今回の出張で、失語症を見落としているケースが目立ちましたので、2009年10月の記事を加筆して再掲載しますから、失語症の復習をしてください。
特に入力障害 のタイプは念頭に置いていないと見落としがちになります。
(聞き取りが難しくなっているが、滑らかに話すため気づかれないこともある。キーワードが言えない。発言量は多いが何を言いたいのかわかりにくい。右下肢の運動マヒを伴うことが多い)
7月に検査した結果が届きました。
タイトルの質問に対する答えは「暑くないので、扇風機は出してない」
テスターは???だったことでしょうね。
採点はもちろんゼロですが、答えから言っても今の季節がわかっていない風でもないし、当たらずといえども遠からじです。
特筆すべきは年月日は繰り返し確認しても満点!(時の低下順が違います!)
こういうときは「春・夏・秋・冬で言うと何でしょうか」と重ねて聞くのです。入力障害がありますから、もしかしたら正答できない可能性もあります。その時は春夏秋冬の風景写真や絵を出して選択してもらってもいいでしょう。
木の実四兄弟
四男はこんなに小さく 長男はこんなに大きい
検査をしていて間違いの反応があると、どぎまぎしてしまうテスターがいますが、私たちが検査をする目的は「できないこと、できないところはないかを調べること」なのです。
答えが間違っているとします。
ケースは3通り考えられます。
①テスターの力不足。
声が小さい(とくに相手に聴力の問題がある場合には、十分な配慮が必要)
マニュアル通りに教示していても、相手には沁み込んでいかないような言い方をしている。
検査状況が悪いことへの配慮不足(家庭訪問時など、気が散る状況が起きることもある)。
脳の能力に問題があって、どうしても答えられない場合。これには2種類あります。
②相手の前頭葉機能だけに問題がある場合
脳の能力としては、当然答えられるのに前頭葉の注意集中力が低下している場合には「心ここにあらず」の状態になって答えられないということが起きてくる。
このような場合は、検査を実施する際に、注意力をしっかりこちらに向けてもらう必要があるのです。
具体的には、しっかりと目を見てはっきりした口調、メリハリの利いた言い方を心がけることは常に大切なことですが、一層気をつけるようにします。
それでも失敗したらどうするか。
その時は再検査をすべきなのです。そしてスラリと回答できたらテストの採点は変えることはしませんが、脳の能力には問題がないと結論付けられます。
③調べたい脳機能に問題があるためにできない。
この場合、何度繰り返しても正答になりません。
人対人の検査ですから、このくらいのフレキシビリティを持っていてください。
私たちは、合格・不合格を決めるための検査をしているのでも、成績優秀者のランク付けのための検査をしているのでもありません。
その人の脳機能に問題がないかどうかをチェックしてあげているのですよ。
この被検査者のMMSの結果は、記銘で2/3 計算は0/5 口頭命令1/3 書字命令0/1 文を書く0/1 右脳の検査項目である模写は当然1/1と続きました。
ついでに、想起2/3でした!老化が加速された時の低下順とまったく違うことがわかりますか?
どうですか?言語野の障害が見えてきますよね?(計算は左脳言語野の近くで行われる)
入力障害の印象が強いです。このことを知るために私たちは検査をしているのです。マニュアルC95Pに書いておきましたが、入力障害の場合はことにボケと間違われやすいということも知っておいてください。