Ruby の会

シニアライフ~能楽・ボランティア・旅行・食べ歩き・演劇などを綴っています

狂言「腰祈り」&能「熊坂」

2012-06-28 | 能楽

 6/24(日)、冨山能楽堂で、「富山県宝生会・春季能楽大会」が開かれた。能「半蔀」の後、狂言「腰祈り」、仕舞「高野物狂」、能「熊坂」と続いた。

 「腰祈り」は、初めて見る狂言。シテ(祖父:野村祐丞)はオンジの面をつけて登場する(トップ写真)。

 《あらすじ》 羽黒山の山伏(炭哲男)が葛城山での修行を終え、故郷の祖父を訪ねる。太郎冠者(山田譲二)に案内を請うと、腰の曲がった祖父が出て来る。山伏は行力で曲がった腰を治そうと懸命に祈りはじめる。行力は見事に効き、祖父の腰はみるみるうちにまっすぐになるが、祖父は少し曲がっている方が楽だと言う。そして、曲げたり伸ばしたり・・・。そのうち、祖父は怒り出す。
 過ぎたるは及ばざるが如し、せっかくの親切も行き過ぎては何もならない。善意でしたことが逆に働いてしまうという皮肉。
 杖をついて歩くさまがリアルで可笑しい。時々まっすぐに身体を起こすがすぐ曲がる様子、祈りと共に腰がびくっびくっと伸びる様子も可笑しかった。

 最後は、能「熊坂」。これは盗賊(義族とも言われる)、熊坂長範の話。

 都の僧(ワキ・殿田謙吉)が、東国修行のため美濃国赤坂の宿に着くと、一人の僧(前シテ・金森秀祥)に声をかけられる。その僧は、今日はさる人の命日なので弔ってほしいと言い、庵に招き入れる。              

 中には仏像もなく、大長刀など物々しい兵具が立ててある。やがて夜も更け僧は庵の奥に入って行く。すると、庵はなくなり都の僧は松陰の草むらで夜を明かしていたことに気づく。(中入り)
 所の者(間(アイ):鍋島憲)に尋ねると「牛若丸に討たれた盗賊熊坂長範の霊であろう」と言うので、夜もすがら弔っていると、長範の霊(後シテ:金森秀祥)がありし日の姿で現れる。
          

 そして、かつて金売り吉次一行を襲おうとして、その中にいた牛若丸に討ち取られた時の様子を見せ、僧に回向を頼み松陰に姿を消す。

 物語は短い簡単な話だが、長い刀を駆使した牛若丸との激しい決闘が見どころ。しかし、真の見どころは世紀の大泥棒「熊坂」でさえも後世の救済を願うところではないかと言う人もいる。
 私は、動きのある能が好きなので、宙
を飛び回る牛若丸がまるでそこにいるかのように、大長刀をあやつり戦う金森先生の動きに見惚れた。最後に、長範が長刀を捨て、素手で立ち向かう時の手の動きなど、さすがである。斬りつけられついに落命する様子を語り終えた霊が、夜が白々と明け始める頃回向を頼み姿を消すさまは哀れでもある。

 世阿弥の作。勇ましくも哀れなこの曲の、この日のお囃子は:
 大皷:飯島六之佐 小鼓:住駒俊介 太鼓:徳田宗久 笛:片岡憲太郎
 地謡:佐野由於 他

 (写真はすべてネットから)


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6 コメント

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Unknown ()
2012-06-29 00:31:32
先生も短くて、いいと言っておられました。
大坪先生と金森先生の出番が反対のように見えますが、出し物でそうなるのだそうです。
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Unknown (清姫)
2012-06-29 07:20:26
姫ちゃん
もっとドロドロした複雑な話かと勝手に思っていました。(習っていないし)
出し物の格があるのでしょうか。
おかげで念願の金森先生のシテを見られて大満足でした。ホントに手がきれいでしたよ。
「おわら」のトンビのように、ピッピッと動くのです…。
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Unknown (なは)
2012-06-29 12:37:03
姫様
面白い狂言ですね!お話が「身につまされます」年寄ると色々不都合が出てきますので・・。狂言でお面を付けるのは珍しいのでしょう?
熊坂は、上手な紹介にうっとりとしています。
義賊、熊坂長範と幼い頃に聞いていてのですが、お能となると風情がありますね!金森先生だからでしようか?「能」のもつ品の良さからかも・・・。見たような気分になりました。

さっき姫さんのところに書きましたが、7月15日、12時開演、民謡発表会、恋風のシンセサイザーと胡弓の演奏もあります。もし、都合がよくて行かれるならプログラムを貰っときます。(招待状になるのです)
明日、聞かせてね。
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Unknown (清姫)
2012-06-29 18:50:51
なはさん
狂言の面は、前に何かで1度見たかもしれません。
珍しいですね。腰が曲がる、昔も今も同じ、と可笑しかったです。山伏の行力で治るなんて、修行の成果ですかね。
本当に、カッコよすぎの熊坂長範でした。でも、面はいかついです。
15日は、「市民歩こう会」で大島町鳥取を歩きます。雨なら参加しないので、行けますが…。
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Unknown (風子)
2012-06-29 19:56:26
清姫さん
腰が伸びてかえってバランスが取りにくくなったと言うのは分る気がします。
上手に人の気持ちを捉えてわらわせてくれますね。
お能は清姫さんの解説で上っ面だけでも分ったような気がします。
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Unknown (清姫)
2012-06-29 20:55:23
風子さん
ダイアモンドヘッドに登った時、腰が曲がった男性が一緒でした。曲げっぱなしはいけない、と言われるから、と時々まっすぐに反りかえるほどに伸ばされるのですがすぐ屈んでしまわれる。
でも、登山は私より元気でしたよ。その方を思い出しました。
お能の場面、想像してくださりありがとう。
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