夏音

「なつのね」ぶろぐ

ネットワークについて考える

2006年02月23日 23時06分33秒 | テクノロジ

特許を書いて,そのアイデアをベースにした論文を書いて…と
ひたすら「書く」という作業を続けていたら,ブログの更新が
滞ってしまいました.(×_×;

文章を書く,ことを仕事にしてる方々ってのは,頭というか
モードというか,そういう切り替えがうまいんだろうなと実感.

さて,その間にも梅田さんの「ウェブ進化論」を読んだりして,
今後のネットの進展なんかを考えていたりもしたんだけど,
迷惑メール対策に有効な技術や運用方法とは~業界団体が提言」っていう
記事を読んでちょっと気になったことがあったので書いておきたい.

気になったことというのは,IPネットワークのこと.
Web2.0を中心とした議論は非常に高位レイヤの話として議論が
進められてると思うんだけど,その下にはそれを支えている"IP"の
ネットワークの世界がある.
でも,ネットワーク自体が議論の対象となることは少ないように思う.
そこで,IPという世界がこのまま進化するのか簡単に考えてみたい.

まず,最初にネットワーク世界の流れを書いてみる.
(非常におおざっぱな話しなので,これだけがすべてではない.)

・L1/L2レベルでは技術革新が進み,ビット単価の低下,性能向上が進んでいる.
・L3ではBGPを詐称した経路乗っ取りやワームによるトラフィック増大の問題,
冗長性を持たせることで信頼性を高めるといった経路制御周りの議論が熱い状況.
・L4/L5/L6はプロトコル的な話しになるけど,Web ServicesやSIPが技術として
普及しつつあるかな,という状況.

ネットワークの階層モデルっていうのは機能のモジュール化を進めることで,
相互運用性を向上させたり,機能の追加・変更を容易にしたりすることが
目的で行われきた.

最初にふれた記事に戻るんだけど,記事の中ではスパム対策のため,
SMTP認証といった技術の導入が必要だよね,って議論をしている.
スパムはインターネットが大衆化することで,それなりの商売になるということで誕生したもの.
また,L3で問題になっているBGPの乗っ取りなんて状況も純粋な意味での商売と
いう意味ではないけれど,情報を盗聴することが利益に繋がるからこそ行われている.
そのため,L3でもS-BGPといった認証機構を持つ経路制御プロトコルの導入が
検討されている.さらに上位レイヤのWeb Servicesなんてのはサービスそのもの
だから,これまた当然のように認証絡みの技術が議論されている.

このように,各レイヤで同じような問題を抱えているのにも関わらず,各レイヤで
ばらばらな対応策が議論されている(もちろん,各レイヤで取り扱ってる内容が
違うというのは分かって書いている).今回取り上げた認証だけではなく,例えば,
信頼性向上のための冗長化なんてのも各レイヤで議論されている.
で,このとき問題になるのは各レイヤで最適化を図ろうとして,それが別のレイヤに
とっての最適化に繋がらず,ネットワーク全体としての最適化に繋がっていないと
いうことである.つまり,「1+1=2」になるのではなく,「1+1=1.5」
とかになっちゃっているんじゃないかと.

これってネットワークの管理コストを押し上げることにつながったりしないのかな,
と疑問に思ったわけ.
階層モデルを採用したことのデメリットだと思うんだけど,今後,このデメリットが
どんどん大きくなっていったりしないのかちょっと不安.

あと,インターネットのプロトコルの多くが性善説にたって設計されてきたことの
弊害がインターネットの普及と同時に大きくなってきてる印象もある.
これはこれで面白そうな議論なので別途書いてみたい.