沖縄防衛局名護事務所への申し入れ

　１２月１７日（水）の午後３時から、辺野古新基地建設問題を考える辺野古有志の会とティダの会で、沖縄防衛局名護事務所に「田中前沖縄防衛局長の暴言に抗議し、環境影響評価書の提出断念を求める申し入れ」をおこなった。申し入れ文の宛先は野田首相、一川防衛相、石倉名護事務所長など。以下に全文を紹介したい。



　田中前沖縄防衛局長の暴言に抗議し、環境影響評価書の提出断念を求める申し入れ

　沖縄県民と女性を蔑視、誹謗する田中前沖縄防衛局長の暴言は、日本政府の沖縄に対する暴力的な支配欲をむき出しにしたものであり、私たちは強い怒りを持ってこれを糾弾し、抗議します。沖縄の怒りに直面した野田政権は、事態の火消しに大わらわとなり、早々と田中前局長を更迭しました。問題はその程度の処分ですまされるものではなく、私たちは田中前局長の免職を求めます。
　日本政府・防衛省は、田中前局長の更迭で問題の早期収拾をはかる一方で、環境影響評価書の年内提出の準備を進めると発言しています。問題を一局長の失言に矮小化し、その背後にある辺野古新基地建設強行という国家意思は、あくまで貫こうとするものです。地元名護市の稲嶺市長や市議会をはじめ、仲井真県知事、県議会、県内全市町村の首長、議会が普天間基地の辺野古「移設」に反対していることを無視し、県民の総意を踏みにじる姿勢は何も変わっていません。
　野田首相や一川防衛大臣の謝罪は、うわべだけのものにとどまっています。田中前局長の暴言に示された本音は変わらないままです。このような欺瞞的な謝罪に、名護市民・沖縄県民はだまされません。日本政府・防衛省が環境影響評価書の提出と辺野古新基地建設を断念し、沖縄に対する強権的な基地政策をあらためないかぎり、真の謝罪とはなり得ません。
　私たち新基地建設問題を考える辺野古有志の会／ティダの会は、これまで辺野古・名護の地で、新基地建設反対の運動を取り組んできました。田中前局長の暴言への怒りは抑えがたく、政府・防衛省が方針を転換することなく、あくまで辺野古に新基地を押しつけるというのなら、体を張ってでもそれを阻止します。
　普天間基地は無条件で沖縄県民に返還すべきです。これ以上、北部の地に軍事基地を集中させ、住民の負担を増大させることは許されません。政府・防衛省が田中前局長の暴言に真の謝罪をし、普天間基地の辺野古「移設」に向けた環境影響評価書の県知事への提出を断念することを求めます。



　沖縄防衛局名護事務所は石倉三良所長と安里生男総務・係長が対応した。
　申し入れ文を受け取った石倉所長は、田中聡前沖縄防衛局長の暴言について謝罪した。石倉所長は、田中前局長の暴言は琉球新報の報道で知ったといい、消耗感を吐露しながら、辺野古の皆さんの抗議を聴いていた。しかし、環境影響評価書については、年内に提出するという方針は変わっていない、と述べた。
　政府・防衛省は、問題が発覚したその日のうちに田中前局長を更迭し、事態の早期収拾を図っている。だが、評価書を年内に提出し、辺野古新基地建設を強行する方針は何も変わっていない。田中前局長の処分もいまだなされず、官僚側は抵抗する姿勢を見せている。ほとぼりが冷めた頃に別のポストに移せばいい、という姿勢が見え見えである。
　田中前局長はマスコミ関係者だけでなく、名護の誘致派とも何度か酒食を共にしている。石倉所長も一度同席し、カラオケを歌ったとのことだが、そうやって名護の内部から新基地建設受け入れの土壌づくりを行っていた。一方で、キャンプ・ハンセンの土地返還問題で稲嶺市政に揺さぶりをかけてもいた。
　田中前局長の暴言には、「審議官級の間では、来年夏までに進展がなければ、普天間は何もなかったようにそのまま残る」というのもある。誘致派やマスコミを酒食で懐柔し、抱き込みを図りつつ、抵抗する者には脅しをかける。防衛省の官僚たちのやり口である。腹の底では琉球新報に逆恨みして、何の反省もしていないだろう。
　沖縄がこれだけ反対している中で環境影響評価書を年内に提出することは、いやがり抵抗する相手を力でねじ伏せ、強権的に支配欲を満たそうとするものだ。それは田中前局長がレイプの比喩を使って言ったことを、沖縄に対し実行に移すということである。愚かな日本の政治家や官僚たちにその自覚があるだろうか。自覚はもちろんあってむしろ楽しんでいるのだろうか。いずれにしても醜悪のかぎりだ。