テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

HANA-BI

2010-11-29 | ドラマ
(1997/北野武:監督・脚本・共同編集/ビートたけし、岸本加世子、大杉漣、寺島進、白竜、薬師寺保栄、逸見太郎、渡辺哲、松田井子/118分)


(↓Twitter on 十瑠 から

タケシの「HANA-BI」を途中まで観る。何年かぶりで、台詞の少ない映画だった事、武が元刑事のヤクザを演じる事くらいしか覚えてなかったが、改めて観て、「ゲゲゲ」のお父さんが出ていたのを思いだした。音楽は久石ジョーだったんだなぁ。
 [Nov 27th webで](以下同じ)

武は監督主演ばかりでなく脚本も編集も担当していた。まさに全編武ワールドなわけだ。場面の切替の手法に、前のシーンで或る人物を追ってたカメラが追うのを止めて人物はフレームアウト、カメラには別の何かが写っているというのがあるが、“何か”が他の人物だったりすると今度はその人が気になる。

「HANA-BI」にはそういうショットの切り替えが何度かあった。あれはあんまりイイ編集じゃなかったな。後半の奥さんとの旅行のシーンで、笑いを狙ったシーンがあるけど、全体の暴力に満ちたムードの中ではすべった感がミチミチだ。

大杉漣演じる元刑事が描いたとされている絵は武の作か?あの絵の挿入ショットにゴダールを思い出したな。ちょっとしつこいのと、意味が理解できてないのでなんとも評価のしようがないけど。

沈黙のシーンが多い。外国には脚本とは別に台詞だけを担当する作家もいるみたいだけど、これもそんな人に協力を願えばよかったのに。カッコつけ過ぎ。暴力シーンも多過ぎ。暴力シーンでしか人間を表現できないのかって思ってしまうくらい多かったな。ラストシーンを忘れてるんだけど明日観れるかいな?

つまみ枝豆の登場シーンも唐突だったなぁ。そしていきなりの暴力を振るわれて。あれが象徴的だけど、ストーリーの流れがスムースじゃないんだな。前半は時間軸の操作、複数のシークエンスの並列描写が割と上手くいっていたのに、後半で少しずつ流れの悪い所が出てくる。

武ってコメディアンなのにコメディって作ってないのかね。「菊次郎の夏」がなんとなくソレっぽいが、allcinemaではドラマになっている。今は休眠中の北国の優一郎さんは「あの夏、いちばん静かな海。」と「3-4X10月」がお薦めらしい。チャップリンみたいなモノは作れないんだろうなぁ。

「HANA-BI」の残り、終盤の30分弱を観る。ラスト・ショットの少女はいらんでしょう。海のロング・ショットに2発の銃声で良かったんじゃない。タケちゃんは何を描きたかったのでしょうか?消えゆく「HANA-BI」のような滅びの美学ですか。似合わねぇなぁ^^
 [Nov 29th webで](以下同じ)

人間が描けてないな。主人公なんか、黙ってサングラスかけてる時と、奥さんに語りかけてる時が別人みたいだもの。“意外なリアル感”もないしな。

イイ映画に省略はつきものだけど、イイ映画は描くのが難しいから省略してるんじゃないし、省略することで語る以上に雄弁だったりするんだ。「HANA-BI」には数多くの省略があるが、雄弁なものはそれ程無かったな。

*

 ラストシーンで海辺で凧を揚げている少女は、武の娘、松田井子だった。だからラストショットにしたの?

 つぶやきで殆ど言っちゃったから、あんまし付け加えること無いな。
 見所、というか聴き所は久石譲の音楽かな。かなり品を出すのに加勢してます。

 つぶやきで説明が要りそうな文章があったので、追記おば。

<場面の切替の手法に、前のシーンで或る人物を追ってたカメラが追うのを止めて人物はフレームアウト、カメラには別の何かが写っているというのがあるが、“何か”が他の人物だったりすると今度はその人が気になる。>

 例としては、車のスクラップ工場のシーンで、工場主の渡辺哲が立ち去った後に茶髪の少女が残ってるというショットがある。あのラストカットは少女じゃなくて、車の部品の方がイイだろうなぁ。あの後の西(たけし)の計画を暗示するような“何か”の方がね。少女で終わられると、アレッ、この子が何?ってな気分になるもの。


 ベネチア国際映画祭でグランプリ(金獅子賞)に輝いた北野武の第7作。そですか。

 1998年の日本アカデミー賞でも作品賞他十数部門でノミネート、音楽賞を受賞したそうです。コレは納得。


・お薦め度【★★=所々、悪くはないけどネ】 テアトル十瑠

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2 コメント

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ラスト以外は (宵乃)
2010-11-30 13:12:46
そんなに悪い印象はなかったけれど、すぐ前に「TAKESHI'S」(悪夢系)を観たせいかもしれない・・・?
でも、暴力は北野作品だから仕方ないという思いがあったし、主人公の二面性はもうぎりぎりの崖っぷちという感じがあってわたしは納得できました。
絵は彼の作風が好きじゃないとくどいですよね。

>茶髪の少女が残ってるというショットがある。

このシーンはわたしも意図がわかりませんでした。何なのかわからないまま進むので気持悪い感じがします。

ラストの翼が折れた天使の絵(だったかな?)が切なかったです。
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お茶の間で (十瑠)
2010-11-30 14:03:29
見慣れているというのも影響していると思いますが、普段とかけ離れている役柄だと違和感がどうしても出てきますよね。奥さんとの最後の旅行で時折みせるお茶目なタケシで、ふと現実に戻らされる感じ。
暗いヤクザ風の演技で押し通せば良かったのにと思いました。
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