東濃IFR

ACARS,グライダー、航空機

切った木はどうするの?

2011年12月17日 00時14分58秒 | 航空機
 とある日、ブログの解析画面のうち検索キーワードを確認すると「付知 ヘリコプター 集材」でここがヒットしている人がいた。何でこんなキーワードで検索しているのかな、とそのときは思っただけだった。
 11月末の昼休みに遠くの方からヘリの音が聞こえる。途切れ途切れだが、方角としては付知方面から。まさか…そう思いつつ中部森林管理局東濃森林管理所に問い合わせると1月までヘリコプターによる集材が行われる、ということだった。
 いろいろと情報収集した結果、12月1日まではAS350B3、2日はAS332L1、5日はB204Bが充当されることが判明。しかし天候がいまいちだったことがあり、どうやら4日にピューマが入ったようだ。それが4日のブログにアップした機体らしい。

 5日は有休を申請してあったのでその現場を見に行くことにした。使用されている林道は12月1日から冬季閉鎖になり、自家用車での乗り入れは不可。釣りや登山等を目的とした徒歩による入山は自己責任で、と東濃森林管理所の担当者に念押しされたのだった。
 この時期に切り出された木材が来年、春頃には木材として流通するはず。以前の勉強会のときは木を切るところは見たけどその後の搬送方法までは軽く口頭説明があっただけ。自分の目で確認したいという気持ちとロギングという自分では吉野でしか見れないと思っていた光景が見れるかもしれないという気持ちで入山したのだった。


ゲートは鍵で施錠されており、工事関係者やきこりさんが鍵を開けて中に入る。自分は徒歩にて片道5キロの林道を歩く。


途中見通しのいいカーブがある。ふもとまで携帯(無線)が使用できる場所はここのみ。この奥は携帯不感地帯となる。

 途中、車が2台往復するがまだ中日本航空の車は入山してこない。午前9時から作業とのことだったが、このとき9時20分。まさか中止では?と思いつつもさらに奥へ進む。自分が歩いている林道はその昔、森林鉄道が走っていたそうだ。谷側を見てもその遺構はわからないが、山側を見ると石垣が積んであったりしてそれらしき形跡がある。
 勉強会のときに右折した道をさらに真直ぐ行く。すると綺麗な滝に着く。ここも目的地のひとつだったので立ち寄って行く。


綺麗な滝。水も透き通りエメラルドグリーン。

 目的地はこの辺りのはず。あとは鼻を頼りにJET-A1の臭いをたどると…


場外発見!でもヘリは?作業員は?

 このとおりこの日ははずれ。日曜日に作業したため振り替え休日としたか、ヘリの調子が悪くてキャンセルになったか…。次こそは、と意気込みこのままUターンして下山。車内で昼ごはんを食べて結局出社したのだった。

 
 そして11日の日曜日、休日出勤して代休を作る。そうでなくても納期に間に合わないので苦肉の策。火曜日は上司に加工をお願いして休みを取ることにした。天気は晴れの予報。もし月曜日からの作業なら間違いなく行われているはず、という半分賭けだった。

 前回同様ゲート脇に車を止め、徒歩で場外へ向かう。前日、レシーバーを会社に忘れて帰ってしまったため会社経由でのゲート前。9時ジャストくらいから登り始める。9時10分を過ぎた頃か、無線からはウィークだが声が聞こえてくる。ここから4キロ先にしてはSメーターの振れが小さい。心配しつつも登り続けると今度はサルの群れがお出迎え。写真を撮ろうと思ったがヘタに刺激すると攻撃される可能性もあるため目を合わせずに通過。

 9時40分頃に現場着。貯木場の方には以前、お話を伺った森林管理所の担当官がいた。ちょっと気まずかったがしっかりと挨拶。向こうは何でこの場所がわかったのか不思議そうだった。今の時代、地図は検索サイトだけでは無いのですよ。マニアを見くびってもらっては(以下略)
 こちらがヘルメットまで持参しているのを見てあきらめたのか、いろいろと説明をしてくださる。この場外近辺でのロギングは終了し、今はさらに奥のほうの搬出を行っているようだ。

 これから家を建てる人間にとって心配だったのが、木を結構手荒に扱っていること。質問すると「木は結構丈夫なため大丈夫、長さは多めにとってあるし、表面の傷は角材にしてしまうため関係ない」ということだった。なるほど、確かに丈夫かも。

 ヘリの運行を担当しているのは中日本航空。こちらのメカニックさんに声をかけ、撮影の許可をいただく。Wさん、ありがとうございます。担当官もヘリの迷惑にはならないように、と念押しされる。心得ております!
 

KE706 HL7611 初撮りのA380  でかく見えるのは機体が大きいだけでなく標高が高いせいもある。


場外と貯木場の様子。太い木は4日にJA6717で運び出したものだとか。


 しばらくメカニックさんとお話する。5日は予定通りB204が入る予定だったのだが、機材調整の関係でキャンセルだったようだ。その後、天候不良とかもあり今回の機材であるJA02AH(AS350B3)が10日にフライイン。11日から作業を開始したとのことだった。そして週末には整備のため名古屋へ戻り、次の週はB204が入る可能性もある、とのこと。B204ももう古い機材だからそろそろ最後の雄姿を撮っておかないと、とも思うがそう何度も仕事は休めないからな~。
 今日の予定を尋ねると、「午前9時頃に作業を開始。1時間ごとに給油のために着陸する。」とのことだった。そのため次の着陸は10時過ぎとなる。

 上空を通過する飛行機を撮りながらしばらく待っているとメカニックさんがヘルメットをかぶり受け入れ準備を始める。こちらもヘルメットをかぶって待機。音が聞こえてくるが、山彦の様に音が反射してどちらから来るのか一瞬わからなくなる。しかしメカニックさんが見ている方向を確認することで飛来方向がわかった。


10:19 インサイト


ゆっくり近付いて…


メカニックがフックと地上との距離を無線でカウント。


フック確保、それを確認して機体はバックしながら降下。


あと2メートル。ダウンウォッシュが襲う!


10:20着陸。この後、エンジンカットして給油。


10:25エンジンスタート。給油もエンジンポンプだから早い。


離陸してゆっくりと上昇。メカニックがケーブル残りを読み上げる。


フックが地上を離れたことを確認。


再び現場へ向かう。給油して簡単なチェックして離陸。物輸は時間が命、というけど本当だな~。


 怒涛の数分間。ヘリがいなくなるとまた静かな森に戻る。これだけ山奥だからふもとのほうまで音は聞こえない。高度もそれほどとらないから遠くまであまり聞こえないのだろう。あのとき聞こえたのはたまたまなんだろうな。
 またしばらく上空を通過する飛行機を見て過ごす。しかし、やってくるのは韓国、中国方面に向かう飛行機ばかり。そうしてる間に時間も過ぎてお昼になる。


11:43着陸。エンジンカットしてまずはヘリのお昼ご飯。その後、人間がお昼ご飯。ちなみに、給油は1回ドラム缶1本約1時間分。


 自分も昼食にする。ヨメが作ってくれたおにぎりをほおばりながら「まるでピクニック…」と思わずつぶやく。携帯も通じない山奥、山の緑と空の青。聞こえてくるのは川の流れる音と木々を抜ける風の音。たまにはこんな日もいいよね。

 その後機体を見学させてもらう。昼食前に機長から了承済み、嘗め回すように見学させてもらう。メカニックさんにいろいろ説明していただいた。本当にありがとうございます。



吊り上げフックは電磁式開閉。フック本体をぶつけないように周りは頑強にできている。


山の中の場外。進入経路は開けており、場外基準は問題なし!


ここが物輸機の要。制振装置と吊り上げフックをジョイントするフック。非常時には赤いリングから切り離される。


AS350B3のコクピット。一部グラス化されたところがその証かな? 扉手前にあるメーターは…


扉手前にあるメーターは重量計。パイロットがミラーで積荷の状況を確認しながら重量チェックができるように視線が同じ位置になっている。


コレクティブレバーに取り付けられている緊急切離し用レバー。赤いボタンはエンジンをふかし過ぎないようにするためのリミッター。


フックと絡めて。これがオレの武器だ!


 午後の仕事開始までまだ時間がある。前回訪れたときに撮った滝の写真は携帯で撮影したもの。今度はしっかりと撮影してみようではないか。一応名目上はこれ、「滝の写真を撮りにいく」のが目的なのだから。


「ピーカン不許可」という格言(?)があるが明るすぎて大変。ISO変えたりしてもシャッタースピードが落としきれない。


もう半月早ければ紅葉とのカラミもできたのだろうが…。今度は氷った滝でも撮りに来るか?


 また場外へと戻るとメカニックさんは機体点検中。機長も準備し始める。ではこちらもポジションにつくことにしよう。今回はステレオマイクを持参。カメラのアクセサリーシューに取り付けて動画撮影のスタンバイ。ちなみにこのマイク、学生時代にMDを買ったときについでに買ったものだから性能はそれほどではない。
 エンジンスタートしてメカニックが確認。準備が整ったようで機長からゴーサインが出る。


仕事場へ出発

12:36離陸

 また上空を通過する飛行機を撮影しながら戻ってくるまで待機。
 メカニックさんに中日本航空からこの現場に来ている人の人数を聞くと機長のほかに全部で5人が来ているという。内訳としては機体整備が一人、吊り上げ誘導が二人、荷降ろし誘導が二人だそうだ。本来は荷降ろし誘導は一人だが、今回はOJTで二人、ということだそうだ。ということは、人件費もそれだけかかる。ヘリのチャーター費用は単発ジェットで30万/1時間が相場。…ここの木の値段っていくらなんだろう。



13:56着陸  給油後またすぐに離陸。


 14時を過ぎた頃から場外周辺も日が陰ってきて寒くなってくる。寒いときには運動が一番。カメラを持って約1キロほどジョギングして体を暖かくする。


青い空と山の緑。雑木部分はすっかり冬モード。


 貯木場の木はすべてトラックに積載。ヘリによる集材は最低限の距離にして回数をこなし、大量輸送はトラックが一番ということか。ちなみに、集材方法は大きく 1.作業道路を作る方法 2.索道による方法 3.ヘリによる方法 に分けられるという。森林管理所の話では、一番安いのは索道による方法だそうだが、そこは適材適所。この場所では岩が多すぎ、大変なのだそうだ。

 メカニックさんが動き始める。機体カバー等を用意して撤収準備に入った。


15:18着陸エンジンカット。本日の作業終了。


給油後機体チェック。


吊り上げ誘導員、荷降ろし誘導員も下山してきて機体カバーの取り付けを開始。


15:50 作業完了。お疲れ様でした。


 自分も下山開始。暗くなる前にゲートにたどり着きたい、と思い少し早足で歩く。ゲートまで数百メートルというとことで担当官が下山してくる。どうやら全てのゲートの確認をしてきたようだ。「暗くなるから気をつけてください。」と声をかけてくれた。そして16時半、自分がゲートにたどり着いたとき、それを確認してから担当官は帰って行った。ご心配おかけしました。ありがとうございました。


 ロギングそのものを見ることはできなかったけど大体その雰囲気はわかった。また、木の値段が高くなる理由も垣間見た気がした。今日運び出した木はいつ、どこの部材になるのだろう。
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2 コメント

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Unknown (蒼い鳩)
2011-12-20 01:05:15
いつぞやのコメントで言っていた山登りというのはこのことだったんですね。記事から察するにロギングというのはヘリによる木材の空輸でしょうか。
かなり近い距離で離着陸が見れたようですね。自分は山登りだけでへばりそうです(笑)
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大丈夫ですよ (batils)
2011-12-20 12:29:23
蒼い鳩さんなら大丈夫、高地トレーニングをいつもされているわけですから。

ロギング=ヘリ集材であってますよ。検索するとたぶんアカギヘリコプターさんのK-MAXかカモフという変わったヘリによる動画がヒットすると思います。
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