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『日本辺境論 』(新潮新書) 内田 樹 (著)

2010年02月17日 | 本と雑誌

100217booknihon 日本辺境論 (新潮新書) (新書)
内田 樹 (たつる)著

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新書: 255ページ
出版社: 新潮社 (2009/11)

発売日: 2009/11

読み出してから気づいた、
この著者の本は、5年前にも読んでいた。

2005年9月16日 (金曜日)
『寝ながら学べる構造主義』

なんの縁なのだろう? おもしろく読めた。

本書P21で著者の主張の要約として
梅棹吉夫『文明の生態史観』中公文庫 1974年 P41-42

の次の文が引用されている。

日本人にも自尊心はあるけれど、その反面、ある種の文化的劣等感がつねにつきまとっている。
それは、現に保有している文化水準の客観的な評価とは無関係に、なんとなく国民全休の心理を支配している、一種のかげのようなものだ。ほんとうの文化は、どこかぼかのところででつくられるものであって、自分のところのは、なんとなくおとっているという意識である。
 おそらくこれは、はじめから自分自身を中心にしてひとつの文明を展開することのできた民族と、その一大文明の辺境諸民族のひとつとしてスタートした民族とのちがいであろうとおもう。」
                                         

辺境、劣等感とくれば奄美もおなじ。日本対世界は島対ヤマトと同じか、それとも違うのか。

辺境はフロンティアでもあるとか、日本の根っことか、苦しまぎれに聞こえなくもない。

p62 「日出る処の天子」以来
日本と朝鮮との華攘秩序の内面化の程度の違い 

列島は「王化の光の遠く及ばない辺土」です。だから、中華風の「正式」ではあれこれ煩(うるさい)決まりがあるようですけれど、情報に疎いのでどうするのが正式なのかわかりませんという言い訳が成立した。
誰に対する言い訳なのかわかりませんけれど、「知らないふり」をすることで、こちらの都合に合わせて好さなことをすることができる。これを辺境ならではのメリットとみなすことが可能です

無知の狡知

1965年、島尾敏雄が「奄美の人々は、長いあいだ自分たちの島が値打ちのない島だと思いこむことになれてきた」と書いたのがいくつかの本に引用されているのを読んだことがある。
どうも言葉たらずな感じを受けるのだが、島尾は、奄美の人々が偉い先生とうまく付き合っていうく上で、まったくの本心ではないが、そのように思わせておくことで、それなりのメリットが双方にあるということを長い間の経験から知っていたということに気づきべきであっただろう。
いや、そのことに気づいていたからこそ、島を離れたのかも知れない。

そのあたりのこと、同じ時期奄美に住み、奄美でなくなった田中一村にも聞いてみたいところである。

P100
私たちに世界標準の制定力がないのは、私たちが発信するメッセージに意昧や有用性が不足しているからではありません。
「保証人」を外部の上位者につい求めてしまうからです。外部に、「正しさ」を包括的に保証する誰かがいるというのは「弟子」の発想であり、「辺境人」の発想です。そして、それはもう私たちの血肉となっている。どうすることもでさない。私はそう思っています。1500年前からそうなんてすから。

「とことん辺境でいこう」

と著者は言う。

奄美のことに重ねて考えてしまう箇所は、例をあげるととりとめもなくなってしまうのでやめる。

さいごの 「辺境人は日本語と共に」

真名(漢字)と仮名の使い分け

外来の高尚な理論=男性語 と「地場なベタな生活言語=女性語」の二項対立の反復なども興味深い。

あ、それから以前、ナゼ水戸黄門様は奄美に来ないのか?ということをちょっとだけ考えたことがあるのですが、

「辺境人の「学び」は効率がいい」の

P150 「水戸黄門のドラマツルギー」の節で水戸黄門がテーマの日本論が展開される。水戸黄門さまはあなどれない。

本書では、ワルモノたちが、ナゼ、偽者がいくらでもつくれる印籠を疑わないのか?と考える。「根拠のない権威の名乗り」を頭から信じてしまうのはワルモノたちだけなのはナゼか?それは彼ら自身(代官や奉行も)が「根拠のない権威の名乗り」によって現在の地位に達し、役得を得ているから。

このワルモノたちこそ、「舶来の権威」を笠に、「無辜の民衆」を睥睨(へいげい)してきた、日本の多くの知識人たちの「狸」の戯画にほかならないP155というのだからおもしろい。

読み出したらとまりません。もりだくさんなテーマだが、論理は、かなか一貫しているのである。時間をおいて再読したい。