(1998/カール・フランクリン監督/メリル・ストリープ、レニー・ゼルウィガー、ウィリアム・ハート、トム・エヴェレット・スコット/128分)
大学教授で作家の父と専業主婦の母、そして姉と弟という四人一家で、50歳を前にして母親が癌を発病して・・という話。主人公は娘のエレン(ゼルヴィガー)。
ピューリッツァ賞を受賞したこともあるジャーナリスト、アナ・クィンドレンの小説が原作で、多分、一人称で書かれた本でしょう。
映画の冒頭が、検事局でエレンが事情聴取されているシーンから始まるので、なにやら事件めいた雰囲気がありますが、原作もエレンが母親殺害の容疑で逮捕される所から始まるようです。
子供の頃から父親を尊敬しているエレンは、ジャーナリストを目指してNYの新聞社で記者をしているが、父ジョージ(ハート)の誕生日に帰省した折りに、母ケイト(ストリープ)が癌に罹っていることを知り、父親からは記者を休業して母親の家事を手伝うように言われる。継続中の担当記事もあり、NYを離れることは取材も困難になるのでエレンは嫌がったが、父親の強い言葉には逆らえなかった。
編集長には実家で書き続けることを約束してNYを離れる。ケイトは手術を終えて家に帰っていたが、エレンが戻ることを聞いてなかった。
ハーバードを出てキャリアウーマン志向のエレンには専業主婦の楽しみが理解できなかったが、ケイトは娘を自分が会長をしている婦人クラブのメンバーに勝手に入れたりして一緒の時間を作ろうとする。慣れない家事や、仕事の電話に口を挟むケイトにキレそうになるエレン。ジョージは経済的理由から自分が休業するわけにはいかないと言っていたが、学生の個別面談で夜遅く帰るのもエレンには気に入らなかった。家族の前では家長としての顔しか見せなかったが、浮気の匂いもする。幼い頃、大学のジョージの部屋を訪ねた時に、部屋の中から聞こえた男女の会話を思い出すエレンだった。
エレンからみれば、カルト団体かと思われるような婦人クラブで、友達を大事にする母。ハローウィーン、感謝祭、クリスマス。母はこの町を全身で愛した。家族と同じように。
エレンの為に二人だけの読書クラブを作るケイト。ケイトの嫌いな本は「自負と偏見」、「若草物語」。どちらも家庭的な長女が知的なヒロインの引き立て役になっているから、というのがケイトの意見だった。
ケイトの状態は日増しに悪くなり、年を越す頃には医者から回復の見込みのないことを聞かされる。髪は抜け落ち、風呂に入るのさえ独りではおぼつかなくなった。「もう生きるのはいや。お願い、楽に死なせて」
そんな母の言葉に、いっそ食べ物にモルヒネを混ぜてしまおうかと思うエレンだったのだが・・・。
時々挿入される取調のシーンは観客の興味を持続していく効果がありますが、それ以外の個別のシーンは、家族の話がじっくりと描かれているので、さて、この映画のテーマは何なんだろうと疑問が湧かないでもありません。
母親の病気という一大事に、娘が味わった家族の強さ、脆さ。そして、改めて知る母というもう一人の女性の人生。それらを赤裸々に語ったドラマ、ということでしょうか。
脚本を書いたのがカレン・クロナー。
家族だけで過ごす予定だった感謝祭に、急にお客を招くジョージ。ケイトも尊敬するという、その大作家の客人は、ジョージの小説を書評で褒めてくれたはずだが、既にタイトルさえ忘れていた。エエカッコシイの良いとこ取りばかりだった父親が、家族の前で恥をかいた夜。
女性作家は、空気を読めない男共を辛辣に描き切ります。
父親を中心に回っているごく普通の家庭で、夫を明るく支えてきた母親が若くして難病に冒される。一方的に看病を押しつける父。尊敬していた父親の中に男の弱さ、だらしなさを発見し反抗する娘。見終わってみれば、目新しいドラマでもなかったような・・・。
結局、父と娘は母を楽にさせることが出来なかったのですね。
観客としては何よりも、病気が進行していって、生き地獄のような母親の痛々しい姿をじっくり見せられるのが辛いです。
母が十年後に娘に贈る予定だったという言葉を記しておきましょう。
『幸せになるのは簡単。身の周りのものを愛すればいいの。そして、失ったものに追いすがらなければ心は穏やかだわ』
メリル・ストリープは、1998年のアカデミー賞で主演女優賞にノミネートされたそうです。
尚、原題の【ONE TRUE THING】は「かけがえのないもの(人)」という意味だそうで、ラストシーンでジョージがケイトをそのように呼んでいました。NHK-BS放送の鑑賞でした。
大学教授で作家の父と専業主婦の母、そして姉と弟という四人一家で、50歳を前にして母親が癌を発病して・・という話。主人公は娘のエレン(ゼルヴィガー)。
ピューリッツァ賞を受賞したこともあるジャーナリスト、アナ・クィンドレンの小説が原作で、多分、一人称で書かれた本でしょう。
映画の冒頭が、検事局でエレンが事情聴取されているシーンから始まるので、なにやら事件めいた雰囲気がありますが、原作もエレンが母親殺害の容疑で逮捕される所から始まるようです。
*
子供の頃から父親を尊敬しているエレンは、ジャーナリストを目指してNYの新聞社で記者をしているが、父ジョージ(ハート)の誕生日に帰省した折りに、母ケイト(ストリープ)が癌に罹っていることを知り、父親からは記者を休業して母親の家事を手伝うように言われる。継続中の担当記事もあり、NYを離れることは取材も困難になるのでエレンは嫌がったが、父親の強い言葉には逆らえなかった。
編集長には実家で書き続けることを約束してNYを離れる。ケイトは手術を終えて家に帰っていたが、エレンが戻ることを聞いてなかった。
ハーバードを出てキャリアウーマン志向のエレンには専業主婦の楽しみが理解できなかったが、ケイトは娘を自分が会長をしている婦人クラブのメンバーに勝手に入れたりして一緒の時間を作ろうとする。慣れない家事や、仕事の電話に口を挟むケイトにキレそうになるエレン。ジョージは経済的理由から自分が休業するわけにはいかないと言っていたが、学生の個別面談で夜遅く帰るのもエレンには気に入らなかった。家族の前では家長としての顔しか見せなかったが、浮気の匂いもする。幼い頃、大学のジョージの部屋を訪ねた時に、部屋の中から聞こえた男女の会話を思い出すエレンだった。
エレンからみれば、カルト団体かと思われるような婦人クラブで、友達を大事にする母。ハローウィーン、感謝祭、クリスマス。母はこの町を全身で愛した。家族と同じように。
エレンの為に二人だけの読書クラブを作るケイト。ケイトの嫌いな本は「自負と偏見」、「若草物語」。どちらも家庭的な長女が知的なヒロインの引き立て役になっているから、というのがケイトの意見だった。
ケイトの状態は日増しに悪くなり、年を越す頃には医者から回復の見込みのないことを聞かされる。髪は抜け落ち、風呂に入るのさえ独りではおぼつかなくなった。「もう生きるのはいや。お願い、楽に死なせて」
そんな母の言葉に、いっそ食べ物にモルヒネを混ぜてしまおうかと思うエレンだったのだが・・・。
*
時々挿入される取調のシーンは観客の興味を持続していく効果がありますが、それ以外の個別のシーンは、家族の話がじっくりと描かれているので、さて、この映画のテーマは何なんだろうと疑問が湧かないでもありません。
母親の病気という一大事に、娘が味わった家族の強さ、脆さ。そして、改めて知る母というもう一人の女性の人生。それらを赤裸々に語ったドラマ、ということでしょうか。
脚本を書いたのがカレン・クロナー。
家族だけで過ごす予定だった感謝祭に、急にお客を招くジョージ。ケイトも尊敬するという、その大作家の客人は、ジョージの小説を書評で褒めてくれたはずだが、既にタイトルさえ忘れていた。エエカッコシイの良いとこ取りばかりだった父親が、家族の前で恥をかいた夜。
女性作家は、空気を読めない男共を辛辣に描き切ります。
父親を中心に回っているごく普通の家庭で、夫を明るく支えてきた母親が若くして難病に冒される。一方的に看病を押しつける父。尊敬していた父親の中に男の弱さ、だらしなさを発見し反抗する娘。見終わってみれば、目新しいドラマでもなかったような・・・。
結局、父と娘は母を楽にさせることが出来なかったのですね。
観客としては何よりも、病気が進行していって、生き地獄のような母親の痛々しい姿をじっくり見せられるのが辛いです。
母が十年後に娘に贈る予定だったという言葉を記しておきましょう。
『幸せになるのは簡単。身の周りのものを愛すればいいの。そして、失ったものに追いすがらなければ心は穏やかだわ』
メリル・ストリープは、1998年のアカデミー賞で主演女優賞にノミネートされたそうです。
尚、原題の【ONE TRUE THING】は「かけがえのないもの(人)」という意味だそうで、ラストシーンでジョージがケイトをそのように呼んでいました。NHK-BS放送の鑑賞でした。
・お薦め度【★★=悪くはないけどネ】
私、おすすめしちゃったかな~
>女性作家は、空気を読めない男共を辛辣に描き切ります。
メリルはもちろん、レニーもよかったし
いざとなると、
女子供に預ける、逃げる、弱い、インテリ男性を
W・ハート、好演していたと私は思いましたが。
エレンに共感しながら観ておりましたが、最後までそれほどスッキリとはいきませんでした。
>お気に召さない映画を、おすすめしちゃったかな~
長いのと、逃れようのない痛みもちょっと・・・
私も弱い男でございます
女性には色々と考えさせられる話だと思います。映画よりも小説向けの題材のような気もしますね。
姐さんほどでもないかもしれませんが、7年ほど前に「平凡なようだが、奥深い作品」と佳作扱いしました。お二人の中間です。
十瑠さんはやはりもう少し夢のある作品がお好きなのかな。
人の好みを把握するのは実に難しい。^^
>奥深い作品
題材は確かに。
娘から見た家族の変化も良~く描かれているとは思います。ラストシーンの父と娘の会話も色々考えてしまいます。二人の将来についてもね。
でもやはり、必見!とお薦めする程のインパクトがなく、★二つにとどめました。病気の痛々しい描写で★一つ分マイナスになったかも知れません。
>結局、父と娘は母を楽にさせることが出来なかったのですね。
母は娘に、初めて自分の考えを語れたと思うんです。それをずっと母は娘を見ていて伝えたかったこと。それを死ぬ前に娘に伝えられたことで、彼女は幸せだったと思うんです。親が子供に何を残せるかっていえば、こんな風に思っているのよって、それをきちんと伝えられたかどうかだと思うんです。
このあたりが、女性と男性の視点の違いなんでしょうね。私はずっと同じ母親としてメリルの視線でずっと物語と追っかけて、十瑠さんはウィリアム・ハートの立場になってしまって…この母と娘の中に父親は疎外されてますよね。そう思うとこれは男性からみると居心地の悪い作品かもしれないなって、十瑠さんの感想読んで思いました。初めて来て、ずけずけ長々と喋ってしまいました。私は、分析とか理論構築ってのができないタイプなので、思ったまんま、なるだけ思ったまんま、きちんと言葉にできなかったら……で、無理に言葉にしていくのはなるだけやめて、っていう風に映画感想をあげるように、最近は心がけています(笑)I。だから十瑠さんには物足りないんじゃないかなって、ちらっと思ったりもしてますけど…。私は十瑠さんのコメント読ませていただくと、簡潔明瞭で楽しいです。またお邪魔させていただきます。過去の記事もずっと追っかけてまたコメントいれさせてくださいね。
リンクさせてくださいね。
それから、福岡なんですね。大学の友人が八女出身でした。たしか高校は明善高校(こんな字だったかな)
すみません。話が飛んで。P様とかJiji姉のノリを読んでいると、私も金魚のウンチみたいくっついて、ずっとお馴染みみたいな気分になって…。
いえいえ。私は主人公であるエレンに寄り添って観ていきました。なので、最後で父を許したのか? 又、母親に対して後悔はなかったのか? そんな疑問が残ってスッキリしませんでした。
スッキリしない幕切れというのも、それはそれでアリなんですけど、自分が分かってないのにお薦めはできめぇと★二つになりました。^^
リンク宜しくお願いします。
旧い作品が多いですが、過去記事にもコメントいただければ嬉しいです♪