脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

認知症からの回復ー兄のこと&知人のYさんのこと ①

2015年05月13日 | 認知症からの回復

FB上で友人が発言していました。
「知人のYさんが認知症になったと最近Yさんのお友達から聞いたのだけど、早く手を打ちさえすれば治る病気なのに!」と切歯扼腕している様子が伝わってきます。
この友人は、もう20年以上も前に取材を受けた時からのお付き合いですから、折に触れては「認知症の正体」などの話をし続けていました。
先日、遊びに見えたとき「ボケって早く見つけると治せるのよ。具体的に兄の話をしましょうか」と私の兄のことを話しました。
「兄のこと―前頭葉の話」としてブログにまとめましたから読んでみてください。
http://blog.goo.ne.jp/ageinglife/e/c0f0ac2ac88b0f7fc7abd8a2081d5027

ブログには掲載していませんが、兄からの歩数連絡を毎月2回、前半後半に分けてエクセルのグラフにして送ってあげました。目標値は兄が決めた通りに設定してあります。

脳リハビリ開始時(2011年9月)赤の部分が朝歩いた歩数で、青の部分がそれからあと寝るまでに歩いた歩数です。

快調に進んでいたころ(2012年10月)

毎月の歩数平均

2012年12月~2013年1月の減少は、転倒して腰痛がひどかったためですが、この時はドクターもびっくりするくらいの根性で歩行訓練をこなしたそうです。
2013年夏から、かなり苦しい状態だったようですが、特別の訴えもなくがんばっていました。
9月に入って「どうしても苦しい。息が切れる」ということで入院。(その後のことはブログに書きました。)2014年1月に75歳で亡くなりました。

数値になるということは、それだけでも説得力がありますね。生活ぶりが目に浮かぶようです。
歩いただけで、もちろん家族や私の励ましはあったわけですが、薬もなく特別のこともせず、ほんとに歩いただけで兄はカムバックしてくれました。

脳が働かないと、体が元気でも何もしなくて居眠りばかりという状態になります。この小ボケの状態は、前頭葉機能が機能していない状態です。
一見したところ全く普通に見えますが、前頭葉機能低下ということは、その人の根源が機能していないこと。つまりその人らしく生きてはいないということを、もっと皆さんは知る必要があると思います。
でも、この時なら兄のように自分の力で回復させることができるのです!
兄は歩いて治りました。趣味を復活させて元気を取り戻した人もいるし、家族のために家事を復活させた人もいます。

一碧湖の丁子草


兄のように、体がもう持たないという場合はそれは「死」に直結することになりますから、それも一つの人生のありようです。人は皆死にゆくものですから。



病気がそこまで進行した場合は受け入れざるを得ないとして、そこまででなくとも、脳は働いているけれども、体が利かない・・・このジレンマを感じながら生活をし続ける人はたくさんいらっしゃると思います。
腰が痛い、膝が痛い、目が見えにくい、耳が聞こえにくいなどなど。
このように考えたら、病気でなくても齢をとるということそのものが一種の喪失体験ですね。できていたことができなくなったり、疲れたり、忘れたり、その他の失敗があったり。

ベストとは言えない状況の中でなおかつ自分らしく生きていけるような前頭葉を育て上げておかなくてはいけません。負けないで、できることはやり続けましょう。負けるとそれは認知症への道に入ったということになりますから。



私たちは、認知症のうちの大多数を占めている「アルツハイマー型認知症」というタイプの認知症は、高齢者が生きる意欲をそがれてしまうようなできことにぶつかり、そのことに負けて意欲を失っていき、「趣味も生きがいも交友もなく、運動もしない」ナイナイ尽くしの単調な生活が続くようになると、脳が廃用性の加速度的で異常な機能低下を起こして老化が加速され、小ボケ、中ボケと症状が進行していき、その行きつく先に世間でいう認知症(ただし、大ボケの段階。改善は非常に困難)が待っていると考えています。

兄は、会社を長男に譲り経営の一線から身を引いたときに追い打ちをかけるように糖尿病になり緊急入院したことが、ナイナイ尽くしの単調な生活が始まる「きっかけ」になりました。
「孫が成長して手元を離れた」ことをきっかけに、ナイナイ尽くしの生活になり脳の老化が加速された人もいます。
又ある人は「骨折」が、又ある人は「子供の離婚騒動」が、「本人や家族のがんなどの重病」がきっかけのこともあります。

キジが丁子草の茂みに!

もちろん、脳卒中も「きっかけ」になります。ただ他の「きっかけ」と違って脳卒中には厄介な後遺症というものがありますね。一旦大きく損傷された脳は、元通りになることはありません。リハビリで改善されるところまでで、治らなかった機能は治らないままに生活していかなくてはいけないのです(後遺症)。
「後遺症」の理解が、また問題。手足のマヒはよくわかるのですが、いわゆる高次機能については、説明がきちんと行われるのは話しにくいタイプの失語症くらいでしょうか。
その部分と、使わないからうまく働けなくなった機能をきちんと分ける必要があります。それが、今言ってきたようにまた脳を使い始めることによって改善していく部分です。兄は脳卒中の後遺症はありませんでしたから、歩くことで、脳機能全般の改善ができました。

閑話休題。認知症を、脳機能検査という客観的指標で評価することがもう少し実施されたらいいのに。
そうすると「後遺症」がどういう機能に及んでいるかすぐわかります。「喪失体験」に負けて脳の老化を加速させているかどうかもすぐわかりますから。

次回は、Yさんの後遺症を推理してみましょう。


 

 


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