山本周五郎長篇小説全集 第七巻 赤ひげ診療譚・おたふく物語 単行本 – 2013/11/22
山本 周五郎 (著)
名瀬の書店で見つけた新書(右)を途中まで読んで、赤ひげを借りた。
「――これまでかつて政治が貧困や無知に対してなにかしたことがあるか」……
という去定(赤ひげ)のセリフは、51ページにある。その直前に「医術などといってもなさけないものだ」のセリフがある。
↑ 新書(山本周五郎で生きる悦びを知る)が、他の小説家が書いたら辟易してすぐに本を閉じるだろう、というところのものだ。
ずっとあとになってP324、ものがたり最終盤ちかく、「貧富や境遇の善し悪しは、人間の本質には関係ないと思います」と登は言う。
去定「毒草はどう培っても毒草というわけか、ふん」・・・「だが保本、・・・毒草から薬を作りだしたように、悪い人間の中からも善きものをひきだす努力をしなければならない、人間は人間なんだ」
この意見の対立は、むずかしい気の利いた言葉で表現してもしらけるだけだろう。山本周五郎の小説ならではの味わい深さだろう。全編を通して味わえる。
・・・・・
p83去定「人生は教訓に満ちている、しかし万人にあてはまる教訓は一つもない、殺すな、盗むなという原則でさえ絶対ではないのだ」
遠い昔に何かの本で読んだ記憶にあるセリフだ。
追記 9/20
このあと、放送されたNHKスペシャル「健康格差」を録画で見た。
生放送の番組中の視聴者アンケート、健康管理は「自己責任」か「社会の問題」か?の結果は、「社会の問題」と答えた人が57パーセントだった。
↑上の去定のセリフ「――これまでかつて政治が貧困や無知に対してなにかしたことがあるか」……の前に
「それは政治の問題だと云うだろう、誰でもそう云って済ましている」があって
登は自分の心の中を見透かされたような気持になる。