☆忘れられないキャンディーの世界
”Charlie and the Chocolate Factory”は、孫燕姿が大好きな物語である。小さい頃、両親が寝る前に彼女に読み聞かせていた物語のなかでも、特に印象深いのがこの本だという。
「物語の世界は小さな天国のようで、ミルクチョコレートの池、チョコレートの滝、それかキャンディーでできた船が出てくるの。」
彼女はこの本から刺激を受け、キャンディー屋を開きたいと思っていたという。両親も教師であり、孫燕姿も教師になりたいと思った時期があったという。何を教えるの?彼女は言った。
「たぶん英語だと思うわ。」
孫燕姿は小さい頃から歌うことが好きだったが、歌手になりたいと思ったことはない。
「シンガポールでは、歌手は一般的にまっとうな職業とはみなされないから。しかも、そのとき私は洋楽ばかり聞いてたから、地元の歌手の真似をしたりすることは無かったわ。だけど、もし西洋人歌手を目標にしてたら、遠い夢物語だったわよね。」
大学に通っていたころ、孫燕姿は李偉菘の音楽学校に行き始めたが、それは好奇心の一環でしかなく、ちょうど李偉菘の学校と華納が仕事をし、新人を発掘するという話から孫燕姿が選ばれ歌手としての一歩を歩みだした。
☆台湾とシンガポール
孫燕姿はほとんどの時間を台湾ですごすため、台湾は彼女の第二の故郷となった。シンガポールは、孫燕姿が生まれた国だが、台湾は彼女をスターにした場所であり、孫燕姿は2つの地区に対して異なる感情があるという。
「台湾には愛着があるわ。だって、私の初めての仕事はあそこから始まったし、最初から私とずっと一緒に頑張ってくれていたスタッフやファンのみんなは、今でも一緒にいてくれているし。台湾のエンターティメント業界はとても発達していて、新聞やテレビ、ラジオのようなメディアも多いから、だいぶ鍛えられたと思うわ。特に二枚のアルバムを出した時は死にそうだったわ、だって新人だったから。」
シンガポールに対しては
「何年か過ごしてみて、シンガポールは穏やかであってほしいところだし、自分が自分らしくいられるところだと思う。色々なところに行ったけど、休みを1年とってから気づいたわ。やっぱりシンガポールの気候が一番好きだ、って。台湾の冬は寒すぎる。」
☆成功の方程式なんてない
台湾の音楽市場に話が及ぶと、孫燕姿は新人がデビューするにはとてもいい場所だと思っていると話した。レコード会社や事務所などの企画も強く、売り方についても多くの経験を積んでいるからだという。だが、歌手の全てが台湾で成功するかどうかについては
「成功の方程式なんて存在しないわ。一番重要なのは良い音楽をつくること。作品以外だったら、”縁”かしら。それについてはうまくいえないけど、例えばある人があなたと出会ってすぐに親切にしてくれたとして、その人のことをあまり知らないのにちょっと親切すぎと思ったり、会話が少ないと冷たい、と感じたり、そんな感じかしら。」
孫燕姿は、1年の休暇を経て“Stefanie”を発売、少し前の報道によると、年越しの10日前には飲料、キャンディー、クッキーの3つのCMも撮影し、休暇は彼女の人気に少しも影響を与えていないことがよく分かる。
☆彼女の魅力は…
自分がなぜここまで売れたのか、彼女はどう思っているのだろう?
「この数年の間、私に代わる人はいなかったと思うわ。もし私にとって代わるなら、私よりもっと素晴らしくなくちゃ。しかも、私だって一つの「場所」をしっかり捉えたってこと。私の性格は多面的だと思うけど、私の人生観は幸せでいようとする、ということなのね。私は話すのが上手じゃないけど、でも私のこの「場所」では自由に自分の意見や情熱を発揮できるの。」
休暇に入る前、孫燕姿は多くの賞を受賞していた。彼女は
「歌も良かったし、プロモーションも良かったんじゃない?」
彼女は自分の魅力がどこにあると思っているのだろうか?すると、笑いながら
「分からないわ。」
彼女のそばに座っていた、台湾華納の陳正剛氏が言った。
「彼女の歌声は特別です。人の心のなかにすっと入ってくるというか。特に高温部分が素晴らしいんです、これが彼女の美しさです。」
☆人生は歌だけではなく
もし、ある日売れなくなったら?孫燕姿は
「どうしようもないじゃない…どうするっていうか…仕事でしょ。アルバムを作っているとき、それが売れるかどうかなんて考えないわ。だけど、これは私が気にしてないって言ってるわけじゃなくて、ただ歌うことだけが私の人生じゃないってこと。」
陳正剛氏は言う。
「彼女はとても勝気ですから。一年前に全てを止めて休みに入りましたし。彼女はああやってやりたいことは何でもやりたいタイプなんですよ、だけどいつでもやらないと決めたらやらなくなるでしょうね。」
なるほど、陳正剛氏はすでに心の準備はできているわけで、ある日突然孫燕姿が引退を宣言しても彼も意外には思わないのだろう。孫燕姿はその話を聞くと笑いながらうなずいていた。
「これだけたくさんの人が応援してくれているし、とても幸せに感じるわ。だけどある時、私は歌うことが好きでいても、誰も聞いてくれなくなったら、プレッシャーを感じることはないかもしれない。好きでやっているだけだから。」
孫燕姿のあと、まだ誰もシンガポールの歌手で彼女のように台湾でこれだけ成功している歌手はいない。原因を孫燕姿に聞いてみると、彼女は笑って
「この問題は難しいわ…分からない。」
陳正剛氏は、孫燕姿の成功は、彼女がそのときの台湾社会にあっていたからではないか、と話した。
☆父母姉妹、それぞれの役割
親への愛、恋愛、友情と仕事、孫燕姿はその感情にどういう順番をつけるだろうか。
「親への愛が一番。恋愛は二番。友情と仕事は並んで3番。」
孫燕姿と家族は非常に仲がよく、父親は愚痴をこぼす相手であり、彼女の”法律顧問”でもある。父親は聡明で、彼女が何の愚痴をこぼしているのかよく聞き、また彼女の財産管理や契約などを見守る。母親は、”消費者”であり、消費者の立場から彼女の音楽について意見を述べたり、インタビューでの受け答えに注文をつける。姉は第三者的立場から意見を述べ励まし、妹はケンカの対象で、二人はよくケンカをするが、それはお互いにストレス発散になっているのだという。
From;
聯合早報