Ruby の会

シニアライフ~能楽・ボランティア・旅行・食べ歩き・演劇などを綴っています

瑞龍寺「燭光能」 ’13~「来殿」

2013-06-09 | 能楽

 熱海での同窓会から帰った翌日、5/20(月)は利長忌。今年、瑞龍寺では利長公400年大遠忌法要が行われ、午前中は裏千家前家元の千玄室鵬雲斎大宗匠による献茶式があったようだ。午後は、例年通り「燭光能」が奉納された。

 今年の演目は、「来殿」(トップは謡本)。この曲は、宝生流だけのもので、多流派では、「雷電」となる。と言うのは、宝生流では「雷電」の後半を書き直し改作したのである。
 「雷電」の後半は、無実の罪で左遷され、無念のうちに配所で亡くなった菅原道真が、雷神となって荒れ狂うが、道真の師である比叡山の座主の法力に屈服し、帝から官を贈られ、感謝のうちに終わる。
 だが、
宝生流は前田家が保護者であり、前田家は、菅原道真の子孫を称していたため、荒れ狂う雷神=道真を、貴人=天満大神と変えたと言うわけだ。曲名も「来殿」と変更した。しかし、2年前から復曲し、家元自らがシテを務められた「雷電」がNHKテレビで放映された。↓は、昨秋テレビで見た能「雷電」の私のブログです。

http://blog.goo.ne.jp/67kiyoh/e/b822ce8551762d45b6fa13cc74bba3a8

 改めて、あらすじを書くと: 

 〈あらすじ〉 比叡山の僧、法性坊は菅原道真の師であった。天下のため護摩供養をしていると道真の霊があらわれ「自分は冤罪で左遷され死にいたったので、雷となって内裏に行き恨みをはらそうと思う」と述べる。そして「朝廷は悪霊退散のために法性坊を招くだろうが、もし呼ばれても参り給うな」と願う。法性坊は「比叡山は天皇の祈願所であるため、三度勅使が来たら断れない」と答える。それを聞いた道真の霊は、本尊の前に供えてあったざくろを噛み砕き、寺の戸に吐きかけると扉は燃えあがった。法性坊が法力で消し止めると、道真の霊は走り去る。(ここまでが前場)
 後場は内裏で雷となった道真の霊が暴れまわり、法性坊の法力と対決する。最後は朝廷から「天神」の神号をおくられ、礼を述べて黒雲に乗り立ち去る。

 ↓は、後シテの雷神(道真の霊)。(ネットから) 燭光能の天神と比べてください。

 さて、瑞龍寺燭光能「来殿」は、中入り後の後場のみ(写真はすべてようこ姫さんよりお借りしました)。

 ↓、まず法性坊僧正(ワキ)が登場。            

 ↓、出羽の囃子で、道真の霊・天満天神(後シテ)が登場。♪その時虚空に管弦聞こえ…♪ でシテは御代を寿ぎ、早舞を舞います。  

 「中将」の面をつけた道真の霊は、お正月の天神様そのもの。「早舞」を優雅に舞います。       

 謡の本ではほんの2ページ半ほど。あっと言う間に終わり呆気ないほど。薄暗い法堂での、仏さまの前での奉納能としては、天満天神の舞はふさわしいかもしれない。が、能楽堂では雷神が師の法性坊と対決し屈する後場の方が見ごたえがあるだろう。

 今年は全席が椅子席、法堂の回りの戸はすべて取り払われ外光が漏れ入るので、例年より広々として明るく、よく見えた。            

 シテ:大坪喜美雄   ワキ:苗加登久治   後見:山崎健
 大皷:野尻哲雄  小鼓:住駒幸英  太鼓:徳田宗久  笛:瀬賀尚義  
 地謡:金森秀祥 他   の皆さんでした。
     


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10 コメント

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Unknown (なは)
2013-06-10 15:57:32
清姫様
解りやすくてしかも丁寧な紹介ありがとう。
昨年のも見ました。思い出しました。お家元の和英さんが本来の話しに・・・と努力なさった事も聞いたのを思い出しました。
瑞龍寺のも雰囲気はよかったので、その感じがよく現れています。
ワキの苗加さんの表情もシテの面もつくづく眺めています。
私の席からはこんなにはっきり見えなかったので嬉しく見ています。
時間でも制約があったのでしょうか?
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Unknown (清姫)
2013-06-10 18:43:34
なはさん
今までも燭光能は奉納が目的なので、短い半能(1部分)でした。中入り後の後場が多いのです。前場からすると装束も面も取り替えなければならない。
このお能は中入り後が短い。ほとんど舞だけですから。「早舞」なのにゆっくり伸ばしながら演じたとの裏話のようです。
宗久さんの太鼓が素晴らしく、やっぱり本当は「早舞」なのです。いつか雷神の「雷電」も実際に見たいものです。
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Unknown ()
2013-06-10 23:03:58
今年は明るくて写真撮りやすかったです。
来年からもこれくらいで・・・と思います。
前に、背の高い人が、市制よく座っておられて・・・
隙間に凝られるのを待って撮りました。
苗加先生、はじめに出て、座ったきり。
気の毒でした。
今回も調べられたのですね。
来殿、変わった本をよくもっておられましたね。
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Unknown (清姫)
2013-06-10 23:56:17
姫ちゃん
写真をありがとうございました。
これは調べたと言うより、昨年のブログに書いたけど、ANさんのおかげでテレビで見たのですよ。茶々姫教室へANさんが大騒ぎで入って来たのを覚えていませんか。
あれが、問題の復曲した「雷電」でした。しばらく録画したままでしたがさすがにもう消しました。
DVDに録っておけばよかった…。本は米島さんにもらった物です。
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Unknown (なは)
2013-06-11 15:17:46
清姫様
ネットからという「雷神」は凄い面ときらびやかな衣装ですね。燭光能は短かったのですが、こうして色々聞かせてもらったり写真も見せてもらったりは楽しい事です。
いろいろ見た後で本を読まれるのもいいでしょうね。
お家元の和英さんはお若いけど確りしておられると、私のような者が言うのは可笑しいけど、そう思います。
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Unknown (風子)
2013-06-11 21:08:40
清姫さんのおかげで、能が少しだけ身近に感じられるようになりました。
雷神と天神は表情から、衣装から、全く違いますね。
動から静への変化が面白いですね。



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Unknown (清姫)
2013-06-11 22:16:57
なはさん
燭光能、毎年5/20なので来年も灯が空いておれば行きましょう。短くて気楽なのがまたいいのです。蝋燭の灯りというのもいいですし、ね。

お正月に天神様を飾るのは石川県と富山県だけと言う話ですよね。加賀宝生では、天神というのも頷けます。
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Unknown (清姫)
2013-06-11 22:22:54
風子さん
「来殿」はあまり演じられない能だそうです。利長忌400回法要と言うので、特別だったのでしょう。
道真が恨みを晴らそうと、雷神となって暴れまわり、師の僧正に鎮められると言う方が自然のように思いませんか。多流派では、大改悪曲と言われているようですよ。
毎年、5/20なので、来年は忘れないで風子さんの予定をお聞きしますね。
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Unknown (なは)
2013-06-12 16:27:15
清姫様
来年を楽しみにします。
TAさんのお姉さんの旦那さんの事、教えてもらいましてありがとう。
あの日は連絡がつきませんでした。多分千葉で儀式を執り行われていると思います。
夕べ手紙を書いて、今朝出しました。
旦那さんは高岡の方で長男ですから母上は早くから千葉へ呼ばれていました。だから、彼女はお義母さんの看病も全部していました。そのお義母さんの式も千葉でした。納骨はこちらだったような・・・・。
今日は、あちらは「雨」かもしれません。
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Unknown (清姫)
2013-06-12 23:00:14
なはさん
すぐにお手紙を書かれるのが、立派ですね。こんな時は、手紙が一番でしょうね。
私も親しい友人のご主人が亡くなられたのを、昨暮れ喪中の挨拶で知り、未だそれきりで気になっています。もうこれだけ経ったのだから、そのうち電話をします。
千葉の友人が昨日から雨だとメールに書いていましたよ。
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