(1969/アンリ・ヴェルヌイユ監督・共同脚本/ジャン・ギャバン、アラン・ドロン、リノ・ヴァンチュラ、イリナ・デミック、シドニー・チャップリン、アメデオ・ナザーリ、マルク・ポレル/124分)
高校生の頃に封切りされた本作。「地下室のメロディー」、「ダンケルク」でファンになっていたベルヌイユ作品なのでタイトルは覚えましたが、当時は観らず終いでした。3年前にNHK-BSで放送されたのを録画していて、今頃鑑賞と相成った次第であります。
エンニオ・モリコーネのテーマミュージックが懐かしいですなぁ。「みんなのシネマレビュー」なるサイトを見ると、<ギャング映画なのにエンニオ・モリコーネの異様な音楽、たまに、いや結構な割合でボヨーンって鳴るあの音が気になって気になってしゃあない>とか、<エンニオ・モリコーネの調べが間抜けな本作>とか、モリコーネ節は不評のようです。「ボヨーン」には確かに名を上げたマカロニ・ウェスタンの名残が見えますが、40年経った今でも覚えているし、悪くないと思うんですがねぇ。時代でしょうか。
さて、お縄になったパリの一匹狼の殺し屋サルテ(ドロン)が、ヴィットリオ(ギャバン)を長とするシチリア出身のマフィア一家の手引きにより、護送途中に脱走に成功、パリ市内に潜伏する。投獄中に知り合った男からパリで開催中の宝石展の警備システムの図面を入手していたサルテは、ヴィットリオに宝石強奪の計画を持ちかける。計画の規模の大きさからヴィットリオはNYのマフィアの知人トニーに声を掛けて下調べをする。展示会場から頂戴するのが困難だと判断したヴィットリオは、この宝石類の展示が、パリの後ニューヨークに移動することに目をつけ、トニー一味と連携して空輸中の飛行機をハイジャックして盗む事にする。
移動直前にアメリカからやって来た宝石展の責任者に成りすますサルテ。離陸直前にサルテが飛行機に乗り込んでいたことを察知したパリ警察は、ニューヨークと連携して、飛行機の到着を待つのだが・・・というお話。
序盤の語りを観ながら、フランス映画って邦画に似てるなぁと思いましたな。(サルテの脱走シーン以外)カット構成が説明過多でまどろっこしい。ま、邦画に似ているというよりは、邦画がフランス映画を参考にして育ったからなんでしょうが。
それが、宝石強奪の段に入ってからは、流石ベルヌイユさん、さて次はどうなる、この後は・・・と、観客を引っ張る語り口が滑らかで、特に宝石が積まれた飛行機にギャング共が乗り込んで、そこに予想もしてなかった宝石展の責任者の奥さんが登場した後からの、ハラハラドキドキさせるカットバックはお見事でした。この辺りではお薦め度は満点に成るかもと思ってたんですが。
ベルヌイユと一緒に脚本を書いたジョゼ・ジョヴァンニは、ヴェルヌイユが自分の書いたシナリオを大衆受けする目的で大幅に改編したと後に批判したそうです。
フレンチ・フィルム・ノワールといわれる作品を多く作ってきたジョヴァンニにすれば、この映画もその系列の一つとして考えていたんでしょうが、僕には結末に変なフィルム・ノワールらしさが出てきて、かえってソレまでの犯罪サスペンスとしての面白さに水を差してしまっているように感じます。“シシリアン”という特色は残しつつ、「地下室のメロディー」みたいに犯罪は割に合わないんだという裏稼業の哀しさを漂わせて終了、というのが良かったのですがねぇ。
「冒険者たち」でドロンと共演したリノ・ヴァンチュラが、パリ警察の警部ル・ゴフ役。「死刑台のエレベーター」といい、彼には刑事役が似合いますね。
イリナ・デミックはヴィットリオの息子の嫁ジャンヌ。家族で自分だけシチリア出身じゃないので疎外感を覚えていたジャンヌが、同じく孤独そうなサルテに色目を使った事が後に大事に発展する。
NYのマフィア、トニーに扮したのが「カビリアの夜」でカビリアが憧れた俳優を演じていたアメデオ・ナザーリ。
ドロンの元奥さんナタリーと後に浮名を流すマルク・ポレルがヴィットリオ一家の息子(ジャンヌの夫の兄弟)役で出ていました。
高校生の頃に封切りされた本作。「地下室のメロディー」、「ダンケルク」でファンになっていたベルヌイユ作品なのでタイトルは覚えましたが、当時は観らず終いでした。3年前にNHK-BSで放送されたのを録画していて、今頃鑑賞と相成った次第であります。
エンニオ・モリコーネのテーマミュージックが懐かしいですなぁ。「みんなのシネマレビュー」なるサイトを見ると、<ギャング映画なのにエンニオ・モリコーネの異様な音楽、たまに、いや結構な割合でボヨーンって鳴るあの音が気になって気になってしゃあない>とか、<エンニオ・モリコーネの調べが間抜けな本作>とか、モリコーネ節は不評のようです。「ボヨーン」には確かに名を上げたマカロニ・ウェスタンの名残が見えますが、40年経った今でも覚えているし、悪くないと思うんですがねぇ。時代でしょうか。
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移動直前にアメリカからやって来た宝石展の責任者に成りすますサルテ。離陸直前にサルテが飛行機に乗り込んでいたことを察知したパリ警察は、ニューヨークと連携して、飛行機の到着を待つのだが・・・というお話。
序盤の語りを観ながら、フランス映画って邦画に似てるなぁと思いましたな。(サルテの脱走シーン以外)カット構成が説明過多でまどろっこしい。ま、邦画に似ているというよりは、邦画がフランス映画を参考にして育ったからなんでしょうが。
それが、宝石強奪の段に入ってからは、流石ベルヌイユさん、さて次はどうなる、この後は・・・と、観客を引っ張る語り口が滑らかで、特に宝石が積まれた飛行機にギャング共が乗り込んで、そこに予想もしてなかった宝石展の責任者の奥さんが登場した後からの、ハラハラドキドキさせるカットバックはお見事でした。この辺りではお薦め度は満点に成るかもと思ってたんですが。
ベルヌイユと一緒に脚本を書いたジョゼ・ジョヴァンニは、ヴェルヌイユが自分の書いたシナリオを大衆受けする目的で大幅に改編したと後に批判したそうです。
フレンチ・フィルム・ノワールといわれる作品を多く作ってきたジョヴァンニにすれば、この映画もその系列の一つとして考えていたんでしょうが、僕には結末に変なフィルム・ノワールらしさが出てきて、かえってソレまでの犯罪サスペンスとしての面白さに水を差してしまっているように感じます。“シシリアン”という特色は残しつつ、「地下室のメロディー」みたいに犯罪は割に合わないんだという裏稼業の哀しさを漂わせて終了、というのが良かったのですがねぇ。
「冒険者たち」でドロンと共演したリノ・ヴァンチュラが、パリ警察の警部ル・ゴフ役。「死刑台のエレベーター」といい、彼には刑事役が似合いますね。
イリナ・デミックはヴィットリオの息子の嫁ジャンヌ。家族で自分だけシチリア出身じゃないので疎外感を覚えていたジャンヌが、同じく孤独そうなサルテに色目を使った事が後に大事に発展する。
NYのマフィア、トニーに扮したのが「カビリアの夜」でカビリアが憧れた俳優を演じていたアメデオ・ナザーリ。
ドロンの元奥さんナタリーと後に浮名を流すマルク・ポレルがヴィットリオ一家の息子(ジャンヌの夫の兄弟)役で出ていました。
・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】 ![テアトル十瑠](http://8seasons.life.coocan.jp/img/TJ-1.jpg)
![テアトル十瑠](http://8seasons.life.coocan.jp/img/TJ-1.jpg)
ラストは監督の意図とは違うものだったんですか~。ぜんぜん気付かなくて、普通に静かな終わり方がいいなぁとか思ってました。
>彼には刑事役が似合いますね。
ですよね!
ヴァンチュラもギャバンも大好きで、この作品ではその渋さを堪能できました。
妹思いのサルテはすっかり忘れてます(笑)
いやいや、これは私の完全なる推測です。原作通りの結末なんだと思いますが、ベルヌイユは別の方向性も考えたのではないかという・・・。
>聞き慣れないと思わず噴出しちゃうかもしれないです。
エンニオ・モリコーネのマカロニウェスタン物はみんなこんな感じだったとも思います。で、僕は慣れてた世代だから違和感が無かったんですよね。
>妹思いのサルテはすっかり忘れてます
あの妹との別れの演出も良かったス
ようやく久しぶりにブログ活動?をしています。
さて、「シシリアン」は、版権が複雑なのか日本では今まで英語版しか販売されていませんでしたが、ようやくフランス語版で発売されるようです。あまり評価は高くない作品のようですが、私はたいへん好きな作品ですので、とても楽しみですよ。
では、また。
この記事を書いた頃、トムさんからのコメントを期待していましたが、お休み中だったので、再開をお待ちしていました。
>版権が複雑なのか日本では今まで英語版しか販売されていませんでしたが・・・
僕が見たBS放送はフランス語だったみたいですよ。
>あまり評価は高くない作品のようですが・・・
双葉さんが☆☆☆★★★(75点)を付けられた秀作だったので、いつかは見たいと思っていた作品です。犯罪サスペンスとして面白く観ました。
結末の仲間割れのノワール色が気に入りませんが。
戦前の日本人がフランス映画が大好きだったことが影響しているのでは?
黒澤明などジョン・フォードに似ていると言われることが多い一方で、「酔いどれ天使」なんか戦前のフレンチ・ノワールの雰囲気があるなと感じましたもの。
伝統的にあるのじゃないですかね?
双葉さんの☆☆☆★★★や☆☆☆☆を観ると、条件反射的にその作品が観たくなりましたなあ。
確かに☆☆☆☆は無理だけど☆☆☆★★では勿体ないという感じがあります。
>ノワール色
当時のドロン趣味と言うか、フランス映画界全体がジャン=ピエール・メルヴィルやジョゼ・ジョヴァンニに牽引される形でノワールに染まっていなのでしょうね。
↓
ノワールに染まっていたのでしょうね(正)
中盤の宝石強奪シーンがジョバンニさんはお気に召さなかったのでしょうが、僕はそこが一番好きなんです(^^)
ノワール色という点では、ドロンと妹の別れのシーンなんかは切なくてお気に入りのシーンでした。
そんなこんなで、★三つでは勿体なくて