ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

医師の配置機能

2007年08月09日 | 地域医療

今の日本にある病院の多くは、従来、どこかしらの大学の医局から医師が派遣されて、病院機能が維持されてきました。当院の場合でも、院長以下、各診療科の所属医師たちは、元をただせば、大学の医局人事で就職してきた者がほとんどです。私自身も、二十年ほど前に、当時の教授の『天の声』に従って、新天地(現在の任地)に一人医長としてやって参りました。

『どこかの大学医局に在籍して、教授の命令に素直に従っていれば、どこかしらの就職先を最終的に割り当ててもらえるだろうし、将来についての不安を感じる必要性はないし、そのうち学位も取得できる筈だし...』というような理由で、以前はほとんどの医師が医学部卒業と同時にどこかしらの大学医局に所属しました。

大学医局に所属すると、各自の希望や都合などとは全く関係なく、いつでも、命令が下され次第、否応なく指定された任地に赴く覚悟が必要でした。こうして、長い間、大学が地域の医師配置機能を果たしてきました。

しかし、最近、若手医師たちの研修先や就職先は、各自の自由意思で選択することも可能になってきて、大学医局に所属する者の割合が以前と比べて減少傾向にあり、大学の医師配置機能が低下しつつあります。

どこかに余った医師がプールされているわけでもありませんし、医師不足で困窮している地域に必要な医師を配置する機能は、今や、国にも、県にも、大学にも、どこにもありません。そのために、医師不足の地域では、ますます医師数が減っていく傾向にあります。