先週の木曜日に東京文化会館で行われた東京都交響楽団第697回定期演奏会を聴いてき
ました。演奏曲目はモーツァルト:ピアノ協奏曲第17番ト長調K.453とエルガー:交
響曲第2番変ホ長調作品63です。指揮はジェームズ・ジャットで、ピアノは相沢吏江子で
した。
東京文化会館は青春時代によくコンサートを聴きに行ったホールで、当時はこの東京文化
会館しかなかったような記憶があります。このホールは良い音の響きが感じられるホールで
NHKホールより良い音がするので好きです。
今回この演奏会に足を運んだのは、モーツァルトのピアノ協奏曲があるのと、エルガーの
曲があったからです。エルガーはどことなくブラームスの香りがするので好きな作曲家です。
2曲とも演奏内容に関しては、満足しました。モーツァルトのピアノ協奏曲を弾いた相沢
吏江子ですが、今回初めて聴きましたがモーツァルトの曲なのにモーツァルトではないよう
な、でもある部分は思いっきりモーツァルトで、とても不思議な演奏をするピアニストだと
思いました。
聴いていて才能があることははっきりと分かりますが、どの部分がどのように素晴らしい
のかを言葉で表現するのは難しいのですが、敢えて言うのであればある極限までモーツァル
トの音を持って行き、それ以上にすると明らかに全体が崩れてしまうぎりぎりの演奏をする
ピアニストだと感じました。
また、彼女の演奏を聴いていて、今まで経験したことが無いような新たなモーツァルト像
が浮かんでくる感じがしました。常にドキドキしながら緊張感を持って聴くことができ、大
いに楽しめました。個人的には、モーツァルトでなく現代音楽の分野がぴったりとするピア
ニストではないかと思った次第です。
一方、モーツァルトのピアノ協奏曲第17番は、それまでのピアノ協奏曲と異なる雰囲気
を持つ曲で、モーツァルトがさらに大きく成長したことを現わす内容となっている感じがし
ます。別の表現をするのであれば充実感が味わえると言ったらよいのでしょうか、何かレベ
ルが高い感じを受けるのです。
エルガーの交響曲ですが、どの楽章もエルガーと分かるような楽想で、4楽章間の重み付
けもあまり感じられず、全ての楽章が独立しているような感じを受けました。また、エルガ
ー独特の哀愁を帯びた流れや、さらに引き締まる感じの部分があり、リズムと音色が作る音
楽の世界感を楽しむことが出来ました。
指揮者のジェームズ・ジャットは、以前NHK交響楽団を振ったときに聴いたことがあり
ますが、ヨーロッパで活躍している指揮者でバランスのとれた音楽を作る指揮者だと思いま
すし、今後期待されている指揮者だと思います。
また、東京都交響楽団ですが、久しぶりに聴きましたが弦楽器が良く鳴っているし、演奏
者のレベルも高いと思われました。今後モーツァルトを演奏するプログラムがあったら必ず
聴きに行こうと思いました。