脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

小ボケの症状2

2013年10月27日 | 正常から認知症への移り変わり

またまた、友人から聞いた話です。
その友人の、お友だちのお母さんの話です。

同じ敷地の中で、一人暮らしで別所帯を営んでいるしっかり者のお母さん。90歳です。

北東北の10月の風情
P1000087_2 ある日嫁に訴えたそうです。
「ガスが付かなくなってるけど、どうしてこんな意地悪なことをするの」

「文句があるなら,ちゃんとそう言ってくれたらいいのに」

「私が、この家のためにどのくらい苦労したか、娘のあんたなら十分わかってるはずでしょ!」

「今だって一人でがんばってる。農作業だってがんばってる。そのことは誰でも認めてくれる程だよ!それなのに、どうして!」

「なにが起きているか。きっと自動消火装置が働いたはず」と思いながら、 早速別棟の台所に急いでみました。
最近のガスレンジは、事故防止のために一定時間過ぎると勝手に消える機能が付いているそうです。
案の定、推理通りの展開だったのです。
そのうえに、はっきりとはしなかったそうですが
「元栓閉めてて、言われたら開くなんてひきょう者・・・」
みたいなことをブツブツ言われて、そのお友達はパニック状態になってしまったとか。

2010_1019_140300p1000114 「あの、しっかり者のお母さんが。こんなことを起こすなんて」が第一でしょうし、それ以上に
「私が悪者、犯人扱いされるなんて」
言われた言葉に深く傷ついたはずです。

小ボケを通り越して中ボケになっても、言葉はほんとに普通に話せるのです。
ただし、一見普通と言うだけで、本質的にはおかしいのですけれど。
このケースでも、日本語としては言葉もおかしくないし文法だって間違えていない。文章は完璧!
でも、考えてみてください。
内容が変でしょう。

状況の理解や判断ができていない。
いくら文章が文法的に正しくても、内容が間違っているところがボケている証拠。

P1000086 「いやぁ、勘違いやまちがえることだってあるし・・・」という声が聞こえそうです(笑)

若い頃から、こういった偏った性格だったとしたら、何度も繰り返し、こういった「事件」が起きているはずです。
その時には、家族は傷つくかもしれませんが、パニックにはなりません。

ちょっと譲ってみましょうか。
確かにこういう、勘違いによる「事件」もあるかもしれません。一度だけならです!
でも、それが何度も何度も繰り返されるでしょうか?

小ボケになったら、ということは前頭葉が満足に働いていませんから、状況判断はいつも不完全。
つまり、このような「事件」が繰り返し起きてしまうのです。
家族は最初はびっくりしたり、傷ついたり、応戦して口げんかになったりします。そのうち
「ボケのような症状はないけど・・・だって徘徊もないし夜中に騒ぐこともないし、家族の顔だって分かるし・・・でも変。ボケ始めているのかなあ」と不安が募ってくるものです。

この失敗や事件が単に年齢のせいかどうか?P1000088_2
正統的には脳の機能検査が必要なのですが、一般の人たちができる見分け方があります。
このように日常自分の身の回りのことはできるのに、そして言うことは普通なのに(あくまでも文法的にですが)やることなすことがどこか変。

そのようなときにチェックしてほしいことがあります。
最近、といってもここ3年くらい前、1~2年前のようにもっと短期間のこともありますが、そのお年寄りの生活が大きく変わってしまうような出来事があったかなかったか。

その出来事の後、それまで続けていたその人らしい生活が続けられなくなっていないかを確認してください。

それまでの生きがいや趣味や交友などの楽しみや運動さえもしなくなった生活が続いていないか、がカギなのです。

P1000099ナイナイ尽くしの生活は脳の老化を加速させるのです。
ナイナイ尽くしの生活が始まってだいたい3年間が小ボケの期間。つまり生活が変わってしまうきっかけ起きたのが3年以内なら小ボケの可能性が高いです。

小ボケにこだわるのは、小ボケならば自覚がある。次の段階の中ボケになると自覚がなくなりますから、どうしても早く見つけたいのです。
「脳がうまく働かない」という小ボケの人たちの実感を、この何もしない生活のせいだと説明して、
「元のように脳を使う生活に戻りましょう。そうしないとドンドン脳の元気がなくなります」と励ますのです。

後から聞いた話です。
このおばあさんは、3年前に生活が変わるきっかけがあったのです!
ご近所の一番親しくしていた友人が都会の息子のところで同居することになって、しかもそれが急に決まったことだったのであわただしく転居してしまったのだそうです。
毎日のように会ってはお茶のみを楽しんでいた(嫁の愚痴もおしゃべりしていたかも?)友人がいなくなることを、このおばあさんは人生の楽しみを取り上げられたように感じたのでしょうね。P1000090

さらに続けて、近所にたった一人残っていた小学校からの友人も転居。

この夏の暑さで体調不良も起こしてしまい、残された生きがいである農作業もままならない時期が続いた・・・こういう生活が認知症を呼び込むのです。

その結果、不思議な事件が起きるのです。

できるだけ早く、生活をもとに戻す工夫をしましょう。
筆頭は散歩ですね。
それから、声掛け。ちょっとした外出。洋服やおやつなどの些細なことでも、決めてもらう。
趣味があれば一番なんですけどねぇ・・・


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