夏音

「なつのね」ぶろぐ

Skype Conferenceに参加して

2005年09月05日 22時11分13秒 | テクノロジ
先日,某所で開催されたSkype Conferenceというものに参加してきた.
内容的には技術的な解説が多くて,Skypeを知るという意味では充実した
内容だったと思う.

今回はそんなイベントに参加して,ひっかかった点が1つあったので,
このエントリを書いてみる.

パネルディスカッションの中で,Skypeは今後も普及を続けるし,ツールとして
重宝してると言ってる方々が,でも大事な電話なんかはやっぱり固定電話が安心,
みたいな発言をしてた.この発言ってどうなん?,と思ったのがきっかけ.

突き詰めて考えると,固定電話キャリアに,Skypeと同じ戦場での競争を
強いておきながら,やっぱり必要だから,死なないでね,と言ってるのかなと.
彼らも利益を追求することを一つの義務としている企業にも関わらず….

政策とか色々な話はあるんだけど,とりあえず出てくるであろう疑問を
中心に話を進めてみる.その疑問はこれ.
「固定電話システムのメンテナンス費用は誰が払うのか?」
この疑問への回答としては,恐らく次の5つ.

1.別の分野での収益を固定電話サービスに回す.
光サービスなのか分かんないけど,そっちで大きな収益を確保し,
その収益を固定電話サービスの維持に回す.

2.固定電話を使う場合の通話料金を高くする
どうでもいい会話はSkypeでどうぞ.ただ,固定電話を使う場合は,
例えば,1000円/1分でも我慢してね,という方法.

3.そもそも競争をさせない
メキシコ等の一部諸外国では既に実施されているようですが,Skypeのような
ソフトフォン関連のトラフィックをストップして,競争そのものをなくして
しまう方法.

4.税金を投入する
民営化のまま税金で補助する,もしくは,国営化する方法.

5.あきらめる
固定電話サービスを終了させる.

1はそれなりにベターな話に聞こえるかもしれないけど,そっちのサービスも
いずれは競争に晒されるという話がある以上,法令レベルでの保護が必要.
法令レベルでの保護という点は,不採算地域と採算地域をセットにして
民間指定業者に任せるといった国策がこれまでも取られてきてた以上,
実施自体には問題はないと考える.
そんな市場を形成できない場合,3もしくは4の政策しかないと思う.
ちなみに,保護と競争のバランスをどう採るかは,政治家のお仕事.

2はSkypeユーザ以外にとってはかなりはた迷惑な話になっちゃうので,
不公平性を改善するためにSkypeを含めたソフトフォンの普及が実現の
前提条件となる.なので,実現性はかなり薄いと考えてもよいと思う.
#弱者は放置,というスタンスもあるけど,とりあえず忘れる.

3,4,5は国策というスタンスでの視点が必要な話.
電話はユニバーサルサービスの一つと考えられているように,インフラ一つ.
インフラが国力を示すパラメータの一つと考えられているように,国として
「電話」をどう捉えるかが問題となってくる.
従来通りの「電話」を維持したければ,3もしくは4しか手段はないと思うし,
従来の「電話」はその役割を終えたと考えるなら,5という選択肢を選ぶだけ.
ただ,総務省の考えとしては,「ユニバーサルサービス基金制度」のような話も
視野に入れている様子なので,4に近いスタンスっぽい.


ということで,まとめになってないけど,まとめ.
Skype(これだけに限らないのですが)を単なる音声サービスの無料ツール,
市場の破壊者として見なして歓迎するだけではなく,「インフラ」といった
視点での検討もやる必要があるんじゃないかな,と思ってみたり.

あと,上では議論していない視点が一つある.
それはSkypeが絶対に切断等の問題を発生させないサービスになる,という視点.
ただ,これはこれまでの固定電話サービスと同じくらいのコストがかかってしまう
可能性もある.なので,Google File Systemみたいな圧倒的な低コストシステムで
実現可能なソリューションを考えないと厳しい予感.