脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

0点と1点の間

2017年12月07日 | 二段階方式って?
エイジングライフ研究所の二段階方式では、認知症を脳機能から理解します。
(普通は症状から理解するのです。)今日の写真は北九州市響灘緑地で撮ったものです。

その人の行動を決めるベースは、どう考えても脳機能です。ところが周りの環境、特に人間関係によって症状がより悪く出てしまうことは、容易に想像できますね。
今日の報告は、私たちの二段階方式を学んだ保健師さんが、実のお母さんを「脳機能から理解する」というアプローチでここ2〜3年み続けて来た記録です。

お母さんは長女夫婦と同居していました。お父さんが亡くなって一人暮らしをしていましたが、軽い虚血発作を起こし、87歳という高齢も理由に同居が始まったのです。娘と住むのは結構理想的と言われるのですが、長女の夫にあたる人が、一言で言えば厳しい人。
例えば、「転んだら本人は骨折でひどい目にあうし、家族は介護が大変。いずれにしても困るから一人で外出はしないように」そこはまあ、納得するにしても、お母さんの大きな生き甲斐であった花や野菜作りも「いらないことして転んだらどうする」「そんなものは買っても大したものじゃない」「年寄りを働かせてと言われたら顔が潰れる」

お部屋での生活も、細々した注意が短冊に書かれていて、次女である保健師さんがみてもうんざりするような有様だったそうです。
とにかく認知症を寄せ付けない、つまり自分らしく生き生きと楽しく生活するということからかけ離れた生活実態だったわけです。普通の人が見ても、聞いても「これはマズイ」という状況ですね。
その危険性を十二分に理解していた保健師さんは、心配で心配で、というたまらない日々を過ごしたのです。それで、どういう行動をとったでしょうか?

少しは説明して頼んで見るのです、お姉さんに。でもお婿さんは一言のもとにはねつけます。
「何かあったら、責任を取るのは我々だから、横から口を挟まないでくれ」
私はいつも生活指導をする時に、「同居していない家族は、手を出すか、お金を出すか。口だけ出すのは止めること」といいます。これは同居家族がソコソコ正しい対応をしている時という条件が必要ですね。次女の方は保健師という専門職であるがゆえに、かえって口を開きにくくしたという事情もあったようです。

お母さんの顔を見に行きたい!のになかなかお婿さんの目が気になって会いに行くこともできない。今のお母さんの生活は脳にとっていい状態のはずはない。実際、たまに会ってみると、小ボケから少し進んで中ボケが見え始めて来るレベル。次女の保健師さんはジレンマに苦しんだことでしょう。
いくつかの「事件」があったことだろうと思うのです。
「たまたま、割合に行きやすところにあるグループホームに入所することになりました」という連絡がありました。今年の4月のことです。
私「どのくらい(の脳機能レベル)の方達がいらっしゃるのでしょね。重度の方ばかりでないと、もともと人好きのお母さんだから、きっと楽しいと思われるでしょうね。万一重い方ばかりだとしても、お母さんがまだまだ、いろいろできるレベルだから、そのことをスタッフの方にわかっていただくと、新しい生活が始まるはず。お婿さんに監視されているような状態よりずっと可能性が広がったんじゃないですか」と、嬉しくなって返事をしました。
保健師さんからは、それでもこれが一番いい選択かどうか自信がないニュアンスが感じられます。
地方に住むと、お年寄りは家族に見守られて自宅で住むのが一番という考えがまだまだ強いようです。よほどボケが進んだ場合は入所の選択もありますが。

保健師さんからいただいたメールです。
「母がグループホームに入所して1か月が過ぎました。
おかげさまで、母は施設にも少し慣れ、対応し甲斐のある状態で、本当に喜んでいます。
入所したばかりの頃は、姉たちが「もう一生家には帰れない」というようなことを言ったようで、ふてくされたような暗い顔をして、時々涙していました。
母がそう言うので、いつでも外出・外泊できることを何度も話してやったら、安心したようです。
最近は、目が少しシャンとしてきて、笑顔も増えました。
月がわからなくなりかけていたのが、最近は少し安定してきました。月の変わり目はわかりにくかったですが、概ね正解で、連休もわかっています。自信はなさそうに言いますが・・・。

子や孫たちやが訪ねてくれたのも覚えていました。
また、義兄ががんの手術をしたのですが、そのことも話題にすると、「前立腺がんだったかいね?」と正しいことを言います。
会話がスムースに進むのでうれしくなります。

体力的にも、歩きぶりがよくなり、入浴も声掛け見守りで、浴槽もまたいで入るそうですし、自分で洗えるところは洗うそうです。
食事もゆっくりですが完食で、間食も出る分はいただいています。
入浴も毎日、歯磨きも毎食後、紙パンツも今は布パンツに尿取りパットで、尿臭もなくなり心配していた清潔面が改善していいことづくめです。

施設内では、食器やお盆拭き、お茶注ぎ、タオルたたみなどを手伝っています。
もう少し落ち着いたら、もう少し頭を使うような内容の役割を考えてもらおうと思っています。

連休はなかなか面会に行けませんでしたが、刺激がいっぱいの中で過ごしていると思うとこちらのストレスもずいぶん少なく、天気も良かったので私も思うことをさせてもらいました。」

保健師さんのきもちがよく伝わってきますねえ…

さて今日のテーマです。
エイジングライフ研究所では、脳機能検査は厳密な手法をとって行うことがまず絶対的な前提で、その結果の評価もまた厳密に決められています。
入所直前の検査のうち、お母さんが書かれたものです。

そして入所して約3ヶ月たった時のもの。

厳密に評価すると、脳機能検査としては「変化なし」となります。
ただよくよく結果(脳機能がどのように働いたか)を検討して見ましょう。
用紙の使い方が広くなったことは、活動性が上がったこととまさに関連していると思います。そして一番わかりやすのは、立方体透視図の模写がほんとに今一歩のところまで来たことでしょう。
文章も長く複雑になっています。
見落としがちなことは、日付です。初回は手も足も出ない状態ですね。2回目は29年8月4日を26年7月6日という間違いで、本当にこれも今一歩。第一自発的に書いてくれました。

エイジングライフ研究所の二段階方式では、脳機能を厳密に点数化するのです。
そうなのですが。
今回のように 、生活面では十分に改善がわかる時に、厳密に評価すると「維持」になってしまうこともあります。大体は3ヶ月くらいで脳機能が改善または低下することが原則ですが、多少のズレは当然考えておくべきです。
0点と1点だけしかないのではなく、その間にも目を配りましょう。

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