金曜日の夜にN響の定期公演を聴きに行きました。今回はCプログラムで、当初指揮するは
ずであったローレンス・フォスターが、本人の健康上の理由により来日不可能となり代わって、
ジョン・アクセルロッド指揮をしました。
演奏曲目はオールチャイコフスキーで、前半がスラヴ行進曲作品31とピアノ協奏曲第1番
変ロ短調作品23でピアノ独奏は、清水和音でした。後半は、バレエ音楽「くるみ割り人形」
第2幕でした。
指揮者のアクセルロッドですが、アメリカ・テキサス州ヒューストン生まれ、1988年に
ハーバード大学を卒業したとのことですから、今年44歳かと思われます。指揮の師がクリス
トフ・エッシェンバッハとのことで、何となく音のつくりに共通する点があるような気がしま
した。
今回N響を初めて指揮したからだと思いますが、指揮の内容とN響のメンバーからの音は異
なっている感じを受けました。初めての顔合わせであり、時間も少なかったことが原因だと思
いますが、指揮者の指示内容と同等の充実した演奏にはなっていなかったのがちょっと残念で
したが、個人的には好きなタイプの指揮者に入ります。
2004年からスイスのルツェルン交響楽団及び同劇場の音楽監督兼首席指揮者に就任して
いるとのことで、昨年のルツェルン音楽祭ではモーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」の新演出
を指揮したそうです。どのようなモーツァルトにしたのか観てみたかったものです。
40代の若手指揮者の中でも音楽界を引っ張る指揮者の中でも特に頭角を現し、世界中のオ
ーケストラから引く手数多であるといわれているそうですが、演奏を聴いて確かにそうだと個
人的に納得しました。再度アクセルロッドによる演奏を聴いてみたいと正直に思いました。
演奏内容ですが、オールチャイコフスキーにはちょっと抵抗感がありましたが、生演奏でバ
レエ音楽「くるみ割り人形」を聴いたことが無かったので、今回演奏開業に足を運んだ次第で
す。素直に言うと、オールチャイコフスキーのプログラムは、感動が少なく全体的に退屈な印
象を受けました。
特に最初の曲であるスラヴ行進曲作品31は、凡夫の音楽知識不足によるものと思われます
が、時々なんでこのような楽想になるのか分からないと感じる個所がありました。音楽の流れ
は、自然に流れる素直な繋がりが最も重要であると個人的に思っています。
2曲目のピアノ協奏曲第1番ですが、ピアノの清水和音は、堂々とした演奏で非常に良かっ
たと思いました。ただし、弦楽器の中で特にヴァイオリンのパートが今一つ輝きが無かった印
象を受けました。弦のメンバーがAプロと異なっていたのも影響しているのかも知れません。
後半のバレエ音楽「くるみ割り人形」は、楽しく聴くことが出来ました。第1曲から2曲の
情景は、音楽から受ける印象の画像が目に浮かぶような感じを受けました。個人的には第5曲
のパ・ド・ドゥーが良かったと思います。
特に感激したのは、生まれて初めてチェレスタの生の音が聴けたことでした。チャイコフス
キーの曲がどうこう言う前に、とても可愛らしい音にただ感激した次第です。ただし、次回聴
くチャンスがあったとしても多分同じ感激は無いと思います。人間は何事でも初めての経験に
対しては特に感激するものだからです。
次の機会にアクセルロッドの演奏が聴けるのであれば、是非ともモーツァルトの曲を演奏し
て欲しいと思いながら、NHKホールを後にしました。
今回の演奏会に先立って、先日亡くなったN響の名誉指揮者であるオットマール・スウィト
ナーを偲んでバッハのアリアが演奏されました。スウィトナーは、個人的に尊敬する指揮者で
したので先日の訃報を聞いてモーツァルトを指揮する指揮者がまたひとり旅立ってしまったこ
とに寂しさを感じています。ご冥福をお祈りします。合掌