テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

海辺の家

2006-01-22 | ドラマ
(2001/アーウィン・ウィンクラー監督・共同製作/ケヴィン・クライン、ヘイデン・クリステンセン、クリスティン・スコット・トーマス、ジェナ・マローン、メアリー・スティーンバージェン、マイク・ワインバーグ/126分)


 『癌を宣告された父親と、反抗期の息子が過ごす最後の夏』
 レンタルショップで大分前に見つけて、いつかは観ようと思っていたら、先々月NHK-BS2で放送していたので録画したもの。

 アーウィン・ウィンクラーの名に聞き覚えがあったので調べたら、「いちご白書(1970)」の製作者でした。その他にも「汚れた七人(1968)」「ひとりぼっちの青春(1969)」「センチュリアン(1972)」「ロッキー(1976)」「ニッケルオデオン(1976)」「ニューヨーク・ニューヨーク(1977)」「レイジング・ブル(1980)」「ライトスタッフ(1983)」など、私にとっては有名どころの作品がずらり。これも今後鑑賞予定の、「シッピング・ニュース(2001)」(ラッセ・ハルストレム監督)のプロデューサーでもありました。気鋭のプロデューサーというイメージがします。監督としては、5作目のようです。
 1931年生まれというから、今年75歳。本作の時点でも70歳ということを考えると、やはり感覚は実年齢より若いようですな。

 主演は、「ワンダとダイヤと優しい奴ら(1988)」のとぼけた演技で、アカデミー助演男優賞に輝いたケヴィン・クライン。この作品では、死の恐怖におびえながらも一つの目的を達成しようとする父親を、シリアスに、しかし肩に力を入れずに演じてます。
 その息子を演じているのは、この後“スター・ウォーズ”でアナキン・スカイウォーカーになるヘイデン・クリステンセン。母親役は「イングリッシュ・ペイシェント(1996)」「モンタナの風に抱かれて(1998)」のクリスティン・スコット・トーマスでした。

 ジョージ・モンローは、建築デザイナーとして設計会社に勤めている。10年前に離婚して、今は親から引き継いだ家に独りで住んでいた。そこは、岸壁の上に立ち、美しい海が眺望できる海辺の家であった。

 10年前に別れた妻ロビンは、さほど遠くない所に住んでおり、今は再婚して二人の小さな男の子も授かっている。ジョージとの間に生まれたサムは16歳になるが、髪を染めて化粧をし、耳や唇にはピアス、部屋ではシンナーやドラッグに溺れる少年になっていた。継父だけでなく母親ともまともに口をきかず、お手上げ状態だった。

 ジョージは医者から癌を宣告されていたが、その事は誰にも話してない。そんなある日、会社で上司に呼ばれ、解雇を言い渡される。会社ではほとんどの設計士がCADを使っており、ジョージの、昔ながらの手書きによる図面と、発泡スチロールの模型造りでは時間もかかるし、顧客へのプレゼンも時代おくれなのだ。
 死を覚悟しているジョージは、会社に飾ってある自分の過去の模型をたたき壊して会社を後にするが、ビルを出たところで倒れてしまい、そのまま入院する。

 1週間後、退院したジョージはロビンに、この夏休みの間サムを自分に預けるように頼む。それは、“海辺の家”の建て替えを手伝わせ、完成の折りには息子に譲り、ひいては親子の絆をリストラ(再構築)しようと考えたからだった。
 休みの間には友人の別荘でラリって過ごそうと思っていたサムは、猛烈に反対するが、ジョージは力尽くで連れて行く。
 かつて住んでいた“海辺の家”に着いても無言を続けるサム。なんとか心を開かせようとするジョージは、岸壁から海へ飛び込んでみせるのだった・・・。(続きはビデオで)


 この後の流れは定石通りではありますが、アーウィン・ウィンクラーの語り口は淡々としていて澱みがないので2時間があっという間でした。ジョージの近隣とのトラブルや、サムの友人関係やガール・フレンドの話も絡んできて飽きさせません。
 但し、隣の奥さんの娘のボーイ・フレンドとの火遊びのシーンとか、不要な話もあり、もう少しテーマに沿って掘り下げたエピソードが出来ただろうに、とは思いましたな。再婚後の夫婦の問題とか、サムとジョージの思い出話とか・・・。それでも終盤ではホロっときてしまいました。
 ラストは、少しばかり想定外の“ちょっと良い話”になっています。

 美しいカメラは「さすらいのカウボーイ(1971)」のヴィルモス・ジグモンドでした。

・お薦め度【★★★=一度は見ましょう】 テアトル十瑠

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