ベッラのブログ   soprano lirico spinto Bella Cantabile  ♪ ♫

時事問題を中心にブログを書く日々です。
イタリアオペラのソプラノで趣味は読書(歴女のハシクレ)です。日本が大好き。

謹んで、吉本隆明さまのご冥福をお祈り申し上げます。

2012年03月19日 | お知らせ

バリトン歌手のKenさまの大叔父さま、吉本隆明さまが亡くなられました。

大叔父である吉本隆明が亡くなった。
わたしの読書傾向を決めたひとりであり、また反発の対象でもあった。
わたしはかれの本はそれほど読んでないが、吉本隆明講演集というCDをいつも聴いてた。
思想としてはあまり賛成してないところもあるのだが、かれのことばは率直で嘘がないのはほんとうだ。
国家も社会も越えた裸の個人の言葉だと思う。そういう意味では思想家である前に詩人だったのだろう。(Kenさま)
                            


       謹んで哀悼の意を表すとともに、吉本隆明さまのご冥福をお祈り申し上げます。
                           
                                 Pの円卓一同



【追悼】
吉本隆明さん 科学と詩人の魂が結合 東工大教授・橋爪大三郎   
2012.3.18 14:56
吉本隆明氏は、科学の精神と詩人の魂の人だ。その業績を、この2つの光源から照らしてみる。

 日本は敗れた。軍も解体したが、人は生きなければならない。軍国少年だった吉本隆明氏は、大人たちの手のひらを返すような変節と知的不誠実をみる。そしてできあがった戦後日本は、戦後知識人(不戦勝のにわか横綱)と大衆(啓蒙(けいもう)される平幕)からなる階層構造だった。このいかがわしさを暴いたのが、転向論である。転向して、それをなかったことにしたのが、戦後のからくりではないか。加えて、非転向は偉いのか、を問うたのが吉本氏の創意だ。非転向は言うなら「原理主義」、世界にはごろごろしている。情勢の変化を無視して、原則にしがみつく。日本人はそれを倫理的で真正な証しと誤解した。それでは一億玉砕と変わらない。情勢に照らし原則を問い直すほうが知的に誠実だ。マルクス主義の教条から人びとを解放したのだ。

それでは、戦後の日本でものを考え社会を生きる起点は何であるべきか。「大衆の原像」だと吉本氏は言う。知識人や専門人も、大衆も、頭の中身はおんなじだ。社会的地位や役割を、権威と勘違いしてはいけない。専門家も間違える。大衆も間違える。だから科学の合理性を大事にしよう。そして、教科書よりも現場の経験を大事にしよう。こういう中小企業の製造現場みたいな感覚で、吉本氏は仕事を進めていった。

戦後しばらく、格差やギャップは当たり前だった。都市と農村が違い教育程度が違い、山の手と下町が違い食事や服装が違った。消費文化が均一化し、総中流の意識が一般化したのは、高度成長のあと、1970年代になってからである。その感覚をいち早く、吉本氏は思想の原則として唱えた。小説家の村上春樹の作品が、均質な都市消費文化の感覚で時代を先取りしたのと、同様の構図である。

 吉本氏の仕事は、『言語にとって美とはなにか』に代表されるように、文学と科学を融合している。宮沢賢治に注目するのも、科学の精神と詩人の魂の結合した稀有(けう)な作家であることに共鳴するからだろう。同時に吉本氏は、『マス・イメージ論』や『ハイ・イメージ論』で、大衆の生きる高度消費社会の最前線に旺盛な関心を示す。知識人にとって、人びと大衆の生きる現実が、ものを考える現場になるからだ。でも大衆はすぐ間違える。『「反核」異論』のように、人びとの大勢が一方向に流れる場合は、必ず逆向きの声をあげる。戦争の経験に裏打ちされた本能のような姿勢だ。

 吉本氏がこうして権力と距離をとる姿勢は、団塊の世代に影響を与えた。政治など町内会の当番のようなものだ。そう言われると、政治の専門的訓練をしようとか、リーダーとしての意思決定の技量を磨こうとかいう気になりにくい。だから日本が悪くなったという声もある。吉本氏のせいにしてはいけない。日本がだめなのは、自分たち大衆がだめだからだ。そういう成熟した場所に、吉本氏は生涯をかけてわれわれを導いてくれたのである。(はしづめ だいさぶろう=東京工業大学教授・社会学)

                  ◇

 詩人で評論家の吉本隆明さんは16日、肺炎のため死去。享年87。
                                    (産経新聞)


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