「私が歌うと」 谷川俊太郎
私が歌うと 世界は歌の中で傷つく
私は世界を歌わせようと試みる
だが世界は黙っている
言葉たちは いつも哀れな迷子なのだ
とんぼのように かれらはものの上にとまっていて
夥しい沈黙にかこまれながらふるえている
かれらはものの中に逃げようとする
だが言葉たちは 世界を愛することが出来ない
かれらは私を呪いながら
星空に奪われて死んでしまう
──私はかれらの骸を売る
私が歌うと 世界は歌の中で傷つく
私は世界を歌わせようと試みる
だが世界は黙っている
言葉たちは いつも哀れな迷子なのだ
とんぼのように かれらはものの上にとまっていて
夥しい沈黙にかこまれながらふるえている
かれらはものの中に逃げようとする
だが言葉たちは 世界を愛することが出来ない
かれらは私を呪いながら
星空に奪われて死んでしまう
──私はかれらの骸を売る