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グラントリノ

2009-11-30 | 洋画(あ・か)
 グラントリノ
 



  あらすじ 
朝鮮戦争の帰還兵ウォルト・コワルスキーはフォード社を退職し
妻も亡くなりマンネリ化した生活を送っている。
彼の妻はウォルトに懺悔することを望んでいたが、頑固な彼は
牧師の勧めも断る。そんな時、近所のアジア系移民のギャング
がウォルトの隣に住むおとなしい少年タオにウォルトの所有する
1972年製グラン・トリノを盗ませようとする。タオに銃を向ける
ウォルトだが、この出会いがこの二人のこれからの人生を変え
ていく…。

【出演】
クリント・イーストウッド
ビー・バン
アーニー・ハー
クリストファー・カーリー
コリー・ハードリクト
ブライアン・ヘーリー




  感想  ※ネタバレ注意

『チェンジリング』からほとんど間を空けずに公開されるイースト
ウッド監督作。『ミリオンダラー・ベイビー』以来、4年ぶりに主演
も兼ねた。朝鮮戦争従軍経験を持つ気難しい頑固親父をイースト
ウッドが演じ、近所に引っ越してきたアジア系移民一家との交流
を通して、人種差別の現実に直面する。

この映画で演じるクリント・イーストウッドは、映画のタイトルと
なっている1972年製のグラントリノという車そのもののような人だ。

頑固で偏屈なじいさん、その為に2人の息子や孫に疎まれる
生活を送るのだが、隣りに住むアジア系移民者をギャングから
助けたことにより、彼らと交流するきっかけになり親しくなっていく。
この映画では、その隣りに住む心優しい少年タオとその姉スー
たちとの友情を描いている。

演技を観ていても、クリント・イーストウッドもやはり歳だなぁ~
とその動き・演技ひとつひとつにも感じざるを得なかったけど、
クリント・イーストウッド監督という人は、次から次へとたくさん
の良い映画を生み出してきた、そんな彼の今まで築き上げた
入魂の一作となっていた。

キレイに磨き上げられたグラントリノを眺めながらビールを飲む
まさに車が大好きな野郎の気持ちは世代に関係なくあるん
ですね(笑)。
愛車のグラントリノも、ほとんどいじらず、そのフォルムを愛し
まるで彼の生き様のように。
こんなじいさんというか、こんな男気があるというか…そんな
生き様を貫いている人は今、どれ程いるのだろうか?
次世代にも是非、観てもらいたい映画です。

朝鮮戦争以来、人の生死を多く見てきた彼が最後に出した
決断は、涙なしでは観られない。
最初から最後まで愛すべき偏屈じじいを見せるウォルトに
ラストのタオがグラントリノに乗り、海辺を颯爽と走る姿が
胸に迫る良い映画でした。




【評価】
 (4.5点/5点満点中)

 グラントリノ HP

ララピポ

2009-11-29 | 邦画(ら・わ)
 


  あらすじ 
渋谷のセンター街で女の子に声をかけては風俗店にあっせん
する栗野健治。階下に住むモテないフリーライターの杉山は
太った女・小百合と知り合い久々に女を抱くが、小百合は一部
始終を録画してアダルトショップに売っていた。
一方、デパートガールのトモコは栗野の口車に乗せられてしまい
AVに出演させられることになり…。

【出演】
成宮寛貴
村上知子
中村ゆり
吉村崇
皆川猿時




  感想  ※ネタバレ注意

人気作家、奥田英朗の同名小説を映画化した、渋谷を舞台に
負け犬たちの日常を描く群像的なエロチック・コメディー。



風俗専門のスカウトマンから、対人恐怖症のフリーターや
デブ専AV女優、風俗の世界へと堕ちていくOL、カラオケ
ボックスでバイトするSFオタク青年、淫乱主婦。
出てくる個性あるダメ人間たち。
そんな彼らのダメっぷりをポップに描き出した群像劇。

どの登場人物も本当にどうしようもないダメっぷりです、
SFオタク青年と対人恐怖症のフリーターなんて本当に
笑ったけど、風俗の世界へと堕ちていくOLと淫乱主婦
は正直笑えなかった。
それはその2人は特に、希望も救いもなかったからだ。
淫乱主婦を演じた濱田マリは、介護疲れからその人生を
壊していく経緯はよくわかるのだが、コミカルにポップ
に写していなければ、卒倒しそうな内容だ。

飛び交う言葉や内容は、エロいんだけど映像にはいやらしさ
は映っていない、そもそも負け組とか勝ち組とか言う人が
いるけど、ここに登場している人物たちは、そんな事とは
程遠い人間たちだ。
彼らなりの負け犬になるまでの理由があり、そして生き方
があり、希望があるとかそんな風に描いてくれれば、もっと
面白かったかもしれません。
結局どこにも着地せず、彼らは彼らの生き方を歩んでいく
ふわふわとした彼らの人生と同じような映画だった。


【評価】
 (3.5点/5点満点中)

 ララピポ HP

死にぞこないの青

2009-11-28 | 邦画(さ・た)
 死にぞこないの青


  あらすじ 
気弱な小学6年生・マサオ(須賀健太)は、生き物係を取り決め
たことが原因で、新任教師の羽田(城田優)に嫌われてしまう。
それ以来、羽田はマサオを攻撃し続けクラスメイトたちもマサオ
をいじめるように。そんな中、マサオの前に傷だらけで、片目
片耳がつぶれた全身真っ青の不気味な少女・アオ(谷村美月)
が現れる。

【出演】
須賀健太
谷村美月
城田優
入山法子
瓜生美咲




  感想  ※ネタバレ注意

ホラー界の俊英・乙一が書き下ろした小説を、『ZOO』でも乙一
の原作に挑んだ安達正軌が大胆なアプローチで映画化。



ホラーかと思って観てみたら、全然違ったのが正直な感想です。

ある日突然、いじめの標的にされた少年の前に現れた片目
片耳がつぶれた全身真っ青の不気味な少女・アオが少年に
いじめた原因の先生に、復讐するように迫るというもの。

先生役には、城田優が見事にハマッてるなって思った。
冷酷な美形の先生ってあそこまで怖さが増すものなんですね。
全身真っ青のデスラー総統みたいなアオよりも、こっちの
方が怖かった。

ただ、須賀健太くんがいじめられ役にしては健康すぎる気が
してならない…ラストのアオとの感動(?)的な場面では彼は
活きるのだけど、この映画の本質ってそこではなくて、いじめ
という社会の問題提示も含まれていると思うので、いじめの
部分やいじめられるきっかけとか、もう少し内容を重くした
方が原作にあってるような気もします。

そういう状況ではじめて、アオという存在がホラー的な要素
として活きてくる気がするのですが、谷村美月のアオが、
あんまり怖くないのも少し問題かも(苦笑)。
特殊メイクとか頑張ってるんだけど、その顔立ちや演技が
恐怖感よりも、友情に似た親近感のようなものに変わって
しまっている…まぁ、最後のシーンを思えばそれが逆に良い
意味で良い話で終わっているので、原作は原作。映画は映画
として観れば全然問題もないとは思う。


【評価】
 (3.8点/5点満点中)

ドロップ

2009-11-27 | 邦画(さ・た)
 ドロップ


  あらすじ 
不良に憧れて私立中学から公立に転校したヒロシ。赤い髪に
ボンタン姿で登校すると早速、不良グループに呼び出される。
浮かれ気分でついて行くと、リーダー、達也に河川敷でボコボコ
にされる。しかし、その根性を気に入られ、ケンカの後、共に
ラーメン屋に。初日早々不良グループの仲間入りを果たす。
ヒロシの生活は活気付き、達也らとつるんで他校の生徒と
ケンカの毎日。姉のユカとその恋人のヒデは、そんなヒロシを
心配していた。

【出演】
成宮寛貴
水嶋ヒロ
本仮屋ユイカ
上地雄輔
中越典子
波岡一喜
若月徹
綾部祐二




  感想  ※ネタバレ注意

人気お笑い芸人、品川庄司の品川祐の小説「ドロップ」が
コミック化に続いて映画化。
原作者自ら品川ヒロシ名義で脚本・監督を手がけている。



平凡な中学生が嫌で、不良になりたい。不良と言えば私立
じゃなくて公立…意味がわからない理由で公立中学に転校
する成宮寛貴演じるヒロシ。
そこで水嶋ヒロが演じる達也と出会い、ケンカに明け暮れ
恋もしてと青春映画なのである。

さすが、お笑い芸人だけあって笑わせ方を心得てるのか
ところどころコントを観させられているのか!?っていう
ような笑えるシーンが、たくさんあってかなり笑えた。

「クローズZERO」みたいな真面目にケンカをするわけ
じゃない、でも気の合う仲間がいて、ケンカして、昨日
ケンカした相手が、今日は仲間になって、そして恋をする
青春不良ものの王道パターンではあるけど、中々良かった。

ヒロシと達也だけでなく、他のメンバーや人物も個性的で
面白かったし、上地雄輔がヒロシの兄貴分的な役で、良い
役をしている。
そしてある事故がきっかけで、ヒロシが大人に成長して
いくところもまた、映画の世界ではよくありそうな展開
だが、それでは終わらない面白さが観られるのは、個性的
な役柄を若い俳優さんたちがうまく演技出来ていたから
好感が持てたんだと思う。




【評価】
 (4点/5点満点中)

 ドロップ HP

おと・な・り

2009-11-21 | 邦画(あ・か)
 



  あらすじ 
人気モデルの撮影に忙しい日々を送りながらも、風景写真を
撮りたいという思いを抱えるカメラマンの聡。
一方、フラワーデザイナーを目指して花屋のバイトをしながら、
フランス留学を控えた七緒。同じアパートの隣同士に暮らす、
30歳、恋人なしの二人は、顔を合わせたことは一度もない。
口ずさむ「風をあつめて」のメロディー、フランス語、コーヒー豆
を挽く音――。いつしか互いの生活音に癒しを感じるようになる。

【出演】
岡田准一、麻生久美子
谷村美月、岡田義徳、池内博之
市川実日子、とよた真帆、平田満
森本レオ




  感想  ※ネタバレ注意

都会のアパートの隣同士に暮らし、一度も顔を合わせたことは
ない人生の岐路に立つ30歳の男女が、それぞれの生活音を
耳にすることによって次第に心を通わせていく様をさわやかに
描くラブストーリー。

監督の熊澤尚人さんは『ニライカナイからの手紙』『虹の女神
Rainbow Song』
の監督でもあるんだと知ったのはこの映画を観た
後なんですが…今回の映画もボクは結構気に入っています。

親友がスーパーモデルということから、その縁でプロのカメラマン
となり、名前が売れた岡田准一演じる聡は、本当に撮りたいのは
人じゃなく、風景。
親友や所属する会社の中で、揺れながら自分の道を模索している。
そして、フラワーデザイナーを目指して花屋のバイトをしながら、
フランス留学を控えた七緒演じる麻生久美子。
2人はちゃんと顔を合わせたことはないが、同じアパートの隣り
の部屋同士…そう、おとなりさんなのである。

この舞台となるアパートは古いレトロな作りで、映画の雰囲気
をキレイに映し出している。
またカメラマンとフラワーデザイナーという主人公たちの職種
からもわかるように、映画の中でもオシャレな映像が目立つ。

そんな2人の部屋の壁は、隣りの音がよく聞こえる程薄いのだ。
普通なら隣りの声や物音が全部聞こえてしまうとなると…迷惑
な話だが、この映画はそこをうまく2人の生活の1部分として
取り入れ、お互いにとってなくてはならないものに変わっていく
ように描いている。

この歳の年齢にボク自身近づいているんだけど、2人の目標に
向かって生きている姿や、恋人のいない寂しい生活感など、
非常にうまく表現されていたと思う。2人の演技も良かった。

そんな聡の部屋に、スーパーモデルであり聡の親友のシンゴの
彼女と名乗る谷村美月演じる茜が乗り込んでくるんだけど…
谷村美月の演技が、良かった。
この映画の雰囲気の中では、少し目立つ役柄だけど悪くない。

隣り同士なのに、顔もちゃんと合わせていないのはどうかと
思うけど、様々なキーワードや出来事から2人の強い結びつき
が物語の後半から判明するんだけど、そこからの2人がそれから
どうなるのか…と少しハラハラした(苦笑)。

でもあのエンドロールで流れる2人の会話が、とても良い!
なんだかこっちまで、ニヤっとさせられる。
それもまた2人が生活する”音”の1つなんだなぁ~って
思いました。


【評価】
 (4点/5点満点中)

 おと・な・り HP

重力ピエロ

2009-11-19 | 邦画(さ・た)
 



  あらすじ 
遺伝子を研究する大学院生・泉水と芸術的な才能を持つ2つ
年下の弟・春は、仲の良い普通の兄弟だ。優しい父と三人で、
平穏に、そして陽気に暮らしている。だが、この家族には春の
出生に関わる哀しい“過去”があった。その原因をもたらした
“ある男”が街に戻ってきた。そして、時を同じくして不審な
連続放火事件が発生する。その現場には謎めいたグラフィック
アートが残されていた…。

【出演】
加瀬亮
岡田将生
小日向文世
吉高由里子
岡田義徳
鈴木京香
渡部篤郎




  感想  ※ネタバレ注意

伊坂幸太郎原作の、70万部を超えるベストセラー「重力ピエロ」
を映画化。
物語の核となる兄弟役を演じるのは『それでもボクはやってない』
の加瀬亮が兄を演じ、『天然コケッコー』の岡田将生が弟を演じる。
伊坂氏の原作ものとしては『アヒルと鴨のコインロッカー』と同様
原作の舞台でもある仙台でロケを敢行、生活に根ざした仙台の
街中が描かれているのが興味深い。
数々の謎が伏線を張りながら、絡み合ったすべての謎が解けた
とき過去から現在へとつながる家族の真実が明らかにされる。



”愛”は重力を超える‥。

あらすじを読んでから、このタイトルを観たとき誰も想像出来ない
親子の、兄弟の絆がそこにはある。
この映画は単純なミステリーじゃない。伊坂幸太郎作品に良く
みられるラストに向けて、すべての事柄が一致していくのは
観るものを離さない。
遺伝子記号も春の尊敬するガンジー等偉人たちも、その謎
に関わっているので、セリフからすべてが見逃せない。


「わたしたち、そのうち宙に浮かぶかもね。」

完璧な両親だと正直思った。そんな家族の中で弟は、不安要素
の一人、自分の持つ出生の秘密や消してしまいたい過去すべて
燃やしてしまいたかった。
そして春は、兄に気づいてほしかったんだと思う。
血の繋がりはなくっても、家族であることに変わりはない。
その証拠に兄の泉水は、弟が苦しんでいる原因を消してしまおうと
同じことを実行しようとする。

愛は重力を超える…本来この映画は、重たいもので終わるはずが
この作られた世界観の中で、それを感じさせない観終わった後
に本当に浮いたような…そんな気持ちにさせてくれる気がします。


弟の卒業アルバムの写真の中に、弟のいるところ必ず写ってる
春のストーカー・夏子さんを演じた吉高由里子が面白かった!
写真の写り方が異常なんですが、最高ですw




【評価】
 (4.5点/5点満点中)

 重力ピエロ HP

ラッシュライフ

2009-11-16 | 邦画(ら・わ)
 ラッシュライフ


  あらすじ 
己の美学を貫く、孤高の泥棒「黒澤」。その日も、いつものよう
に部屋の中を物色していると、突然戻ってきた家の住人と
思しき男とバッタリ鉢合わせしてしまう…。道を見失い、神に
救いを求める青年「河原崎」。その日も、いつものように教団
が経営する施設で動物の世話をしていると、突然教団の幹部
から車の運転を依頼される。到着した先のマンションには、
憧れの教祖・高橋の想像もしなかった姿が…。不倫相手と、
邪な計画を進めるカウンセラー「京子」。
その日、ついにお互いの伴侶の殺害を決意し行動に出る
ものの、車で走行中に見も知らぬ男を轢き殺してしまい…。
仕事も家族も失い、街をさ迷うサラリーマン「豊田」。
その日も、いつもと同じように駅前をふらついているところ、
コインロッカーの鍵を咥える犬と遭遇。ロッカーの中から拳銃
を発見したことを機に、自分をリストラした男への復讐を決意
する…。4つの人生が交錯する時、生涯でたった一度きりの
“特別な1日”が訪れる。

【出演】
堺雅人
寺島しのぶ
柄本佑
板尾創路




  感想  ※ネタバレ注意

『フィッシュストーリー』『重力ピエロ』など、著作が次々と映画
化される人気作家・伊坂幸太郎の原作を、 東京芸術大学
映像研究科の面々が完全映画化。
孤高の泥棒、宗教にハマる青年、不倫相手と邪悪な計画を
進めるカウンセラー、リストラされたサラリーマンを中心に、
交錯する人生模様を描く。



正直観てびっくり‥原作を最近、読んだばかりなので期待して
レンタルして、本当にびっくりした。
どっかの学園祭か何かで撮った映画ですか‥?と言いたくなる
くらいの映像に関しても、脚本に関してもつっこみたくなる程
の駄作でした。

よく調べてみると、映画製作を志し、近年次々と話題作を生み
出して注目を集めている東京藝術大学映像研究科が“現代の
人気作家”が描いた小説を映像化すると、果たしてどのような
作品が生まれるのだろうか?この想いからスタートした企画に
現代のベストセラー作家・伊坂幸太郎が賛同し、原作小説
「ラッシュライフ」の使用を許諾したという。

東京芸大映像研究科所属の4人の監督が、脚本作りや演出面で
“4人の監督から成る1本の長編映画”という形で撮影したとか。
はっきり言います。4人の現代の若い監督がどんな映画を描く
か何か知りませんが‥この監督たちは、ちゃんと原作読んだ
んだろうか?
あまり酷評をするのは好きじゃないけど‥未来の邦画を作る
監督さんの為に言うと、これは原作の持つ良さを完全にぶち
壊してしまってる。

原作ではそれぞれのまったく関係のないと思われる人物たちの
物語が微妙に関係していて、それがそれぞれの人間模様に
混ざりあって、ラストに向けて一気に重なりあっていくところ
に面白みがあるのに、映画では4つの物語で終わってるし、
話も時間軸に合わせてしまっている。
4人の監督だから仕方ないのか‥いや、それだったらもっと
違う原作でショートストーリーに仕上げた方がよっぽどマシ。

この原作を扱ってほしくない。ただでさえ映像化が難しいと
思われる原作だと思う。
それは映画には出てこないが、「エッシャーの騙し絵展」と
いうのが原作にはあり、読む側にそれぞれの物語が微妙に
繋がりを見せるラッシュライフというところを、騙し絵のように
読む側に見せているところに面白さがあるから。

仮にそれぞれの4つの物語をとって観ても、人物像の中身を
まったく表現しきれていない。
特に河原崎と豊田のエピソードは最悪。河原崎に関しては
父親に対してのコンプレックスや、その情景シーンもほとんど
なく、赤い帽子の話もない‥そこからくる神と崇める高橋に
対しての執着心が伝わってこない。
そのせいで「神を解体する!」という言葉に、原作で感じた
程の恐れや、戸惑い、期待、焦燥感がない。

豊田に関しては、犬との結びつきがどのようにして生まれた
のか、完全に落ちぶれてしまっていた豊田に戸田が最高の
条件を提示しても、それを拒否する程の理由がどのようにして
生まれたのか、何も描けていない。
この2人の話がこの原作では、ボクは1番良かったと思うから
特に残念だった。

後、映像の撮り方が素人過ぎる。何を撮りたいのかわからない。
人物の感情や、空間をとらえていないから、俳優さんが完全に
空回りしてしまっている。
特に映像に関しては、京子の話が1番悪かった。
あれでは役者さんが可愛そうだ。

これが今の邦画の未来の監督さんたちになるというのが‥
未来の邦画に期待が持てないなというのが正直な感想。
こうして観ると、映画というのは本当に撮るのが難しいんだな
って思う。




【評価】
 (2.5点/5点満点中)

 ラッシュライフ HP

シカゴ

2009-11-15 | 洋画(さ・た)
 シカゴ


  あらすじ 
1920年代のシカゴ。舞台スターを夢見るロキシー・ハートは
「有名にさせてやる」と言った男に騙されたことを知り、怒り
のあまり男を殺してしまう。留置場へ送られた彼女はそこで
憧れのスター、ヴェルマ・ケリーと遭遇。
実はヴェルマはコンビを組んでいた実の妹を殺して捕まり、
伝説のヤリ手弁護士ビリー・フリンを雇って弁護して貰って
いたのだ。それを知ったロキシーもさっそくビリーに弁護を
頼むのだが…。

【出演】
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
レニー・ゼルウィガー
リチャード・ギア




  感想  ※ネタバレ注意

「この街では、銃弾一発で有名になれる。」

ブロードウェイミュージカルの傑作「シカゴ」を映画化。
1920年代のシカゴを舞台に、スターを夢見ながらも刑務所
に収容され争いに巻き込まれる主人公の波乱と、スターダム
へと上り詰める様子を描く。
ミュージカル映画はヒット作に恵まれない状況が続いていた
そのジンクスを覆した作品としても評価されている。



これまでのミュージカル映画を覆した作品として知られる
この作品ですが、もともとミュージカル映画を観始めた
のがここ最近なので、どれくらい一新したものかはわから
ないのですが、ミュージカル自身、ロキシーの空想の中で
描かれているものが多いから、トップスターを夢見る
ロキシーという人間性も表現されていてミュージカルが
嫌いな人でも十分楽しめる作品です。

監督のロブ・マーシャルは、3人の映画俳優をたった2ヶ月
という短期間で見事ミュージカル俳優に仕立てたらしいです。
たった2ヶ月とは思えない仕上がりです。
女たちを手玉にとるリチャード・ギアの悪徳弁護士っぷり
もすごかったし、シカゴという街では、嘘を嘘で塗り固め、
殺人やスキャンダルでさえ、名声の肥やしとして、それを
金に変えられる。それを腹話術のミュージカルで表現する
ところも面白いし、笑えた!

キュートだけど頭のよくないロキシー・ハートが、ビリー
の力で有名になっていく、そしてそれに群がるように集まる
マスコミや、それを利用してお金を巻き上げる周りの人間
そしてすべてを裏で操るのが、リチャードギアが演じる
ビリー‥本格的な歌やミュージカルなら『ムーラン・ルージュ』
がおすすめですが、ストーリーの出来具合や構成も良く
出来ているので、おすすめです☆

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【評価】
 (4.5点/5点満点中)

幼獣マメシバ

2009-11-13 | 邦画(ま・や)
 幼獣マメシバ


  あらすじ 
生まれた町から一歩も出ず、35歳まで実家で暮してきた
ニート男、二郎。仕事もせず、部屋に篭ってブログに熱中
する毎日。母親が行方不明になり、父親が急死しても、
生活を変えることはなかった。ある日、買い物に出かけた
二郎は、赤いスカーフを首に巻いたマメシバの子犬に
出会う。
どうやら行方不明の母親が自分の居場所を探させるために
送り込んだらしい。
子犬など飼う気のない二郎は、犬の合コン=里親探しの
集まりに行くことに。

【出演】
佐藤二朗、安達祐実
渡辺哲、高橋洋
高橋直純、西田幸治
笹野高史、石野真子
藤田弓子




  感想  ※ネタバレ注意

『イヌゴエ』、『ネコナデ』の製作スタッフによる小動物シリーズ
第3弾。35歳ニート男とマメシバの子犬という一風変わった
コンビの心の交流を描く。



ニートで家に籠りっきりの二郎。
家を出る時と言えば、大好物のうまい棒を買いに行くくらい。
小さい頃に行方不明になった母親が、息子の二郎のもとへ
送り込んだマメシバ、一郎。
引き籠りだった二郎が一郎を手放すために里親探しを始める。

とにかくマメシバが可愛いわけだけど、これが初主演の佐藤
二朗。独特の話し方やそのオタクな演技がマッチしていていい。
マメシバの一郎の相手なんて面倒くさいと言いながら、気が
付けば一郎のことばかり考えていたりするw

この子供にしてこの親ありとはこの事かな、始まった時は二郎
は可愛そうなのかな‥と思ったのもつかの間、母親から自分を
探してほしいという思いからか、キーワードがちりばめられた
ハガキが送られてくる。
それをわかっていながら探してやらない一郎。何だか面白い
家族で、父親も一枚からんでいる。

ドラマ版を観ていなくても、映画だけで十分楽しめる作品の
ようなので、マメシバの一郎と二郎コンビに笑って、癒されて
みてはいかがですか?




【評価】
 (4点/5点満点中)

 幼獣マメシバ HP

MW-ムウ-

2009-11-09 | 邦画(ま・や)
 MW-ムウ-
 


  あらすじ 
16年前、ある島の島民全員が死亡する事件が発生。
その事実は、政府の手で一夜のうちに闇に葬られ、事件は
忘れ去られるはずだった。だが、惨劇のすべてを目撃して
いた2人の少年が、神の悪戯で生き残っていたのだ…。
そして現在。地獄を見た少年の1人・賀来(がらい)は、神の
道に救いを求め、教会の神父に。そしてもう1人の結城は、
自分の壮大な計画を遂行するためなら、人殺しもいとわない
美しきモンスターになっていた。事件を隠蔽した関係者に
近づき、次々と地獄へ突き落としていく結城。果たして彼の
本当の目的とは…!?

【出演】
玉木宏
山田孝之
石田ゆり子
石橋凌
山本裕典




  感想  ※ネタバレ注意

手塚治虫“最大の禁忌”と呼ばれた問題作を、実写映画化。
表向きはエリート銀行員だが、裏では罪を罪とも思わず残忍な
復讐を繰り返していく結城を、玉木宏。
そんな結城と経験を共にし、彼の苦しみがわかるからこそ彼を
止められずに苦悩する神父・賀来役に、山田孝之。



映画化にあたって原作にある重要視されている部分が削られて
しまっているので、どこに要点を絞って観ていいのか難しい。
原作は原作、映画は映画と言うならこの映画は『MW-ムウ-』
じゃなくて良かったと思う。
この映画に出てくる結城という人間性”悪魔”のような男だけが
描かれている。

映画冒頭のタイでのシーンに力を入れているのはわかるんです
があまりに長い‥ここで結城が警察相手にどれくらい戦えるのか
見せたいのか、もっと短くて良かった。

それから削られた同性愛の部分だが、結城との間で揺れ動く
姿もそこまでなく賀来のいる存在性が薄いように感じるし、
神父である必要もない。
結城との結びつきも島の生き残りというだけで、MWから守って
くれたかもしれないが、そのせいで悪魔のような人間になった
のなら、それから何のメリットも生まない彼は結城を知る人間
として、真っ先に消されてもいいような設定になってるような気が
まぁそれでなのか、途中海に捨てられてたようなシーンがあった
けどw
でもそれはこの原作において、一番やってはいけないタブー
だったのではと思う。

最大の禁忌と呼ばれた問題作を映画化とされてるが、全然
そんな要素は排除しているし、これくらいの実写化なら
いつでも出来た内容だろうと思う。
もしこのキャストでその部分を削らなければ、それこそ
邦画史上観たことのない映画になったかもしれない。


【評価】
 (3.5点/5点満点中)

 MW-ムウ- HP