テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

「ラインの仮橋」 ~1

2012-07-26 | ドラマ
(1960/アンドレ・カイヤット監督・共同脚本/シャルル・アズナヴール、ジョルジュ・リヴィエール、ニコール・クールセル、コルドラ・トラントフ/125分)


 少し前にツイッターに呟きましたが、数年前にNHK-BS放送を録画、DVDに落としていたフランス映画を観ました。アンドレ・カイヤット監督作。
 「ラムの大通り」さんからは、<アンドレ・カイヤット。ブログ9年、ツイッター3年目で、初めてネットで口にしている人を見た。懐かしい>とリツイートされました。
 社会派ですな。社会派というと、アメリカ映画のシドニー・ルメットとかスタンリー・クレイマーとかがまず思い浮かぶんですけど、フランスだとまずこの人ですね。「太陽がいっぱい」でサスペンス派に転向する前のルネ・クレマンはもっと硬派な社会派ですけど。

 さて、「ラインの仮橋」。
 ラインは勿論ライン川。フランスとドイツの国境を流れる、様々な歌にも出てくる大きな川です。
 時代は第二次世界大戦。ナチス・ドイツがフランスにも侵攻してきて、召集されたパン屋の職人と自ら志願した新聞記者が主人公です。

 第一次大戦で孤児となり、パン屋の主人に引き取られてその一人娘と結婚したロジェに扮したのは、シャンソン歌手のシャルル・アズナブール。
 映画のオープニングのタイトルロールのバックが、このパン屋の半地下のパン工房の鉄格子が付けられた小窓を外側から写している映像で、入り婿は舅と一緒にこの地下の工房で朝から晩まで働いているんですね。時々天井、つまり店の床が開いて、「あのパンはまだなの?アレは出来上がった?」などと店主の姑が声を掛けてきます。なんだか、男達が母親にこき使われているようにもみえるのですが、観終わってみるとオープニングの鉄格子がまるで収容所かなにかのように見えるほど象徴的だったのが分かります。語られてはいないけど、舅も入り婿なのかもしれませんな。結局このパン屋さんの1階の店舗は出てきません。ロジェと愛妻との部屋は出てきますけど。
 ロジェが出征する前、若夫婦がベッドにいる時に母親が顔を出して、「こんなご時世だから、早まったことをしないでね」と言います。つまり、妊娠はしない方がイイと言ってる訳です。ロジェに召集令状が来て、勿論帰ってこられない事になるかもしれないからですが、この辺も後半の展開への伏線になっていますね。

 さて、もう一人の主人公の敏腕新聞記者が、ジョルジュ・リヴィエール扮するジャン。
 政権と同じくナチスに甘い社説を掲げる新聞社主からは次期編集長にと声を掛けられますが、ジャンはナチスを相手の戦争に志願して行くからと、女性記者のフロランス(クールセル)からみたら美味しい話を断ります。

 出征前のエピソードは短くて、次のシーンは二人が大勢の兵隊と共にドイツ軍の捕虜となってライン川に架かる橋を渡っているところでした。ロジェの軍服の一部が破れて脚に引っかかるのをジャンが取ってあげたのが知り合いになるきっかけでした。戦争が背景の話なので命の危険を感じるシーンは当然あるのですが、この作品にはいわゆる戦闘シーンはこの後もなく、そういう意味では珍しい映画であります。
 捕虜となった彼等は同じく捕虜となった他のフランス人と共に、ドイツ側の農家の一部屋に閉じ込められ、次の日から、その村の農家にそれぞれが労働者となって働きに行かされます。国際法的には違法な行為なんでしょうが、ありえる話ですね。

(続く)

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