海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

日本航空の下地島空港撤退

2011-12-08 16:14:32 | 米軍・自衛隊・基地問題

 12月7日付琉球新報に〈日航、下地島空港撤退へ〉という見出しの記事が載っている。沖縄県議会の11月定例会で与世田兼稔副知事が日本航空について〈「日本航空はことし3月、覚書を2011年度限りで解約する旨通知し、12年度以降は維持費を負担しないと県に申し入れている」と明らかにした〉という。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-184913-storytopic-3.html

http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-12-07_26999/

 この記事を読んで、下地島空港の軍事化が再び焦点となることを懸念した人は、沖縄では少なくないと思う。日航が県に覚書の解約を通知したのは今年3月で、9カ月も前のことだ。訓練のシミュレーター化による下地島空港の使用減は、だいぶ前から言われていた。日航撤退について政府・防衛省は3月以前から把握していたはずで、すでに自衛隊基地化の画策は水面下で進んでいるのだろう。
 沖縄では田中聡前沖縄防衛局長の暴言問題に抗議する集会や決議が続いている。ここで考えなければならないことは、今年8月に沖縄防衛局長に抜擢された田中前局長に与えられた任務だ。暴言と直接関わる辺野古新基地建設や高江のヘリパッド建設とならんで、田中前局長が沖縄で指揮していたのは先島地域への自衛隊配備である。
 2010年12月17日に打ち出された「中期防衛力整備計画(平成23年度~平成27年度)」の「Ⅲ-1-(2)島嶼部に対する対応」では、以下のように記されている。

(ア)情報収集・警戒監視体制の整備等
 平素からの情報収集・警戒監視を行うとともに、事態発生時の迅速な対処に必要な体制を整備するため、前記Ⅱ 1 に示すとおり、南西地域の島嶼部に陸上自衛隊の沿岸監視部隊を配置するとともに、初動を担任する部隊の新編に向けた事業に着手する。また移動警戒レーダーを南西地域の島嶼部に展開することにより、隙のない警戒監視態勢を保持する。さらに、南西地域において早期警戒機(E-2C)の整備基盤を整備し、常時継続的に運用し得る態勢を確保する。

 与那国島に配備予定の沿岸監視部隊を孤立させないため、敵の攻撃に対する「初動を担任する」実戦部隊が新たに編成され、与那国島かその近くの島に配備される。また、移動警戒レーダーも島嶼部で展開される。民間の空港や港湾施設の自衛隊による使用も常態化されるだろう。与那国島への沿岸監視部隊の配備を突破口にして、石垣島、宮古島へと自衛隊の配備を拡大し、琉球列島を中国と対峙する前線基地にしていく構想が示されている。

 下地島空港をめぐっては、2005年に伊良部町議会が自衛隊誘致決議をあげたが、住民が猛反発して議員らが謝罪、白紙撤回するという事態があった。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-590-storytopic-3.html

 政府・防衛省はその時のことを教訓化している。今年の5月31日に北沢俊美防衛相(当時)が記者会見で、〈下地島空港(宮古島市)の活用を念頭に、大規模災害発生時の物資輸送拠点を南西諸島に置く構想を目指すことを、6月上旬にシンガポールであるアジア安全保障会議で表明したい方針を明らかにした〉(6月1日付琉球新報電子版)。
 3月11日に発生した地震・津波・原発事故を政治的に利用して、〈大規模災害発生時の物資輸送拠点〉という形で、自衛隊と米軍の利用に道を開こうとした。一見ソフトな装いを凝らしたものだが、その意図はすぐに見破られて、地元では反対の声が上がった。

http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-06-15_19180/

 政府・防衛省はさらに巧妙かつ多様な手を使って、下地島空港の軍事基地化への動きを進めるだろう。2014年3月には伊良部大橋の開通が予定されている。伊良部島の大規模リゾート開発、カジノ誘致などと抱き合わせで自衛隊誘致を進めようと、オレンジ色が好きな某国会議員あたりが動いていそうだ。尖閣諸島問題を利用して排外的ナショナリズムを煽りつつ、沖縄の自衛隊を強化していく、という田中前局長の任務は、そのまま後継者に引き継がれる。下地島空港からの日航の撤退を好機ととらえ、水面下で蠢いている者たちに注意しなければならない。

 今日12月8日は日本軍による真珠湾攻撃から70年の節目である。ハワイも沖縄も、リゾートの島という華やかなイメージが振りまかれる裏で、侵略と戦争の歴史を負い、基地の島としての苦汁をなめさせられている。70年前に開戦した日本とアメリカが今は軍事同盟を結び、その重圧に苦しめられ続けているのが沖縄の現実である。

 


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