徒然なるまままに

展覧会の感想や旅先のことを書いてます。

川崎小虎と東山魁夷展 日本橋三越本店

2006-12-29 | 美術
川崎小虎と東山魁夷展
2006年12月27日から2007年1月14日
日本橋三越本店 新館7階ギャラリー

小堀鞆音の弟子にあたる川崎小虎(正しくは川小虎 かわさきしょうこ)(1886-1977)の展覧会を拝見してきた。先ほど開催された「小堀鞆音と近代日本画の系譜」(記録はこちら)では、祖父川崎千虎(正しくは川千虎 かわさきちとら)(1835-1902)の「佐々木高綱被甲図画稿」や川崎小虎の「芍薬」「北野天神縁起絵巻夷 菅公之図模写」などを拝見。川崎小虎は、土佐派の系譜に土佐光文-川崎千虎-小堀鞆音-川崎小虎と連なり、兄弟弟子に安田靫彦がいる。

展覧会は、「教会堂の夜」(1912-16)「うどんげの花を植える女」(1912-16)「浜に立つ女」(1912-16)など大正浪漫的な作風の一見洋画チックな作品から始まる。
そのあとに優美な淡い色調の大和絵の屏風が並ぶ。十二単風の平安女性を描いているのだが、あくまで淡彩の単色の着物で描いている。「伝説中将姫」(六曲一隻、1920、山種美術館)、「囲碁」(六曲一隻、1921、山梨県立美術館寄託)、「春の訪れ」(六曲一双、1924、山種美術館)、「萌出づる春」(六曲一双、1925、東京国立近代美術館)。そして、東山魁夷が感動をうけたという「西天求法」(六曲一隻、紙本墨彩、1926、東京国立近代美術館)。駱駝を引いて西へ向かう三蔵法師だろうか。「狐火」(四曲一隻、紙本彩色、1926、東京都現代美術館)。この作品では宙を舞う女性の表情があやしく印象的。武田上杉の争いを扱った浄瑠璃と歌舞伎の脚本「本朝廿四孝」の大詰め、長尾館奥庭狐火の場。女性は上杉謙信の娘八重垣姫を描いているそうだ。

このあとは、がらっと違った紙本彩色の洋画風の小品がならぶ。「麻布に桃」(1935)、「麦秋(落合村)」(1948)、仔犬を描いた「春庭」(1975)などに目がいった。

大正浪漫から屏風絵、そして洋画風の小品と鑑賞すると「揺らぐ近代」で展示されるべき作家であったと感じる。

東山魁夷は、長野県信濃美術館・東山魁夷館や先般拝見した北澤美術館や、山種美術館などからの作品が展示されている。東山魁夷の岳父が川崎小虎ということで展示されている。

なお、本展覧会は、図録を購入すると展示作品一覧がいただける。(ただし、請求しないともらえないので忘れずに)

一覧表によれば、本展覧会は、山梨県立美術館で4月21日から5月27日、岐阜県立美術館で7月20日から8月26日と巡回。今回は展示されなかった作品もかなり展示される。

(12月28日)

P.S.
日本橋三越本店では、フンデルトヴァッサー展が2/27-3/11に開催予定のようだ。

川崎小虎(1886-1977)は大和絵の伝統に近代の感性を加え、新たな日本画の可能性を開拓しました。伝統的な大和絵からその画業をはじめた小虎は洋画主題を取り入れた革新的な作品を発表します。その後、平安朝を主題にロマンティックで幻想的な大作で評価を受ける一方、平凡な生活の中の喜びを謳う主題や、小さな動物への愛情溢れる作品など、90年の生涯をとおして誠実で純真な態度で絵画に向き合い、清らかな画境を確立しました。
 大正15年、小虎が帝展に出品した「西天求法」に大きな感動を受けたのが、同年に東京美術学校(現・東京藝術大学)に入学した東山魁夷(1908-1999)でした。縁により岳父となった小虎に対して、魁夷は作品だけではなく、芸術家として深い尊敬と敬愛の念をいだき続けました。非凡な造形力により静謐で平明な風景画を確立した東山魁夷もまた、生涯をかけて謙虚に自然と向き合い、画家として一筋の道を歩みました。このふたりの芸術家に共通する、知的な透明感溢れる画風は、互いの芸術への共鳴に裏打ちされているように感じられます。本展では、川小虎、東山魁夷という二人の画家が日本画壇に残した、清冽な軌跡を辿ります。

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1 コメント

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Unknown (遊行七恵)
2007-01-13 10:54:53
川崎小虎が見たくて訪ねたのですが、やはり魁夷の良さに色々深く感じ入りました。
小虎はこれが好き・あれがいいと言えるのですが、魁夷は全体として「魁夷はいい」という気持ちになりました。
魁夷の北欧の原点が小虎からの導きだと言うのもいいなと思いました。
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