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Surf, Run and Trails / Endurance For Fun

丹沢トレイルランニング~蛇の館、死霊が棲む家、謎の老人スンダラベッチャー~

2020-01-05 16:35:18 | ランニング
大山阿夫利神社下社へ続くカゴヤ道。
昔々、籠が通った。なのでカゴヤ。
アプダウンがないトラバース。斜面を横切る、の意。
落葉が気持ち良いトレイルなのだが、今この時はいつもと違う。

足元がスライムのような、、ヘドロではない。
とにかく足が取られて走るには程遠い、そうだ!何か大きな生物の背中を走っているような。。
しかも道が時折左右に大きくくねる。
そして、まっ平な道が大きく右に沢に向かって傾く。
一瞬にして滑落する。
身体のいたる所に衝撃が走る。
ガレに当たって胸とか強打しているだろうし、ウエアは裂けているだろうし、
背中に何か刺さっているだろう、
と落下しながらも容易に察することができる。

頭を下に仰向けに止まる。
だいじょうぶ。とりあえず手は動く。指の感覚もある。目は見える。
手に当たるものを握ってみる。だいたい枝か岩のはずだ。

柔らかかった。動いた。手だけが覚えた感触ではなかった。
首の後ろも、短パンなので脚の裏全体も。
身体に触れているところはすべて動いていた。

蛇の温床だった。
無数の蛇が、視界いっぱい空も地面も覆い尽くしていた。
絶叫したつもりだが声が出なかった。
呼吸がままならなかった。
敏捷な蛇は口に入ってきて、猛烈な勢いで食道に入っていった。
長い、とにかく長い。苦しみながらその蛇の尾を眼で追うが見えない。
涙で霞んで余計に見えない。胃カメラならぬ胃蛇。オエツが止まらんし。

臭いは鮮明だ。 一度嗅ぐと一週間吐き続けられるほどの腐った臭い。
動物が腐ってハエがたかりウジを産み付け発酵する臭い。
究極の死臭なのかもしれない。

食道を抜けた蛇の頭は腸を通り、直腸に達するのはほんの数秒だった。

オナラをしたいけど、今したら絶対漏らすよね、と誰もが思ったことがあるあの緊張感がやってきた。
出るのは固形物か、気体か、はたまた液体か、、、、
この状況でオレは何を思っているのだ、、、、、
出るのは蛇の頭だろうよ、、、、

蠢く無数の蛇に、まるでオレは踊っているようだ。
絶体絶命。。。こんなトレイルの事故は嫌だな。。

とにかく今はケツの穴から蛇をだすのだ。
恐る恐る屁をしてみる。

はあああああっっ!!!!! 
汗びっしょり。夢だ。
助かった。
しかし、下半身には爆破テロの痕跡があるようだ。
トイレで確認しなくてはと、起き上がるものフラフラ。

運良くなのか、不幸中の幸いなのか、爆破テロは線香花火小規模爆破レベルで済んだ。

問題はそれどころではない。熱だ。超高熱だ。
阿夫利神社下社ドリームは高熱のための悪夢だったのだ。

話は長くなる。たまにはいいだろう。全く記事更新してねえんだし。

この高熱の原因はわからん。風邪の熱じゃない。インフルでもない。
喉も痛くないし、咳も出ないし、鼻水も出ない。出るのは屁くらいだ。

この不明な高熱、祟だとわかっている。
タタリだ。アタリでもマッタリでもワタリ哲也でもない。タタリだ。
前日のトレイルランニングに起きたことだと思っている。
そこでオレは触れてはいけないものに触れてしまったのだ。
見ても見ぬふりをして済むものもあるが、
見たら最後、チーン っていう話だ。
怖いよ。

2019年 最終週 12月29日。
山〆ということでホームの大山に走りに行った。
快晴、無風。

鶴巻温泉からエントリー。まずは弘法山を左に高取山を目指す。
ここに廃屋がある。
なにかの作業所のような何棟かの建物が登山道から中が見れないようにトタン板で覆われている。
誰も住んでいないようなので廃屋と書いたが、でも全く人気がないというわけでもない。
廃品回収を営んでいるようにも見えた。
わからない。
錆で真っ赤で朽ち果てた軽トラック。
ボウフラが湧いてアオコで腐った熱帯魚の水槽。
腐ったハシゴ。
そういったものがトタン板の隙間から見えた。
何か人気を感じたのは木のテーブルがあったからだ。
天板に包丁が刺さっていてテーブルの上に黒く腐った塊が散らばっていた。
食事した痕跡に見えたのだ。何を食らったかはわからないが。

この廃屋を通るとき、糞の臭いが鼻を突くゾーンがある。
畑の肥しの臭い。でもここに畑はあるのか???
肥溜めだ。知ってる。
オレ、小学校のとき落ちたことあるからあの臭いは一生忘れない。
あれほど悲しい臭いはない。
落ちた瞬間、友達は一瞬にして視界からいなくなった。
翌日から肥田君とか言われた。
落ちた瞬間、肥溜めに縁で足を擦り剥いて、傷口にウンチが入って化膿した。
化膿のグチュグチュは糞なのか膿なのかわからないほど悲しかった。
だからオレはそこを通るときとても悲しくなるのだ。

でだ。

廃屋には人の気配があるとは言っても複数でない。
オウムのサティアンのように大勢ではない。
そう、サティアンくらいの人数の糞尿をあつめた肥溜めの量なんだ。
一人で溜まる量の臭いではない。

きっと廃屋の主が、迷った登山者を呼び入れて、
斧で頭を割った後、内臓をえぐり出して溜め込んだのだ。
死臭ってウンコの臭いだからな。

本当におぞましい。だからいつもここを通るときは嫌な気持ちになったんだ。
とっとと通り過ぎよ! 登り加速!
50メートルも通りすぎず、、下から連れの悲鳴が聞こえた。
「きゃーーーーーー!!!!」

今回はトレイル仲間4人。
3人が下から来ない。
すぐ戻る。

気がつかなかったが、廃屋のトタン板の扉が大きく開いていた。
その中から悲鳴が聞こえた。

なんなんだよ!とオレ。
ホレホレと屋根を指差すツレ。

なんと軒先に何本もの大蛇がぶら下がってるではないか。
生きてはいない。見るからに干されている。
でも蛇とわかる。そのグロテスクさに悲鳴が上がったのだろう。

(衝撃画像。軒先の蛇に絶叫する迷惑女はお前だ!)

オレら4人はすでに敷地内にいた。勝手にだ。
そして勝手に扉が閉まっていたことに気がつかなかった。
あたりを見渡すと、まるでゴミ屋敷ライト版といった感じの散らかり方だが、
散らかってるものが凄かった。

(何かの肉をコトコト煮ます)

チェーンソー、なた、包丁、斧、鎖、等身大のまな板、
大きな発泡スチロールケースに入った何かの手足、
大きな洗面器はどす黒い液体でナミナミになっている。
すでにオレは腰に力が入らず、「早くここから出ようぜ!」と喚き散らす。

(非売品なり)

他の鈍感な3人も異様な雰囲気をようやく感じたようだ。

建物はざっくり5棟くらい。
作業小屋か物置だ。表向きはユンボなんかの小型建機の修理やらなんやら。
でも包丁やなたはいらないだろう。
登山者の腹を切り裂いて肥溜めに投げ込む以外は!


5棟の中でちゃんと窓があり煙突がある小屋が目の前にあった。
すりガラスの窓に人の影が写った。
建て付けの悪い引き戸がほんの少し開いた。
血だらけの土で汚れた包帯の手が引き戸から現れた。

ひえーーーーー!!!!とのけぞるオレ。
両足の大腿四頭筋つる。

「それ干してんのトバだべ。鮭とば。食ってくかい?」
すげー高音で語尾が上がる。
語尾にスンダラベッチャーと入れると雰囲気出る。
仙台弁みたいな感じ。

小さいが骨がしっかりしている老人。
スンダラベッチャー語尾にオレは騙されない。
鮭とば食えと言いながらオレらを食らう蛇の館の主。

まんず遠慮しねえでらベッチャー!(これはオレが勝手に)
老人は、鈍く光る大きな包丁を片手に、脚立に登って干してある蛇を反対の手でつかんだ。
スパスパスパッ!と切れる。

「いやー、さっきさあ、トバ切ってたら自分の指切っちゃってさあ」

なるほど。そのときの怪我か。
いやいや、登山者を襲うために包丁を研いでいたのだ。そのとき指を切ったはずだ。

蛇を5センチほど4つ切った。
なんだ5センチかよ。10センチはほしい。
いやいや、これは鮭とばではない。

老人は気さくさをアピールする。
家に入れと小屋の引き戸を大きくあけた。
部屋をのぞく。一見山小屋風だ。
ストーブに小さな寝床。ミニコンポなんかもある。
ただ、汚い。
いろんなものが落ちてる。ゴミやら缶やら。
老人は椅子を4脚出してくれた。
オレは椅子をしっかり確認する。ベルトがついていないかだ。
手足が縛られては次の手が講じられない。どんな手だ。

極めつけはストーブの前の生き血たっぷりの洗面器だ。
さては夜な夜な血をすすってるのかもしれない。これは絶対人間の血だ。
吸血じじいスンダラベッチャー。

オレらは一体生きて帰れるのだろうか。
トレイルランニングしにきただけなのに。

(スンダラベッチャー)

スンダラベッチャーは蛇をストーブに乗せて炙り始めた。
すごくミリンの効いたいい香りがしてきた。
「ホレ、この洗面器のはタレなんだけどさ、
オレ出身が北海道の帯広で、親戚が鮭送ってくるわけよ、毎年。
で、さばいて、タレに漬け込んでトバにして干すのさ。」

いやいや人の血でしょ。

オレはいちお礼儀正しく話したよ。
声は震えてたかもしれないけど。
「おじさん、悪いっすね。突然招いてもらって。
いやー、山で蛇、、じゃなく鮭とば食えるとは嬉しい。
もしかしてビールもあっちゃったりして??(笑)」
「もちろんあるよー、日本酒もあるよー」

ははー、オレらを酔わせて夜は人鍋なのかああ!!!怖すぎる!!

蛇がいいかんじ焼けた。
ほら食えとスンダラベッチャーが言う。

意を決し食ってみる。
蛇は珍しいものではない。普通に食う文化もある。
ゆっくり噛む。いやー、美味い。売ってる鮭とばではない。
自家製のモノホンとばである。
さすがにお酒は遠慮した。
(うまいフリ)

(楽しいフリ)

スンダラベッチャーはここ丹沢に来て50年になるという。
土建業を営んできたが、今は趣味的なもので麓の家から毎日この小屋に来ているという。
500坪自分の土地で、畑もあって自給自足できているという。
低山だけど、鹿、イノシシ、熊はしょっちゅう出て、
そいつらを仕留めるのでいい肉はたくさんあるからまた来い!と言ってくれた。

近く、国道246が高取山、弘法山の下を通すため、上にあるこの小屋を解体して土地を国に売るらしい。
最近目の調子が悪く、買ったばかりのクラウンRSはシートカバーかぶせて寝かせてるとか。
700万だね。

という話を聞いて、オレは気がついたらトレイルを走っていた。
他の3人もだ。気がついたら走っていた。
どうやって敷地を出たのか、わかっていない。

(走ってるフリ)

蛇の館、死霊が棲む家、謎の老人スンダラベッチャー。

その日から高熱が続き、結局年末年始は寝て過ごすことに。
やれやれだ。この出来事がきっかけなのだ。高熱のね。

まあ、不摂生しないで身体に気をつけろよ、
生きてるからこそ出会いはあるよ。
山のお告げなのだと思う。

熱が出ないでどこか山走ってたら事故に遭っていたかもしれないしね。

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