脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

続 慢性硬膜下血腫で初笑いー右足が上がらない

2015年01月11日 | 左脳の働き・失語症

前記事「慢性硬膜下血腫で初笑い」の付録です。
「朝起きたら右足が上がらなかった。なんだか変だった」とT葉さんが言ったことを報告しましたね。

私は続けて質問しました。
「言葉はしゃべれるのに、なんだかわかりにくいということはなかったかしら?
聞こえているけれど、何を言いたいのかわかりにくい。
英語は聞こえていても、意味は分からないでしょ?あんな感じというか・・・」

間髪入れずに
「ああ、そういえば。
ボクはとにかく面倒。とにかくやる気がでない。とばかり思っていたけど、言われてみるとそうだったかも。『妻の言葉がわからない』なんて思ってもいないので、『面倒なので聞いてない』ことにしたのかもしれないな~」

「もちろん今は大丈夫でしょ?」
「ああ。まったく元通り!」
「元に戻ったのは、手術台の上で、でしょ」のやり取りがありました。

見てきたようなことを言っていますね。
かといって、私に透視能力があるわけではありません!

脳機能というのはおもしろくて、症状によく耳を傾けると、脳のどの場所に問題があるか見えてきます。
CTやMRIが普及する前の脳外科では(見ることができないので)、どこに病変があるかは、とにかく患者さんの訴えることや家族による経過報告をよく聞いたそうです。
今は詳細な画像診断ができるので、かえって症状を真剣に聞く姿勢が減ってきていると聞いたことがあります。

(ハワイの州鳥 ネネ)


「左脳と右半身が関連している」ということと「左脳と言葉が関連している」はみなさんがよく知っています。(右欄カテゴリーの中の「左脳の働き 失語症」を見てください)
上半身を動かす場所やそこを養う血管と、下半身を動かす場所やそこを養う血管は違います。
「言葉」とひとくくりに言いますが「書いたり、話したりする」のは脳から外へ向かう動きですから「運動性」といいますし、「聞いたり、読んだりする」のは外から脳へ入ってくる情報ですから「感覚性」といいます。

非常にシンプルに言ってしまうと、右上半身に障害が起きたときには同時に「話せない」というように脳から出ていく情報処理にも障害があることが多いのです。
右下半身に障害が起きたときには、「聞き取りにくい」というような脳に入ってくる情報処理の障害が伴うことが多いのです。



脳が、それぞれの場所で違う働きを持っているということは、興味深いことですね。
脳卒中を起こした人に対するときには、こういう簡単なことでも、一応知っておいた方が対応が楽ですよ。


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