あらすじ
ストックホルム郊外で母親と2人で暮らす12歳の少年オスカー
は、毎日学校で同級生からの苛めに遭っていた。大人たちは
その事実に気付かず、助けてくれる友達もない。
いつも隠し持っているナイフで自宅の木を切りつけることで、
辛い思いを1人紛らわせていた。そんなオスカーの前にある日、
黒髪の少女が現れる。
息も凍りつくような寒さの中、薄手のシャツ一枚で現れた少女
は、オスカーの寂しい胸の内を見透かしたような言葉を残す。
その頃、町では凄惨な殺人事件が起きていた。
何者かが喉を切り裂き、血を抜き取られて逆さ吊りにされた
若者の死体が森で発見されたのだ。
再びオスカーの前に現れる少女。その表情はどことなく悲しげ
で、鼻を突く異臭を漂わせていた。
エリと名乗ったその少女は自分の誕生日を知らず、年齢も
“だいたい12歳”とはっきりしない答え。
不思議で秘密めいたエリだったが、オスカーは彼女と接して
いるうちに、胸の高鳴りを覚えていく。やがて、2人の間で
夜毎、モールス信号による寝室の壁越しの会話が始まる。
エリとの出会いを通じて、強くなりたいと願うようになった
オスカーは苛めっ子に逆襲、大怪我を負わせる。
【出演】
カーレ・ヘーデブラント
リーナ・レアンデション
ペール・ラグナル
ヘンリック・ダール
カーリン・ベリィクイスト
ペーテル・カールベリ
感想 ※ネタバレ注意
孤独な少年が1人の少女と出会い、恋に落ちるが、彼女の正体
はヴァンパイアだった…。
ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの小説『モールス』を繊細
なタッチで映画化。
トライベッカ国際映画祭を始め、世界中で60以上もの賞を受賞した。
いじめにあう12歳の少年・オスカーはある夜、不思議な少女・エリ
と出会う。
それからオスカーはエリと心を通わせていくのだが、それと同じく
町では血を抜き取られるという殺人事件が起きる。
ヴァンパイアの少女と少年の話なのだが、突然町にやってきたエリ
と保護者らしき中年の男性が、この事件に関わっていて、エリが
ヴァンパイアであることは誰の目から見ても明白である。
そんな中、夜は雪で閉ざされた世界に、氷のような雰囲気を持つ
映画で、2人の少年少女が心を通わせていくのを繊細に描いている。
いじめられっ子のオスカーだが、一見、白い肌とキレイな瞳に輝く
ブロンドの髪をした少年のような少女のような中世的なオスカー。
内面には、幼い凶暴性も持つこの子の存在がとても映画の雰囲気に
あっている。
そして、エリの保護者、劇中に説明はないが恐らくエリが吸血鬼に
なる前の恋人かそれに近い存在だったのだろう彼のエリへの眼差し
や言動がそれを思わせ、自分の年齢とエリとの若々しさのギャップ
やエリの為に、行ってきた数々の殺人も限界に近かったことから
失敗し、エリを危険に導いたことから、自らの血を差し出す姿は
満たされているような表情で、何だか切ない。
映画の結末を見て、もしかすると、オスカーの未来も似たような
未来なのかもしれない。
この2人は恋人とはちょっと違う、友達とも違う、淡い恋のようで
あって、最後には繊細な感情を抱けずにはいられないような映画
でした。
原作小説「モールス」は、ハリウッドでもリメイクされ、あの
「キック・アス」のクロエ・グレース・モレッツが出演している
のだけれども、この映画ほどの少年少女の内なる凶暴性と繊細さ
を表現出来ているのか疑問だけど、そっちも観てみたいかな。
【評価】
(4点/5点満点中)
ぼくのエリ 200歳の少女 HP