陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「終着駅」

2015-04-24 | 映画──社会派・青春・恋愛
1953年のアメリカ・イタリア合作映画「終着駅」は、タイトルが示す通り、欧州を横断する鉄道が乗り入れる大きなターミナル駅を舞台にした、男女の切ないラブストーリー。モノクロ映画で時間は夜七時、八時ごろ。黒光りする機関車の車体の重々しさや、真冬の大気に吐き出される蒸気の白さが際だって美しい作品です。

終着駅 [DVD] FRT-280
終着駅 [DVD] FRT-280Amazonで詳しく見る by G-Tools



米国人のメアリー・フォーブスは断腸の思いで、ローマ中央駅から夜七時発の列車を待っています。そこへ、アメリカとイタリア人のハーフの青年ジョバンニが追いかけてきて、汽車を一本遅らせることに。

冒頭からなんともロマンチックな場面で、別れた恋人がよりを戻すハッピーエンドの予感がしますが、じつはメアリーは人妻。夫と娘を置いて逃げるようにローマ観光をした彼女は、そこでジョバンニに口説かれ愛し合ってしまったのです。しかし、荷物を届けにきた甥のポールにことよせて、ジョバンニを拒絶。ジョバンニはなんと彼女の頬をひっぱたいて立ち去ってしまいます。

しかし、ふたりの恋はこれで終わらない。
次の汽車を待つ間に三等の待合室で立ち会った、妊婦とその夫との愛情にほだされたメアリー。折よく反省したジョバンニが登場。列車が走る線路を横切ってという危険を冒してまで駆けつけたジョバンニに思わずこころが傾き、ふたりして人気のない客車で愛を交わしあおうとします。ところが、運悪く駅員たちに発見されてしまい、猥褻罪で逮捕され裁判沙汰にされそうに。

けっきょくは、署長の好意で免罪となり、さんざん足踏みさせられたメアリーはジョバンニに別れを告げてしまいます。自分が引き止めたばかりに、恋人をあわや醜聞沙汰にしてしまうところだったジョバンニも、名残り惜しげに列車から離れますが、惨めったらしくホームにたたき落されてしまう。

主演は「慕情」「武器よさば」のジェニファー・ジョーンズ。エキゾチックな顔だちの美貌の持ち主ですが、昨年(2009年)お亡くなりになりましたね。
お相手役は「赤い河」で銀幕デビューを果たしたモンゴメリー・クリフト。「陽のあたる場所」の野心のために女性を殺めてしまう罪深い青年役が有名ですね。

監督はイタリアのネオ・レアリスモの期首にして、演劇界のスターでもあるヴィットリオ・デ・シーカ。1948年の「自転車泥棒」もいい映画でした。1951年の「ミラノの奇蹟」で受賞。ソフィア・ローレンがヒロインを務めた1970年の監督作「ひまわり」でも、列車を舞台に別れ別れになってしまう男女の悲恋を描いていますね。
脚本は1946年の「靴みがき」以来、パートナーシップを組んだチェーザレ・ザヴァッティーニ。

(2010年1月8日)

終着駅(1953) - goo 映画


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アニメ「クロスアンジュ 天... | TOP | プレイバック昭和 »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 映画──社会派・青春・恋愛