分娩の経過が正常であれば、助産師の適切な介助のもとになるべく自然の経過に任せるべきだと思います。医療の介入は必要最小限に留めるべきです。
しかし、ハイリスク妊娠の管理や、分娩の経過が異常となった場合は、適切な時期に適切な医療介入ができる周産期医療システムを二次医療圏内に確立することが非常に重要だと思います。
最近、日本国内の多くの医療圏の産科医療で医師不足が大きな問題となっていて、地域の基幹病院で分娩の取扱いを中止し、医療圏内で異常分娩に対するバックアップ体制がなくなったために多くの産科一次施設で分娩の取扱いができなくなり、結局、産む所がどこにもなくなってしまった地域が急増しているという現実があります。
例えば、長野県においては最近2年間だけで産婦人科勤務医が20人減ってしまい、来年早々にもさらに7人の勤務医が減ってしまう見込みとのことで、県内のどの医療圏でも勤務医が急激に減っており産科医療が崩壊寸前の危機に直面しています。
万一、ある医療圏の二次医療体制が立ち行かなくなってしまうと、その近隣の他の医療圏の二次病院にも非常に大きな負荷がかかってしまうこととなり、その結果、将棋倒し的に二次医療体制の崩壊が周囲の医療圏に波及してしまいかねません。従って、各医療圏で二次医療体制を充実させることが非常に重要だと思います。
二次医療を担う地域基幹病院では、人手を要するハイリスク妊娠の管理や異常分娩の救命処置に加えて、婦人科悪性腫瘍の手術や抗癌剤治療などもあって、非常に多くの人員を要します。
本来であれば、医療圏内に、正常妊娠を扱う多くの一次施設と、ハイリスク妊娠、婦人科疾患を扱う地域基幹病院が両立し、それぞれがしっかりと連携してうまく機能するのが理想の姿であることは間違いありませんが、産婦人科医数が激減しているために、全国的に産婦人科医の再配置・集約化が避けられなくなってきたのが現状だと思われます。
今後、周産期医療の状況はますます厳しくなっていくと予想されます。今までギリギリで何とかなっていた周産期医療体制の崩壊を阻止するためには、各医療圏でこれから多くの試練を乗り越える必要があり、まさに、これからが正念場だと思います。