復活の過程

フィギュアスケート全日本選手権が終わった。

浅田真央選手の試練はまだ続いている。
でも彼女はきっと試練を乗り越えるだろう。

バンクーバー五輪後、ジャンプを一から修正しながら試合に
出ていた数年間も、当然成績は振るわないから、不調・不調と
散々言われ続けていた。

今も一年間休養したブランクと、身体的故障からの回復過程での
結果なので、彼女が目指している自身の理想・完成形に近づく
には、まだ時間が必要だと思う。

年齢的な身体能力の低下ばかり騒ぎ立てられているが、一方では
スケーティングが進化し続けているのが判る。

往年のK.ビットにも劣らない妖艶さまで出てきた。

美しい選手の美しいスケートをできるだけ永く観続けたい。



真央ちゃんとは何の関係もないけれど、ふと思い出したこと。

夫が二度目の手術を終えての回復過程。
夫は見た目痩せ衰え覇気がなくしんどい様子で仕事に復帰した。

たまたま久々に夫と会ったある取引先の人は、夫をひと目見て
絶句！　見てはいけないものを見てしまったという表情を隠さず、
何も聞かず、そそくさと出て行ってしまった。

よほど驚いたのかも知れない。恐らく末期なのではと思ったの
かも知れない。

でもわたしもびっくりした。
わたしにしてみれば、入院中の最悪な容態を看てきているので、
会社に出て机の前にいる夫の姿は、よくぞここまで回復して
くれたという思いにさせるだけで、全く悲観する要素は
なかった。

担当医も、元気になるには一日も早く仕事をするのが一番だと
言ったし、わたしは仕事に戻れた夫が誇らしかったのに。

一過程を見ただけの判断とはそんなものである。

数年経って、夫は多くの人からすっかり昔に戻った、いや昔より
元気になったんじゃないか？と言われるようになった。

一度損なった感覚などを回復させる過程は、当人しか実感できない
ものだし、回復した喜びも当人しか味わい知りえない。


真央ちゃんは、怪我などで自在に跳べなかったジャンプが
少しずつ元に戻ってきている過程を、試合で挑戦しながら
自ら確認して行きたいだけなのだと思う。

どんなに絶不調でも修正半ばでも、試合に出る度に好成績を
期待される試練を彼女は乗り越えなければならない宿命なのは、
彼女が総てを兼ね備えた不世出のスケーターだからだろう。