(1973/マーク・ライデル監督・製作/ジェームズ・カーン、マーシャ・メイソン、イーライ・ウォラック、カーク・キャロウェイ、バート・ヤング、ダブニー・コールマン/118分)
「終着駅」を借りようとツタヤに行ったら無くて、同じ「さ行」のコレを見つけて借りてきた。マーク・ライデルの「シンデレラ・リバティー」。
ライデル監督作品では、以前「黄昏 (1981年)」を紹介したことがある。賞レースではその「黄昏」くらいしか監督賞候補には挙がらなかったが、「女狐 (1967)」とか「華麗なる週末 (1969)」、「11人のカウボーイ (1971)」、「ローズ (1979)」などは双葉さんの“ぼくの採点表”でも☆☆☆★★(70点)以上の佳作だったし、監督賞以外の部門のオスカー受賞は結構出している監督なのだ。
「シンデレラ・リバティー」の双葉さんの評点は☆☆☆★★★(75点)。タイトルはずっと覚えていたが、観るのは多分今回が初めてじゃないかと思う。
アメリカ海軍の船オーランド号が基地のある港町に久しぶりに帰って来た。埠頭には船員の家族が大勢プラカードを手ににこやかに出迎えていたが、ひとしきり歓迎の騒ぎが収まった頃にジョン・バッグス・Jrは船を降りてきた。彼には出迎えてくれる家族も恋人もいなかったからだ。
お尻のおできが痛いジョンが基地の病院に行くと、おできはすぐに治るが毛巣病の疑いがあるので検査をしなければいけないと言われた。数日後には出航の予定だったが、検査の結果が出るのは1週間後。オーランド号を独り淋しく見送ったジョンは、その後の勤務の予定が出るまでは基地の宿舎に留まることになった。
事務局の女性には外出は自由だが夜中の12時までには宿舎に帰るのが規則だと言われた。海軍ではこのことをこう呼ぶらしい。“シンデレラ・リバティ”【原題:CINDERELLA LIBERTY】。
陸に上がった水兵が行く所は一つ。酒と女が手に入る場所だ。
「クラブ・ネプチューン」には大勢の水兵が酔っぱらった女性と酒を酌み交わしながらダンスに興じていた。ジョンもその中の一人だったが、ふと店の奥に目をやるとパンティがもろ見えの格好で女が玉突き場でキューを操っていた。周りにはやはり水兵が大勢いて、女はその中の一人と賭けをしているようだった。かなりの腕前で、ジョンの目の前であっという間に数十ドルは稼いでいた。
女の名前はマギー。
早速マギーに挑戦状を差し出すジョン。
最初は分が悪いジョンだったが、三度目の勝負では大きく50ドルを賭けた。
「そんなに持ち合わせはないわ」
「足らない分は別のものでもかまわないさ」
マギー以上のハスラーぶりを発揮してジョンは彼女のアパートへと入って行った。
マギーのアパートには11歳の男の子がいた。マギーは熟睡していると言っていたが、ジョンが帰る時も子供は暗がりの中で起きているようだった。ジョンは彼に挨拶しようとしたが、その子はいきなりナイフを出してこう言った。
「近寄るな、白人」
男の子は明らかに黒人の血が入った混血児だった・・・。
水兵と酒場の女のラブロマンスと思っていたら、マーシャ・メイスン扮するヒロインが人間としても些か問題のある女性で、そんな彼女に振り回される主人公もなんだかなぁと1回目の鑑賞ではお勧め度は低かったんだが、2度目の鑑賞で、これはロマンス映画というよりはお人好しでおせっかいな男が母子家庭の親子を幸せにしようと奮闘する話だと気付いてお勧め度は上がった。男と女の関係よりも、男と息子の関係の方に若干ウェイトがあるんだな。
ジョン・バッグス・Jrに扮したのは、「ゴッドファーザー (1972)」で助演賞候補になったジェームズ・カーン。
アクションやサスペンス関連への出演が多いけれど、そんな作品の中でも男気のある人情を感じさせる役どころが多い印象だ。
ジョンがマギーとその息子ダグの行く末を案じておせっかいをしたのには理由があった。ジョン自身も幸せな生い立ちではなかったからだ。大好きな父親はバプティスト教会の管理人をしていたが、ジョンが12歳の時に病気で亡くなった。16歳の時に母親は若い男と再婚したが、その男は頭が悪く乱暴者だった。17歳で高校を卒業したジョンは以来海軍一筋で過ごしてきたのだった。
映画の原作者であり脚本も書いたダリル・ポニックサンは、ハル・アシュビー監督ジャック・ニコルソン主演の「さらば冬のかもめ (1973)」の原作者でもある。
「さらば冬のかもめ」に関するallcinemaでのコメント欄に、「ランディー・クエイドが後半のN.Yの創価学会の座談会に飛び入り参加してずっとラストまで事あるごと所かまわずにNam-MyhoーRengeーyoの題目を唱えまくたっり・・」とあるが、「シンデレラ・リバティ」にも教会の話が出てくるし、ジョンの行動にも自己犠牲の精神が見え隠れしているので、そういう(宗教の影響がみられる)作家なのかなぁと思った。
そして多分、元水兵に違いないとも思った。
マギーには、この演技でゴールデン・グローブ賞の女優賞(ドラマ)を獲得したマーシャ・メイスン。アカデミー賞でも主演女優賞候補になったが、「ウィークエンド・ラヴ」のグレンダ・ジャクソンに獲られた。
既に30歳を超えていたが、これが本格的な映画デビューで、ヌードも辞さない熱演が批評家筋に大好評。同じ年にブロードウェイのオーディションにも受かり、その舞台の打ち合わせにやってきた人気劇作家ニール・サイモンと出逢って彼の奥さんになったそうだ。
その後にオスカー候補になった「グッバイガール (1977)」、「第2章 (1979)」、「泣かないで (1981)」は全てニール・サイモンの脚本だった。
因みに、「第2章 (1979)」はジェームズ・カーンとの再共演で、こちらはラブ・ロマンスと言って良い映画のようです。大昔に観たのでストーリーは忘れちゃったな。
カメラがヴィルモス・ジグモンド。
少しザラッとした感覚の画面が多いニューシネマではお馴染みの人で、逆光を生かしたリアルなショットもお得意だった。ハンガリー出身だそうで、今作でもジョンとダグがバスケットをしたりボクシングをしたりする俄か親子のシーンが逆光の中で描写されておりました。
も少し書きたいことがあるけれど、今回はココまで。トレーラーは見つからなかったけど、ジョン・ウィリアムズのジャージーなテーマ曲がカッコよかったのでどうぞ(↓)。
「終着駅」を借りようとツタヤに行ったら無くて、同じ「さ行」のコレを見つけて借りてきた。マーク・ライデルの「シンデレラ・リバティー」。
ライデル監督作品では、以前「黄昏 (1981年)」を紹介したことがある。賞レースではその「黄昏」くらいしか監督賞候補には挙がらなかったが、「女狐 (1967)」とか「華麗なる週末 (1969)」、「11人のカウボーイ (1971)」、「ローズ (1979)」などは双葉さんの“ぼくの採点表”でも☆☆☆★★(70点)以上の佳作だったし、監督賞以外の部門のオスカー受賞は結構出している監督なのだ。
「シンデレラ・リバティー」の双葉さんの評点は☆☆☆★★★(75点)。タイトルはずっと覚えていたが、観るのは多分今回が初めてじゃないかと思う。
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/b9/b2d70139ee2c63fcd8acb370c6c2fdeb.jpg)
お尻のおできが痛いジョンが基地の病院に行くと、おできはすぐに治るが毛巣病の疑いがあるので検査をしなければいけないと言われた。数日後には出航の予定だったが、検査の結果が出るのは1週間後。オーランド号を独り淋しく見送ったジョンは、その後の勤務の予定が出るまでは基地の宿舎に留まることになった。
事務局の女性には外出は自由だが夜中の12時までには宿舎に帰るのが規則だと言われた。海軍ではこのことをこう呼ぶらしい。“シンデレラ・リバティ”【原題:CINDERELLA LIBERTY】。
陸に上がった水兵が行く所は一つ。酒と女が手に入る場所だ。
「クラブ・ネプチューン」には大勢の水兵が酔っぱらった女性と酒を酌み交わしながらダンスに興じていた。ジョンもその中の一人だったが、ふと店の奥に目をやるとパンティがもろ見えの格好で女が玉突き場でキューを操っていた。周りにはやはり水兵が大勢いて、女はその中の一人と賭けをしているようだった。かなりの腕前で、ジョンの目の前であっという間に数十ドルは稼いでいた。
女の名前はマギー。
早速マギーに挑戦状を差し出すジョン。
最初は分が悪いジョンだったが、三度目の勝負では大きく50ドルを賭けた。
「そんなに持ち合わせはないわ」
「足らない分は別のものでもかまわないさ」
マギー以上のハスラーぶりを発揮してジョンは彼女のアパートへと入って行った。
マギーのアパートには11歳の男の子がいた。マギーは熟睡していると言っていたが、ジョンが帰る時も子供は暗がりの中で起きているようだった。ジョンは彼に挨拶しようとしたが、その子はいきなりナイフを出してこう言った。
「近寄るな、白人」
男の子は明らかに黒人の血が入った混血児だった・・・。
*
水兵と酒場の女のラブロマンスと思っていたら、マーシャ・メイスン扮するヒロインが人間としても些か問題のある女性で、そんな彼女に振り回される主人公もなんだかなぁと1回目の鑑賞ではお勧め度は低かったんだが、2度目の鑑賞で、これはロマンス映画というよりはお人好しでおせっかいな男が母子家庭の親子を幸せにしようと奮闘する話だと気付いてお勧め度は上がった。男と女の関係よりも、男と息子の関係の方に若干ウェイトがあるんだな。
ジョン・バッグス・Jrに扮したのは、「ゴッドファーザー (1972)」で助演賞候補になったジェームズ・カーン。
アクションやサスペンス関連への出演が多いけれど、そんな作品の中でも男気のある人情を感じさせる役どころが多い印象だ。
ジョンがマギーとその息子ダグの行く末を案じておせっかいをしたのには理由があった。ジョン自身も幸せな生い立ちではなかったからだ。大好きな父親はバプティスト教会の管理人をしていたが、ジョンが12歳の時に病気で亡くなった。16歳の時に母親は若い男と再婚したが、その男は頭が悪く乱暴者だった。17歳で高校を卒業したジョンは以来海軍一筋で過ごしてきたのだった。
映画の原作者であり脚本も書いたダリル・ポニックサンは、ハル・アシュビー監督ジャック・ニコルソン主演の「さらば冬のかもめ (1973)」の原作者でもある。
「さらば冬のかもめ」に関するallcinemaでのコメント欄に、「ランディー・クエイドが後半のN.Yの創価学会の座談会に飛び入り参加してずっとラストまで事あるごと所かまわずにNam-MyhoーRengeーyoの題目を唱えまくたっり・・」とあるが、「シンデレラ・リバティ」にも教会の話が出てくるし、ジョンの行動にも自己犠牲の精神が見え隠れしているので、そういう(宗教の影響がみられる)作家なのかなぁと思った。
そして多分、元水兵に違いないとも思った。
マギーには、この演技でゴールデン・グローブ賞の女優賞(ドラマ)を獲得したマーシャ・メイスン。アカデミー賞でも主演女優賞候補になったが、「ウィークエンド・ラヴ」のグレンダ・ジャクソンに獲られた。
既に30歳を超えていたが、これが本格的な映画デビューで、ヌードも辞さない熱演が批評家筋に大好評。同じ年にブロードウェイのオーディションにも受かり、その舞台の打ち合わせにやってきた人気劇作家ニール・サイモンと出逢って彼の奥さんになったそうだ。
その後にオスカー候補になった「グッバイガール (1977)」、「第2章 (1979)」、「泣かないで (1981)」は全てニール・サイモンの脚本だった。
因みに、「第2章 (1979)」はジェームズ・カーンとの再共演で、こちらはラブ・ロマンスと言って良い映画のようです。大昔に観たのでストーリーは忘れちゃったな。
カメラがヴィルモス・ジグモンド。
少しザラッとした感覚の画面が多いニューシネマではお馴染みの人で、逆光を生かしたリアルなショットもお得意だった。ハンガリー出身だそうで、今作でもジョンとダグがバスケットをしたりボクシングをしたりする俄か親子のシーンが逆光の中で描写されておりました。
も少し書きたいことがあるけれど、今回はココまで。トレーラーは見つからなかったけど、ジョン・ウィリアムズのジャージーなテーマ曲がカッコよかったのでどうぞ(↓)。
・お薦め度【★★★=一見の価値あり】 ![テアトル十瑠](http://8seasons.life.coocan.jp/img/TJ-1.jpg)
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