海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

沖縄における自衛隊強化の問題

2010-01-15 18:13:19 | 米軍・自衛隊・基地問題
 1月13日付沖縄タイムスに〈与那国島への陸自配備要請 町長 防衛相に〉という見出しの記事が載っている。短い記事なので全文引用する。

〈【東京】与那国町の外間守吉町長は12日、防衛省で北沢俊美防衛相と面会し、与那国島への陸上自衛隊の部隊配備を要請した。
 北沢氏は同日の閣議後会見で「検討すべき課題だ」としつつも「省内で必要性があれば上申するよう言っているが、現在のところ来ていないと」述べた。要請には下地幹郎衆院議員(国民新)が同行した〉

 またぞろ外間町長が与那国島への陸自配備を求めて動いている。同行している下地幹郎議員はこのブログで何度もとりあげているが、宮古島出身で先島地域への自衛隊配備に熱心な議員だ。普天間基地の「移設」先として下地島空港の名前が挙がったり、2月に行われる石垣島市長選挙に向け、自衛隊や米軍の強化に反対する現職市長の追い落としを狙いインターネットを中心に攻撃が行われたり、先島地域の軍事強化の動きも見逃すことができない。
 下地島空港の件については、普天間基地全体の「移設」はあり得ないとしても、嘉手納統合とのからみで、下地島空港をまずは自衛隊基地として使用し、そこに普天間基地の機能の一部を「移設」するというような議論は出てくる可能性がある。宮古島ではすでに反対運動が起こっており、「県内移設」に反対する県民世論もある。そういう中で、まずは下地島空港の軍事利用をめぐる議論を活性化させ、「屋良覚書」を破棄させる方向へ持っていこうとする動きが強まりそうだ。
 普天間基地の「県外移設」「国外移設」が焦点化することによって、沖縄の抑止力維持のために自衛隊の強化を進める必要がある、という意見が目立つようになっている。しかし、それは今に始まったことではない。米軍再編と沖縄の自衛隊強化は、表裏一体のものとしてこれまでも進められてきた。改めて以下の記事を思い出したい。



〈自衛隊増強し負担軽減〉という人を食ったような見出しだが、2005年3月19日付琉球新報の記事である。記事の一部を引用する。

〈小泉純一郎首相が在日米軍再編問題をめぐり、昨年十一月にチリで開かれた日米首脳会談でブッシュ大統領に対し、米軍基地の整理縮小に連動して自衛隊の任務や役割を増強する方針を明言していたことが分かった。複数の日米関係筋が十八日、明らかにした。首相が米軍基地の集中する沖縄の負担軽減を要請し、基地返還に伴う地主らの経済的な損失は日本政府の責任で補てんするとの考えを伝達していたことも判明した〉

〈首相が自衛隊による「肩代わり」を明言したことで、米軍再編が進んだ場合、沖縄を中心に自衛隊の機能と基地の整備・拡大が新たな問題として浮上する構図が浮き彫りになった〉
 
 この記事に先立つ04年12月には、05~09年度「防衛計画大綱」「中期防衛力整備計画」が出され、沖縄の陸上自衛隊を旅団に格上げすることや、宮古島に陸上自衛隊を配備すること、島嶼防衛の強化などが打ち出されていた。この頃から米軍再編と連動した沖縄の自衛隊強化が着々と進められてきたのである。
 上記の琉球新報の記事から2ヶ月ほど後に、藤岡信勝氏ら自由主義史観研究会のグループが渡嘉敷島・座間味島を調査し、「集団自決」の軍命を否定する運動を本格化していく。そして、同年の8月に梅澤裕元隊長と赤松嘉次元隊長の弟が、大阪地裁に大江健三郎氏と岩波書店を提訴する。大江・岩波沖縄戦裁判はそのあと教科書検定問題に発展し、大きな社会問題となっていくのだが、そのような一連の動きの背景に、沖縄における自衛隊強化の問題があったと私は考えている。
 そのことを『世界』07年7月号に「ある教科書検定の背景」と題して書いた。2年半も前の文章ではあるが、大江・岩波沖縄戦裁判、教科書検定問題、沖縄における自衛隊強化の問題は今も継続しており、参考になる部分もあるかと思うので、本ブログに再掲したい。一読いただければ有り難い。

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