ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

迫る限界 お産の現場

2007年11月29日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

全国各地で分娩を取り止める産科施設が相次いでいる中で、何とか生き残って、分娩取り扱い業務を続けている医療機関では、業務量が以前と比べて急増しているにもかかわらず、勤務する産科医師の絶対数はむしろ年々減少し続けてます。

それぞれの地域の実情に合わせて、病診連携、助産師の活用、分娩予約の制限など、あの手この手の必死の生き残り策が次々に実行に移されてます。

しかし、産科医療を取り巻く状況は急速に悪化する一方であり、個々の医療機関や自治体の生き残りを賭けた自助努力も、そろそろ限界に近づきつつあります。

参考記事: 

 周産期医療が危ない   

 分娩取り扱う病院 激減

 産める病院が1年半で1割減、読売新聞全国調査

 産科医療に関する新聞記事

 分娩体制崩壊の危機

****** 朝日新聞、島根、2007年11月28日

迫る限界 お産の現場

 隠岐病院(隠岐の島町)での分娩業務が休止され、島に住む妊婦がいっせいに海を渡ったのは昨年春から秋にかけてのこと。医療過疎地を多く抱える島根の慢性的な産科医不足は依然解消されず、分娩を取りやめる施設が相次ぐ。業務を今も続けている病院や診療所の自助努力は限界に近づいている。

Shimane

解消されない医師不足/5病院 相次ぎ分娩休止

 松江生協病院(松江市)の看護部長室には2199人分の署名用紙の束が置かれている。「産科及び不妊外来の継続に関する嘆願書」。この病院で出産したある女性は「また妊娠したら、是非生協病院で出産したい」と余白につづっていた。錦織美智枝部長は「現場にいる看護師や助産師は残念な気持ちでいっぱいです」と語る。

 女性診療科(産婦人科)の常勤医3人のうち2人が、年内で退職する。病院が年明けから分娩を休止する方針を決めたのは10月中旬。後任を探すため、ホームページに広告を載せたり、大学病院を回ったりしているが、今のところあてはない。このままだと、同病院で健診を受けていた50人余りの妊婦が、ほかで産まなければならなくなる。同病院の大田誠院長は「妊婦さんには申し訳ないが、医師確保は難しい状況だ」と表情を曇らす。

   ◇   ◇   

 県内の施設での分娩休止は今に始まったことではない。公立邑智病院(邑南町、03年7月)、飯南町立飯南病院(04年4月)、出雲市立総合医療センター(同4月)と続き、昨年7月には安来市立病院が取りやめた。津和野共存病院(津和野町)の場合、産婦人科医をサポートする常勤の小児科医がいなくなったため、今春から休止している。

 今年3月に開かれた県の地域医療支援会議。席上、後継者不足と高齢化に直面する県内の産婦人科医のデータが示された。

 分娩を扱う診療所は96年の21から05年は11に。医師56人(病院と診療所合計)のうち、20人が50代以上――。

 県医療対策課の担当者は「『正常分娩は診療所、リスクの高い分娩は病院で』という役割分担の形が崩れ、病院に業務が集中しつつある」と指摘し、勤務医の過酷労働を懸念する。実際に県西部では、病院がほとんどのお産を担う事態に陥っている。

「病院連携」新たな動きも

 県内に七つある「医療圏」のうち、浜田、江津両市がエリアの「浜田医療圏」では今年8月から、「お産応援システム」が始まった。年間約730件のお産を2カ所の病院と1カ所の診療所で担っていたが、診療所が7月いっぱいで分娩を休止。病院の負担をできるだけ軽くするため、健診は診療所で受けるよう呼びかける。

 浜田保健所は10月から3カ月間の予定で、市役所に出生届を出した母親にアンケートを始めた。健診と分娩の場所、選んだ理由、感想などを質問。新しいシステムが機能しているかどうかだけでなく、母親たちの満足度をつかむのが狙いだ。

(朝日新聞、島根、2007年11月28日)

****** 朝日新聞、島根、2007年11月28日

県立中央病院が分娩予約を制限

来年1月から/「安全の確保へ医師も設備も限界

 出産件数が増えている県立中央病院(出雲市)は来年1月から、分娩予約を制限する。同病院は高度な医療が必要な重症の妊婦や新生児が県内全域から運ばれてくる拠点病院。機能を維持するための「やむを得ない措置」と説明する。

 今月13日、同病院のホームページに、「当院で出産を希望される方へ」と題した文章を載せた。このなかで「産婦人科の診療機能が限界になっています」と説明。来年1月以降の分娩予定日の人から、予約数を制限することに理解を求めている。

 実際に制限の対象となるのは正常分娩で、里帰り出産など同病院で途中から診察を受ける人。妊娠がわかった時点から、受診していた妊婦は従来通り予約を受け付ける。

 02年度に897件だった分娩件数は05年度966件、昨年度1099件と年々増えている。分娩施設が減る一方、高齢出産などで病院を選ぶ人や里帰り出産(05年157件、06年178件)が増えていることが要因とみられる。

 病院側は昨年4月以降、月74~107件のペースで推移している分娩件数を70~80件程度に抑えたい意向だ。藤原二郎・中央病院総務管理部長は「医師も設備も限界で、このままでは安全の確保が難しくなる。危険度の高い患者さんを受け入れるために、協力してほしい」と呼びかけている。

(朝日新聞、島根、2007年11月28日)

****** 朝日新聞、島根、2007年11月28日

助産所ゼロ 安全模索/どうなる出産

 県内で2カ所だけになっていた開業助産所が今年3月と7月、相次いで分娩(ぶんべん)をとりやめた。妊婦の心強い味方となってきたベテラン助産師の思いは後輩に受け継がれ、助産師の活躍の舞台は今後、病院や診療所に移る。医師や看護師と連携し、互いの力をどう高めていくか。安全なお産を守るための模索が続く。(上原賢子)

緊急時、病院頼れなくなった/902人「感謝の気持ち」

◇長野助産院・長野千恵子さん◇

 隠岐の島町の長野千恵子さん(74)は7月いっぱいで「長野助産院」を閉めた。

 緊急時に妊婦を受け入れてくれた隠岐病院が今年4月から常勤医1人態勢になった。分娩の受け入れは正常な経過をたどっている経産婦に限られることになり、緊急の際に頼れなくなった。

 2月の町民向け説明会で、松田和久町長から「医者は探してくるから」と声を掛けられた。だが、全国的な産科医不足のなか、医師が島にやって来る見込みはなかった。「『夜中でも構わないから早くおいでー』と妊婦さんを迎える自信がなくなってしまった」

 岡山大学医学部の付属学校で学び、57年に助産師の資格を取った。東京の病院や隠岐病院の勤務を経て、81年に開業した。

 出産を終えるまで要した時間の最長は98年2月の31時間45分。途中、妊婦に「病院で陣痛促進剤をお願いすれば楽になるよ」と言うと、「ここで産みたい。がんばります」との答えが返ってきた。身の引き締まる思いがしたのを昨日のことのように思い出す。

 26年間、かかわってきた母子の様子を大学ノートに日付順に書き留めてきた。最後の記録は、1月14日にとり上げた902人目の赤ちゃん。「感謝の気持ちと満足感でいっぱいです」としみじみ語った。

お産減り、手伝い確保困難に/「またかかわりたい」

◇森脇助産院・森脇正子さん◇

 出雲市の「森脇助産院」を営む森脇正子(しょうこ)さん(67)は3月いっぱいで、分娩業務をやめた。分娩台は処分したが、診察室で母乳の相談などに応じている。

 母の笑子(えみこ)さん(93)が助産師として、各家庭を回る姿を見て育った。大阪赤十字病院の付属学校で学び、63年に助産師になった。

 翌年、出雲市多伎町の実家に戻り、県立湖陵病院や県立中央病院で助産師として勤務した。笑子さんが71年に自宅に助産院を開業すると、夜は助産院でのお産も手伝った。

 95年に病院を退職。笑子さんから助産院を引き継いだ。不測の事態に備え、妊婦の出産予定日が近づくと、医療機関に健診に行くのに付き添った。「様子が少しでもおかしいと感じたら、すぐ連絡してね」とアドバイス。陣痛が来た妊婦とは一緒に和室でお茶を飲んだり、散歩に出かけたりして、緊張を和らげるよう努めた。

 病院や診療所で産む人が増え、訪れる妊婦はここ数年、年1けたに減っていた。分娩をやめたのは、少なくなったお産のために、施設の維持や食事作りなどの手伝いを頼む人を確保するのが難しくなってきたからだ。

 「オギャーの産声にほっとして、次もがんばろうという気になれた」。場所は変わっても、またお産にかかわりたいと思っている。

◆助産師の役割重さ増す◆

 日本助産師会県支部によると、県内では20年前、10の開業助産所があった。同会によると、岩手や山形、徳島などでもすでになくなっている。

 減っている理由としては、医療機関での出産を望む人が増えている▽今年4月の医療法改正で産婦人科の嘱託医と連携医療機関の指定が義務づけられた――などが挙げられる。その一方で、産婦人科医が不足するなか、助産師の役割は重要さを増している。

 常勤産婦人科医が2人から1人に減り、再び出産に対応できなくなる危機に直面した隠岐病院に4月、院内助産所ができた。出産を受け付ける対象は、2人目以降を産む人で経過が正常な場合。原則として分娩に医師は立ち会わず、2人の助産師が対応する。これまでここで26人が出産した。

 県支部は10月末、松江市内で開いた研修会でこの院内助産所の取り組みを紹介。一ノ名(いちのみょう)緑支部長は「ほかの病院への広がりや、新たな助産所の設立に向け、助産師一人ひとりの力を高めていきたい」と話す。

(朝日新聞、島根、2007年11月28日)

****** 朝日新聞、2007年11月28日

妊婦搬送に担当医 都内8病院が受け入れを調整

 妊婦の搬送受け入れ拒否が問題化するなか、東京都内で高度医療を担う病院に、他の医療機関と連絡を取り合い搬送先の調整を主に担当する医師が配置されることになった。都が来年度から「総合周産期母子医療センター」に指定する8民間病院を対象に、こうした医師の人件費を助成する制度を始める。患者の受け入れについて医師同士がやりとりすることで、救急隊員よりもきめ細かな対応に期待する。

 都は、8病院に搬送調整を主に担う医師を1人ずつ増やす方針だ。例えば、ある病院のNICU(新生児集中治療室)が満床でもただちに新患の受け入れを断るのではなく、その病院の医師と相談して比較的回復している新生児を別室に移し、新たな患者を受け入れさせるといった調整をする。

 総務省消防庁の調査では、都内で06年に産科や周産期の病院に救急搬送された4179件のうち、救急車が現場に到着してから病院に出発するまでに30分以上かかったのが329件あった。10回以上病院に断られたのは30件で、27回目で受け入れ先が見つかったケースもあった。

(朝日新聞、2007年11月28日)

****** 山梨日日新聞、2007年11月28日

県東部で分娩継続を 広域連合議会が可決
県、山梨大に要請へ

 都留市立病院が分娩(ぶんべん)の予約受け付けを休止している問題で、県東部広域連合議会は二十七日、十一月定例会を開き、議員提案された県東部地域での分娩継続を求める意見書を可決し、閉会した。

 意見書は「都留市立病院は県東部地域における唯一の分娩可能施設で、分娩の廃止は同地域に深刻な打撃となる」として、県東部地域での分娩継続に向けて、県と山梨大に協力するよう求める内容。近く両者に文書を提出する。

 一方、都留市議会の市立病院産婦人科問題特別委員会が同日開かれ、意見書を国に提出することを決めた。

(山梨日日新聞、2007年11月28日)

****** 産経新聞、神奈川、2007年11月29日

助産師外来 普及は“難産” 出産難民の救世主…悩みはやはり人手不足

 産科医が不足し、「出産難民」が問題化するなか、「助産師外来」を導入する医療機関が増えている。医師の診療の一部を助産師がケアする外来だ。神奈川県横須賀市立市民病院もそのひとつで今年10月、「助産師外来」を開設。妊婦に好評を博している。ただ、助産師自体の不足もあり、全国的な広がりにはまだ課題が多い。(横浜総局 豊島康宏)

                   ◇

 開設したばかりの横須賀市立市民病院の助産師外来を訪ねた。

 妊婦はBGMを流し、リラックスできるよう作られた専用の個室で、助産師の保健や母乳指導のほか、健診を受ける。この日は、妊婦が腹部エコー検査を受けていた。助産師が「女の子ですね」と伝えながら、モニターに映る胎児の様子を見せると、妊婦も穏やかにながめていた。

 同病院の助産師外来は月8、9回で、完全予約制。保健指導や健診は妊娠中2回程度、原則として正常な経過で希望する妊婦が受けられる。

 妊婦健診は1回30分、5000円で、医師による妊婦健診と同じ金額だ。異常が発見された場合は、医師が診療する。最終的には、助産師が正常経過の女性の分娩(ぶんべん)まで行う「院内助産」を目標にしている。

 ≪「信頼」築きやすく≫

 助産師外来を設置する医療機関は年々増加している。背景にあるのは産科医不足。分娩を休止する医療機関が相次ぎ、地元で出産できない「出産難民」と呼ばれる妊婦が出るなど、各地で深刻な状況が浮き彫りになっている。

 助産師外来は厳しい現状の救世主とみられており、昭和51年に誕生した助産師外来は現在、推定で208にのぼっている。

 静岡赤十字病院(静岡市)では今年3月に開設。すでに700人以上の妊婦をみてきた。曜日ごとの担当を固定しているため、同じ助産師に担当してもらえ、信頼関係が築きやすい。

 千葉市の川鉄千葉病院でも昨年4月に開設。妊娠中少なくとも1回受診が可能だ。北里研究所メディカルセンター病院(埼玉県北本市)も医師と連携して、希望者の受診に取り組んでいる。東京都保健医療公社荏原病院は6月の助産師外来設置に続き、9月には院内助産所を開設した。

 助産師外来はおおむね好評で、静岡赤十字病院では「検査の内容を助産師が分かりやすく教えてくれる」との声が相次ぐ。

 横須賀市立市民病院のアンケートでも「じっくり話を聞くことができた」「質問したいことの答えがほとんど得られたので良かった」と評価が高かったという。

 ≪全国に2万5775人≫

 好評な助産師外来だが、急増しているかというとそうでもない。全国に208あるとされるが、産科や産婦人科をもつ医療機関約6000のうちではごくわずかだ。

 理由のひとつは助産師の絶対数の不足。全国で就業している助産師は2万5775人(平成18年現在)。緩やかな増加傾向にあるものの、人手不足の状態が続く。

 さらに、厳しい経営状態の病院が多いなか、新たな外来の設置に二の足を踏む医療機関があるとみられる。

 このため、厚生労働省は助産師外来設置に向け、予算獲得に必死だ。同省では「助産師外来の普及が進めば」と話している。

(産経新聞、神奈川、2007年11月29日)

****** 毎日新聞、長野、2007年11月27日

上田市産院:「助産師外来」市が今年度中に新設へ 分娩数200件減に

 院長が辞職願を提出した「上田市産院」(同市常磐城)について、上田市の母袋創一市長は26日、助産師が医師に代わって検診などを行う「助産師外来」を今年度中に新設する方針を明らかにした。ただ、新たな医師の確保については見通しが立っていないため、年間の分娩(ぶんべん)数を200件程度減らして、乗り切る構えだ。

 母袋市長は、この日開かれた市議会全員協議会で、「全国的に産科医が不足して新たな医師確保が困難な現状だ。産科医の負担を減らすため、医師の管理の下、助産師外来の導入を考えていきたい」と述べた。その上で、現在約700件ある同院の分娩数については「約500件を目指したい」と語った。

 今後の医師体制に関し同市では常勤医1人、非常勤医1人の計2人体制を維持する。ただ、非常勤医の勤務を現状の週3日から週4、5日に増やす方向で調整に入っている。来年4月までの分娩は予約通り継続する。

 一方で、一部住民らが要望している助産師が分娩を主導する「バースセンター」や「院内助産院」の設置について、母袋市長は「訴訟のリスクもあり、国などが法的な体制を整えてから検討すべきだ」と述べ、否定的な見解を示した。

 また、母袋市長は甲藤一男院長(57)の辞職願を21日付で正式に受理したことを明らかにした。

 甲藤氏について、同市長は「非常勤ということも含めて、何らかの形でかかわってもらうことを要請している」と語った。【川口健史】

(毎日新聞、長野、2007年11月27日)

****** 西日本新聞、大分、2007年11月27日

国東市での出産困難に 唯一の医院、産科休診へ

 国東市で唯一お産ができる福田産婦人科内科医院(同市国東町)が今年いっぱいで出産の扱いをやめることが26日、分かった。この結果、国東半島北部(同市、豊後高田市、姫島村)で出産に対応する病院はなくなり、杵築市と宇佐市の産婦人科が最寄りになる。

 同医院は1981年に開業。半島北部の妊婦が利用している。出産数は、ピーク時の86年には年間約250件あったが、その後減り続け現在は100件ほどという。

 産科休止の理由について福田栄院長は「過疎化と少子化が進む地域で採算が取れなくなった」と話している。また近年、高齢出産が増え、リスクの高い手術をするだけの人員確保が難しくなったことも要因という。婦人科と内科、小児科機能を残し、乳児や妊婦の健診は続ける。

 国東地区の中心的医療を担う国東市民病院(同市安岐町)の産婦人科は2年前に休止しており、再開のめどは立っていない。県医務課によると、現在、産婦人科医は県内に100人おり大分市と別府市に集中。臼杵市・津久見市に1人、佐伯市1人、中津市2人など偏在が顕著になっている。

(西日本新聞、大分、2007年11月27日)

****** 下野新聞、栃木、2007年11月26日

産科医、さらに減少/常勤医総数は横ばい/県内28病院

 入院が必要な重症患者を受け入れる二次救急を担う県内二十八カ所の中核病院で今年十月現在の常勤医は、臨床研修医を除くと七百九十三人となり、四月比でほぼ横ばいだったが、産科の減少に歯止めがかかっていないことが二十五日までに、県保健福祉部の調査で分かった。産科を中心とした県の医師確保対策の効果が思うように表れていないのが現状で、同部は「非常に危機的な状況」との認識を示している。

Tochigi  調査は県内の二大学病院を除いて実施。内科系三百十三人、外科系三百五十五人と四月比で二けたの増減になったが、統計の取り方の変更が大きな要因で、総数は六百六十八人と同数だった。

 一方、小児科は二人増の四十八人だったが、産科は引き続き減少し四十一人になった。今年四月から出産受け入れを大幅に縮小した国立病院機構(NHO)栃木病院(宇都宮市)は、産科医二人を今夏以降も維持した。

 県は医師確保対策として返済免除がある研修資金貸与や県職員として採用するドクターバンク制度、女性医師の現場復帰支援などに取り組んでいる。しかし研修資金貸与は募集定員割れが続き、現場復帰もやっと一病院が利用しただけだ。ドクターバンクは三回目の募集中だが、応募はもちろん、問い合わせすらほとんどないという。

 さらに休日・夜間の時間外診療で中核病院に救急患者が集中する実態が続いている。大学病院を含めると二〇〇六年度も救急患者全体の七割に達したが、ほとんどが入院の必要のない「時間外診療」の対応だった。

 県北地域で初期の小児救急も担う中核病院の病院長は、県の会合で「周産期医療の新生児を背負いながら初期救急もしなければならない。極めて危機的な状況で、勤務環境が悪ければ、いつ大学から派遣中止を言われるか分からない」と窮状を訴えた。

 県は現在策定中の次期保健医療計画(〇八-一二年度)で救急や周産期など医療連携体制の整備を目指しており、どれだけ実効性のある内容を盛り込めるかが今後の医師確保で鍵を握りそうだ。

(下野新聞、栃木、2007年11月26日)