婦人科の診療体制はどんどん変化し続けると思います。

例えば、私が勤務する病院が属する医療圏においても、20年前には産婦人科を標榜して分娩を取り扱う施設数は十数施設ありましたが、年々施設数が減少し続けて、今では産婦人科標榜施設は5施設(2病院、3診療所)のみとなり、そのうち分娩を取り扱う施設はわずかに2施設(1病院、1診療所)のみとなり、過去20年間一貫して減少し続けてます。その一方で、産婦人科基幹病院である当科の診療体制は、20年前には産婦人科医1人、助産師2人のみだったのに対し、現在では、産婦人科医6人、助産師37人となり、当科の業務量は劇的に増大し、地域の産婦人科診療体制は20年前と比べると大きく変化しました。しかし、現在の姿は長い歴史の中のほんの一断面に過ぎず、当然、今後も大きく変化し続けます。医療圏ごとに状況は異なりますが、どの医療圏においても産婦人科診療体制の変革は徐々に進行しつつあります。それとともに、産婦人科診療全般が20年前とは大きく変化しました。私自身も、20年前と現在とでは日常やっていることは全く異なります。診療全般のやり方や考え方が大きく変化し続け、数年前の常識は現在では全く通用しなくなってます。

定年が近づくとともに、時代の変化についていくことがだんだん難しくなっていくのは、誰しも避けられないことです。どの職場においても、我々のようなロートルに期待される最も重要な役割は、若い人達をむりやり古い型にはめることではなく、時代の流れを察知して、若い人達が次の時代でも大活躍できるような環境を整備することにあると思います。

****** 2010年9月24日、キャリアブレイン

産婦人科病院、20年で4割減少-医療施設調査

 産婦人科・産科を標ぼうする病院数は昨年10月1日現在1474施設で、前年から22施設(1.5%)減少したことが、厚生労働省が9月22日に発表した2009年の「医療施設調査・病院報告」で分かった。この20年間では約4割の減少となった。激務などによる医師不足が指摘され、全国で診療休止や閉鎖が相次いだ産婦人科・産科の実態を反映している。
 産婦人科・産科の内訳は、産婦人科が1294施設(25施設減)、産科180施設(3施設増)。1990年には計2459施設だったが、減少が続いている。

(以下、略)

( 2010年9月24日、キャリアブレイン )

****** 2010年10月4日、キャリアブレイン

産婦人科医の現状認識、改善続く―日産婦学会の意識調査

 日本産科婦人科学会はこのほど、現場の産婦人科医に現状認識などを尋ねた「産婦人科動向意識調査」の結果を公表した。調査結果によると、1年前に比べて産婦人科の状況が「良くなっている」としたのは44%で、「悪くなっている」の17%を大きく上回った。2008年の調査開始以来、「良くなっている」は増加が、「悪くなっている」は減少が続いており、産婦人科医の現状認識は年々改善されている。
 調査では、08年から毎年7月に、同学会の卒後研修指導施設の産婦人科責任者を対象に同じ質問をしている。「調査対象は、ほぼすべての産婦人科基幹病院を網羅していると考えられる」(同学会)という。3回目となる今年の調査では、対象744施設のうち458施設から回答を得た。回答率は62%。
 調査結果によると、産婦人科全体の状況が1年前より「良くなっている」と答えたのは44%(「良くなっている」5%、「少し良くなっている」39%)。08年の18%、昨年の37%から増加が続いている。一方、「悪くなっている」と答えたのは17%(「悪くなっている」3%、「少し悪くなっている」14%)で、08年の47%、昨年の24%から減少が続いている。
 良くなっていると感じる理由(複数回答)は、「産婦人科志望者の増加」が85施設で最も多かった。以下は、08年と昨年の調査で最も多かった「一般の方・マスコミの理解の深まり」26施設、「待遇の改善傾向」22施設などと続いた。
 一方、悪くなっていると感じる理由(同)は「産婦人科医の不足」が21施設で最も多く、「分娩施設の減少」7施設がこれに続いた。また、今回の調査で初めて「地域格差の拡大」が6施設から指摘された。

(以下、略)

(2010年10月4日、キャリアブレイン)