つぶやき、或は三文小説のやうな。

自由律俳句になりそうな、ならなそうな何かを綴ってみる。物置のような実験室。

満員電車の中

2015-10-21 19:22:34 | 文もどき
満員電車の中。
やけにくっきりと映る誰かの手を、前方に立つおじさんの眼鏡越しに見る。
つり革につかまろうと懸命に手を伸ばしているのか、それとも、あらゆる事態を想定した上でのホールドアップなのか。あるいは、もう何かをつかんでいる手なのか。
おじさんの眼鏡のレンズには、つり革は映らない。斜めの角度に遮られているのか、わたしの眼鏡のフレームが見せまいとしているのか。
ドアが開き、我々はみな、散り散りになる。