海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

学びて時にこれを思わず また愚かならずや

2011-12-04 16:59:41 | 米軍・自衛隊・基地問題
 1995年に起こった米兵3人による少女暴行事件について、一川防衛大臣が「詳細には知らない」と発言したことに対し、前原誠司民主党政調会長が「勉強不足が過ぎる」と批判している。
 前原政調会長は沖縄についてよく勉強し、95年の事件についても熟知しているのだろう。当然、事件が起こった場所も知っているはずだ。にもかかわらず、辺野古新基地建設を推進し、事件が起こった沖縄島北部に米軍基地を集中させようとしている。そのことに自ら矛盾を感じないのだろうか。
 辺野古にはすでにキャンプ・シュワブ基地がある。その沿岸部と海を埋め立て、V字型滑走路と港湾施設、装弾場を備え持つ新基地を建設し、海兵隊部隊の北部集中化を進めることは、北部地域にとっては基地の負担増大である。それにより米兵や軍属が起こす事件・事故が増大するのも分かりきったことだ。95年のような事件が北部の地で再び起こりかねない。前原政調会長はそれを承知で、辺野古新基地建設を進めようとしているわけだ。無知で進めるのも悪いことだが、承知の上で進めるのはさらに質が悪いのではないか。

 前原政調会長だけではない。一川防衛大臣の問責決議を出そうとしている自民党や公明党も同じである。一川防衛大臣を批判する彼らも、事件が起こった北部の地に新たな基地を建設し、米軍の集中化を進めることを、政権を失うまでやってきた。今もその方針は変わらない。次の衆院選挙までに民主党政権に打撃を与える、という政治的思惑から95年の事件を利用しているだけで、事件の被害者や家族、沖縄島北部の住民のことなど何も考えてはいない。
 今でこそ普天間基地の「県外移設」を言っている沖縄の自民党や公明党、あるいは仲井真知事や稲嶺前知事にしても、一、二年前までは同じだったのだ。そのことについてどう反省したのだろうか。基地問題を経済問題にすり替え、振興策を引き出すことに躍起となり、九州・沖縄サミットをはじめとした政府の沖縄に対する「格段の配慮」に浮かれ騒いでいた者たちを、米兵や軍属が起こした事件・事故の被害者たちは、どのように見ていたか。その眼差しを意識することがあれば、基地受け入れと引き替えに差し出される「格段の配慮」に浮かれ騒ぐことなどできなかったはずだ。

 野田首相は、田中前沖縄防衛局長を暴言問題が発覚したその日のうちに更迭し、問題の早期収拾をはかろうとしている。しかし、環境影響評価書を年内に提出する方針は変えていない。仮に一川防衛大臣が問責決議がらみで辞任に追い込まれても、その方針は変わらないだろう。自民党や公明党にしても、政局が自らに有利に動けばいいだけで、辺野古新基地建設推進であることは野田政権と同じだ。それに力を得て、野田首相が評価書の提出を強行するなら、沖縄県民の怒りの火に油を注ぐことになる。暴言を受けた沖縄側すれば、田中前局長の更迭や一川大臣の辞任は当然のことであり、環境影響評価書の提出断念なくして、沖縄への謝罪などあり得ない話だ。

 更迭された田中前局長が沖縄でやろうとしていたことは、辺野古新基地建設や高江のヘリパッド(オスプレイパッド)建設と同時に、先島地域への自衛隊配備を強行することである。北は高江から南は与那国まで琉球列島全体を、米軍と自衛隊が共同で中国に対抗する軍事的盾として強化していくことが、彼の役割だった。誰があとを継いで局長になろうと、その役割は変わらない。政府が言う沖縄の「負担軽減」などまやかしにすぎない。むしろ、琉球列島全体が軍事基地化されようとしているのが現実であり、そのことに強く反対する。

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