テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

偶然の旅行者

2013-03-28 | ドラマ
(1988/ローレンス・カスダン監督・製作・共同脚本/ウィリアム・ハート、ジーナ・デイヴィス、キャスリーン・ターナー、エイミー・ライト、ビル・プルマン、エド・ベグリー・Jr/121分)


 ハンバーガーショップの強盗事件に巻き込まれて12歳の一人息子を亡くした旅行ガイド本のライターが、ある日突然奥さんから別れを切り出される。息子が殺されて1年、何事もなかったかのようにしているアナタとはもう暮らせないと告白され、息子の写真を密かに持ち歩いている夫は、自分は悲しみに耐えているだけだと答えるが、奥さんはその煮え切らない態度にも我慢がならないと言う。
 ライターの名はメーコン。奥さんの名はサラ。
 17年連れ添ったサラに出て行かれ、家にはメーコンと息子の愛犬だったエドワードだけ。仕事柄、家を空けることが多いメーコンはエドワードをペットホテルに預けることになるが、以前預けた所はエドワードがスタッフに噛み付いたからと断られ、偶然に見つけたペットショップ兼動物病院に入ってみることにした。応対に出た女性は、本来は予約が必要だが今回は特別だと預かってくれた。女性の名はミュリエル。ミュリエルは犬の調教も出来る女性で、自分も離婚経験者よとあっけらかんと言った。
 旅から帰ったメーコンにミュリエルは困ったことがあったら電話を頂戴と名刺を渡す。エドワードの躾に限らず何でも相談に乗るわと意味深な発言。その後もいきなりメーコンの家に電話をしてきたりする風変わりなミュリエルだったが、メーコンは構わないでいた。
 そんなある日、家の中でエドワードと格闘中に足を骨折したメーコンは兄や妹が暮らす実家に厄介になる事になった。エドワードはここでも客人に吠え掛かったり、終いにはメーコンにも噛み付いた。心配した妹は調教師にでもお願いしたらと提案。メーコンはエドワードの躾をミュリエルに依頼することになるのだが・・・。

*

 メーコンに扮するのはウィリアム・ハート。サラにはキャスリーン・ターナー。そして監督がローレンス・カスダンですから「白いドレスの女」トリオの再現ですな。今回はそれに、ジーナ・デイヴィスが絡む。

 オープニング・クレジットのバックにメーコンの旅の心得のモノローグが流れ、本筋に入っては、彼のシリーズ本「偶然の旅行者(The Accidental Tourist)」の心得通りに旅の途中での見知らぬ人からの話しかけ防止用に飛行機の中で分厚い本を読んでいたら、「偶然の旅行者」のファンだという太ったビジネスマンと遭遇し、その本は僕には(話しかけ防止の)効果無しだねと皮肉られる。モノローグの途中に息子の写真がチラッと出てきて不幸の臭いを滲ませながらも、ユーモラスな趣もあるという序盤。そのすぐ後には今度は奥さんからの突然の三行半と、まさに掴みはオッケーだった訳ですが、その後は優柔不断な主人公よろしく映画も先の見通しが些か悪い展開で、当初はミステリアスだったミュリエルも段々と普通の女性に見えてくるし、主人公の運命にも興味が薄れていく結果になってしまいました。

 アン・タイラーという女性の書いたベストセラー小説の映画化。アカデミー賞にノミネートされた脚色は、ローレンス・カスダンとフランク・ガラチ。
 原作ではサラとメーコンは高校時代に知り合い、高嶺の花だったサラからメーコンに声を掛けてきて付き合いが始まり、メーコンは映画と同じく優柔不断な男として描かれ、サラ以外の女性を知らないまま結婚した事になっているらしい。サラは美人で、ミュリエルはそうでもないという感じ。う~ン。カスダンさん、キャスティングの方向性が間違っちゃぁいませんかね。
 ミュリエルの序盤の登場シーンの幾つかは、ミニスカートの脚元からパンアップしていくセクシーな思わせぶりな描き方で、この辺りも原作のイメージとは違うような気がしますな。

 ジーナ・デイヴィスは、この役で88年のアカデミー賞の助演女優賞を獲ったとか。
 アカデミー賞関連ではあのジョン・ウィリアムズが作曲賞にノミネートされています。確かに心理ドラマに似合った繊細なBGMでした。

 2度目を観る気が湧いてこないのでお薦め度はとりあえず★二つどまり。主人公をきめ細かく描いているとは思いますが、あの優柔不断ぶりは同じ男としても合点がいかない部分があり、素直にお薦めできない感じです。

 あっ、忘れてましたが、アカデミー賞関連では作品賞にもノミネートされたそうです。IMDbのレートは6.7。これは読者の評価の方が合っているような・・・。

*

(↓Twitter on 十瑠 より
今朝は時間が出来そうだったので、夕べ録画DVDの中から「偶然の旅行者」を選んで早朝から観てみた。ローレンス・カスダン作品。主演がウィリアム・ハート。女房に三行半を食らった男に新しく彼女が出来たものの、別居していた女房が再び戻ってきて・・という話。
 [3月 26日 以下同じ]

優柔不断な男が主人公で、映画も前半は面白く見ていたが、途中からストーリーも優柔不断で男がどっちを選ぶのか分からなくなってしまう。その辺りにハラハラさせるものがあれば面白いんだけど、途中からはどっちに転んでもイイやと思ってしまったな。時間の流れも曖昧だったし。とりあえず★二つ。

「偶然の旅行者」。共演はキャスリーン・ターナーとジーナ・デービス。デービスが新しい彼女の役なんだけど、最初は変わった女性だったんだが、そのミステリアスに発展がなく、途中からは魅力を感じなくなった。いつか彼女がズドンと拳銃でも撃つんじゃないかと思っちゃったこっちが悪いのかな^^
 [3月 27日]

「偶然の旅行者」の文章を少し修正。そういえばallcinemaのこの映画のデータでスタッフに編集者の名前がなかったが、IMDbで調べるとキャロル・リトルトンという女性だった。「白いドレスの女」、「E.T.」、リメイク版の「悪魔のような女」など。
 [3月 28日 以下同じ]

「偶然の旅行者」。ラストは前半の予想通りの決着なのは映画的には納得でも、彼女の魅力が全開してない感じが残っているのでカタルシスは微妙。それとそのラストシークエンスで亡き息子に良く似た少年を街角で見かけるシーンがあるんだけど、あれもあんまり生きてないなぁ。

「偶然の旅行者」の終盤で腰痛を抱えてパリのホテルを後にした主人公が重い荷物を道端に捨ててしまうシーンがある。その後暫く歩いた所でタクシーを拾い空港に向かう訳だけど、それならもう一度荷物を拾えばイイのにって思っちゃうね。勿論、この荷物は彼の過去を意味するからそうは出来ないんだけど。

さっきのツイートで、道端に捨てた荷物を主人公の過去と書いたけど、正確に言えば、これまでの彼の考え方というか、生き方と読み替えた方がいいかな。息子の写真はちゃんと荷物から取り出していたからね。


▼(ネタバレ注意)
 メーコンの本を出版している会社の社長ジュリアンを演じているのは、「めぐり逢えたら」でメグ・ライアンの可哀相な元婚約者だったビル・プルマン。ジュリアンは実家に戻っているメーコンを訪ねて、彼の妹ローズ(エイミー・ライト)に一目惚れする。メーコンの家族は皆変人で、ローズもジュリアンと結婚しながら実家の兄達が心配で、結婚後も実家に戻って食事だけ作りにジュリアンとの家に通うという変な暮らしを始める。自分が嫌われているのではないかと悲しむジュリアンに、メーコンはローズに会社を手伝わせればいいと言う。ローズは人の世話が好きだから、きっと嬉々として君に会いに来るだろうと。
 メーコンの助言は大正解だった訳ですが、この妹夫婦のエピソードは自らに素直になる事によって幸せを得るというメーコンへの逆メッセージにもなっているのでしょう。
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・お薦め度【★★=悪くはないけどネ】 テアトル十瑠

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