テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

愛と哀しみの果て

2015-12-27 | ドラマ
(1985/シドニー・ポラック製作・監督/メリル・ストリープ、ロバート・レッドフォード、クラウス・マリア・ブランダウアー、マイケル・キッチン(=コール)、マリック・ボーウェンズ(=ファラ)、ジョセフ・シアカ(=カマンテ)、スザンナ・ハミルトン(=フェリシティ)/161分)


 20世紀のデンマークを代表する女流作家と謂われるカレン・ブリクセンの、自身のアフリカでの17年の生活を綴った回想録(この時はアイザック・ディネーセンというペンネームを使っている)『アフリカの日々【原題:Out of Africa】』を元に作られたハリウッド映画。
 クレジットではディネーセン以外にジュディス・サーマン、エロール・トルゼビンスキーという二人の作家が原作者に名前を連ねていますが、後の二人はディネーセンに関する伝記などを書いた人らしく、要するに客観的なエピソードも盛り込んだということでしょうか。
 上映時間2時間40分。アカデミー賞7部門受賞という正しくシドニー・ポラックの代表作でありますな。

*

 20世紀初頭。デンマークの資産家令嬢カレン(ストリープ)はスウェーデン貴族のハンスと付き合っていたが、彼には結婚する意志がなく、浮気がちでもあったために、気心の知れたハンスの双子の弟ブロル(ブランダウアー)と打算的に結婚する。ブロルには無い財産がカレンには有り、外国に出て行きたいカレンをブロルはエスコートしてくれるだろうし、なにしろカレンは男爵夫人になれるのだから。
 第一次世界大戦勃発直前の1913年。ローマ経由でカレンはブロルの待つイギリス領ケニヤに降り立った。
 二人の計画ではケニヤで酪農牧場を経営するはずだったが、ブロルは牛の世話は嫌だと勝手にコーヒー栽培を始めていた。ケニヤの高地でコーヒー栽培の実績はなく、収穫も3年ないしは4年後となると聞いてカレンはがっかりする。要するに地道な仕事をやる気がブロルにはないのだ。
 『今度計画を変更する時は自分のお金でして』
 のっけから二人には不協和音が生じていた。

 ブロルはアフリカでサファリ(猛獣狩り)に楽しみを見出し、長く家を空けるようになったので、農場経営は実質カレンに任されることになった。執事たちの教育、労役を提供してもらう為の現地民との交渉など慣れない事も多かったが彼女は持ち前の行動力で乗り切った。
 ある日、夫の居ない時間を持て余し一人馬で出かけたカレンは、すんでの所でライオンの餌になるのを一人の男に救われた。
 彼の名はデニス・ハットン(レッドフォード)。鉄道でケニヤに入った時に貨物車を止めて象牙を積み込んだ男だ。
 ブロルと結婚式を挙げた夜に、ホテルで象牙と興味深い本がたくさん並んだ部屋を見つけて入っていったが、偶然にもそこがデニスの部屋だった。彼は留守だったが友人だというコールと知り合い少し話をした。

 ライオンからカレンを救ったデニスはコール共々サファリの途中にプレゼントを携えて立ち寄ってくれたところだった。カレンは二人にディナーを御馳走することになった。デニスは歌と物語が好きな教養人でもあり、創作が得意なカレンの話を心から楽しんでくれた。
 翌朝、出発前のデニスはカレンに面白い物語のお礼にと美しいペンを手渡した。これで物語を書き残してくれと。

 そんな中、ついにヨーロッパでは第一次世界大戦が始まり、ここケニヤでもドイツ領地が隣接する事もあり余波が及び始めるのだが・・・。

*

 allcinemaの解説氏によると、<波乱万丈のストーリー、アフリカの雄大な景観、ストリープとブランダウアーの丁々発止の演技合戦と見どころは多いが、あまりにも上映時間が長すぎる。アカデミー作品・監督・脚本・撮影・作曲・美術・音響と主だった部門を独占した作品ではあるものの、時として冗漫な語り口は万人向けとは言い難い>と苦言で締められている。

 おおよそ同意できる内容でありますな。
 デンマークでのカレンとブロルの結婚に纏わるプロローグが語られた後、ケニヤに向かうカレンを乗せた列車とアフリカの広大な原野をバックにしたクレジットの終わり頃にカレンとデニスの最初の出会いが描かれるが、冒頭の作家となったカレンのモノローグでも『彼』と呼ばれているのはデニスだし、要するにストーリーの軸はカレンの人生なんだけど、映画で切り取られたドラマはカレンとデニスとの愛と別れが軸になっているんですね。だけど、終盤の締めの部分では、カレンと現地の人々との別れも印象的に描こうとされているのに、それまでのエピソードの積み重ねが中途半端であんまり盛り上がらないんです。
 給仕係だった少年、コック担当だった少年との別れもありきたりだったし、特に執事のファラとの別れには力が籠っているように明らかに見えるのにどうにも盛り上がらない。<時として冗漫な語り口>と見えたのはこの辺りが原因ではないでしょうかね。
 ただ、個人的には退屈するような語りではなかったし、2時間40分の尺は感じませんでした。

 カレンとデニスの別れ。
 男としてはデニスの気持ちも分かるが、将来の事を考えればカレンの気持ちも分かる。結局別れを決定したのはカレンだから、終盤の余韻の程度も男女で違うんじゃないかと、そんな事も考えてしまいましたね。
 女性が主人公の「追憶 (1973)」。このポラック作品も観たくなったなぁ。





(↓Twitter on 十瑠 より(一部修正)

昨日は午後からつかの間の休日状態。で、手持ちのDVDをガサゴソとして・・「愛と哀しみの果て」。久しぶり。メリルさんとレッドフォードの大人の恋愛ものというのは分かっていたけれど、詳細ストーリーは忘却の彼方。改めて堪能したけれど2時間越えってのも忘れてた。
 [12月 14日 以下同じ]

レッドフォード扮するデニス・ハットン、カッコ良過ぎ。結末も含めてネ。メリルさんが主人公なのに、映画の印象をかっさらっていったのは彼でした。いかにもオスカー好みの映像、ストーリー。好みかって聞かれたら、『そうでもない』って言っちゃうけど。

「愛と哀しみの果て」、1週間ぶりにもう一度観る。紹介記事を書くまでには内容が掴めてなくて、でも時間が取れなくて1週間も空いてしまった。それでもいい映画というのは新しい発見があって苦ではないね。
 [12月 21日 以下同じ]

メリル・ストリープって、「ディア・ハンター」とか「クレイマー、クレイマー」の頃は繊細な女性というイメージがあったのに、いつの間にか強靭な精神力をプラスした女性に変わっていったような。15回も主演オスカーにノミネートされるって・・・すごい!






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2 コメント

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弊記事へのコメント有難うございました。 (オカピー)
2020-04-02 13:58:38
><時として冗漫な語り口>と見えたのはこの辺りが原因ではないでしょうかね。

かく具体的に言われると解りやすい。少なくともデーヴィッド・リーンのように物凄く厳しくはないし、相対的には緩いですよね。

>個人的には退屈するような語りではなかったし、2時間40分の尺は感じませんでした。

Allcinema解説氏が長尺に感じ退屈したのは冗漫さ故でしょうが、十瑠さんはその冗漫特に散漫な部分に心当たりがあったので、全体として退屈を覚えなかったのでしょう。恐らく十瑠さんのほうが正確に掴んでいますね。

僕は、少年料理係との別れを見て、白人と原住民の超えられない壁みたいなものを感じ、少々寂しい気がしました。何となくですけれど。
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オカピーさん (十瑠)
2020-04-02 20:40:47
4年半ぶりに、ようやくこの記事にもコメントが頂けました。

>デーヴィッド・リーンのように物凄く厳しくはないし、相対的には緩いですよね。

そうそう。梅毒が出てきたリ、結構シビアな状況も描かれるんですが、全体的には主人公がしっかりしていて恋愛も描かれるんでゆったりと観てしまいますね。


>少年料理係との別れを見て、白人と原住民の超えられない壁みたいなものを感じ、少々寂しい気がしました。

それですよねぇ。
確か彼らと知り合う頃にはそれなりにエピソードもあったんですけど、中盤、終盤と(ロマンスにテーマが移って)あんまり見かけなくなって、結果僕にはいまいち物足りない感じがしたんですよねぇ。

それにしてもレッドフォードの役は格好良過ぎですよね
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