夏音

「なつのね」ぶろぐ

通信サービスについて(その2) 新規参入組

2005年08月25日 22時02分07秒 | テクノロジ
さて,昨日の続き.
「モバイル戦国時代」と銘打たれている理由はいくつかある.

1つ目が,先日から受付が始まった無線周波数の新規割り当ておよび無線規格の
普及による新規参入業者による競争の激化.
2つ目が,番号ポータビリティの導入による容易なキャリア乗換え.
3つ目が,FMC(Fixed Mobile Convergence)と呼ばれる固定網との融合.

今日は1番目の話を….
無線周波数の新規割り当てについては,1.7GHz帯をソフトバンクとイーアクセスと
ip mobileの3社,2GHz帯をライブドアとウィルコムの2社の計5社が申請を行う
可能性が高いと見られている(現時点ではまだ申請数0らしい).

総務省が最終的にどのような判断を下すかは分からないが,各社とも「データ
通信サービス + IP電話」をサービスの柱にするようである.しかし,これでは
現在のキャリアと何も変わらない.そこで各社ともユーザに訴求するための
付加価値が必要となってくるが,多くの場合,それは「価格」だと考えられている.

事実,ドコモやauといった既存キャリアの携帯料金は決して安い訳ではない
(ドコモのデータによるとFOMAの場合の総合ARPUは9090円,movaで6190円*1).
しかも,既存キャリアのデータ系ARPUは赤字ぎりぎりのラインであるという話(FOMAで
3100円,movaでデータ1370円),音声ARPUが収益を支えているという話である.

とすると,既存キャリアの稼ぎ所である音声で低価格を訴求すれば,音声を
メインに利用しているユーザの乗り換えを期待できることになる.

では,なぜ,低価格が実現できるのか?という話になるが,答えは単純で
IPを使うから,ということになる.

無線LANの製品を見ても分かるようにIP関連分野には様々な企業が参入し,
競争を繰り広げている.そのため,無線チップを含め,非常に低価格で
端末およびシステムを組み上げることが可能となる.一方,既存キャリアの基地局は
1個億単位のコストが必要とも言われている.厳密な比較にはならないが,無線LANの
アクセスポイントの値段を思い浮かべれば,そのコスト差は歴然である.

もちろん,IPであるために品質管理の難しさといった問題もあるが,Skypeのように
コーデックでがんばることでなんとかなると思っている.

ということで,単純に音声サービスという点で見れば,新規参入組でも既存キャリアと
互角の勝負が出来ると思うが,問題は携帯端末である.

約半年毎に新機種が出る日本の携帯市場では,端末それ自体でユーザを惹き付けることが出来る.
では新規参入組に対して,新たな携帯端末を供給するようなベンダが現れるのだろうか?

現在,携帯端末1台の開発費は数百億とも言われている.ユーザ数も見えないような
新規参入組に対し,これだけの投資を行うベンダは恐らく存在しない.
かといって,新規参入組の中でベンダにそれだけの援助が出来る企業があるかというと
微妙である.もちろん,モジュール化が進んでいる海外の携帯端末メーカを活用することで,
低価格で数種類の端末を開発できる可能性は残っている.しかし,既存キャリアの高機能
端末に慣れ親しんだ日本人ユーザを満足させる端末であるかは別の問題である.

サービス開始時にユーザを集められなければ,ベンダも付いてこないし,厳しい戦いと
なる.ということで,何はともあれ,携帯端末のラインナップを充実させることが勝負を分けると
個人的には考えている.

収益を挙げる別の方法として,元記事にはMVNO(Mobile Virtual Network Operator)のような
無線基地局を含めたシステムの設置,管理・運営を行い,帯域を貸し出すようなサービスも
挙げられているが,顧客情報の管理の困難さといった点から,企業向けがメインとなるため,
ここでは議論しない.

ライブドア等が始めている無線LANサービスについては,完全にデータ系の話であり,
Skypeがどうこうという話ではないということは以前の記事で書いたのでこれもまた省略する.

まとめとしては,既存キャリアの稼ぎ所である音声については,新規参入組でも
十分勝機はある.ただし,携帯端末のラインナップを充実させることがその前提.

とりあえず今日はこの辺で.

*1 NTTドコモ 平成18年3月期 第1四半期業績より