
芸術系ヲタクだったかつての私のパソコンスキルがかなりの初級レベルだった、という事実をかつてブログ上で暴露したことがあります。
私がこれに気づいたのは、ある国立大学の契約職員に採用されたときのことでした。
高卒のいかにもお局さまなお姉さんが、サクサクとExcelで教官の日程表を修正したり、PowerPointのスライド作成をしたりしている横で、私はExcelにあった計算式を消してしまったり、オートコレクトすらも使いこなせなかったりで、呆れられていました。院卒なのでプライドだけは無駄に高かった私は、その職場を数箇月で辞めてしまいました。おまけに当時、並行して勉強していた社労士の受験も失敗してしまい、散々な時期でした。
たしかにそのお局事務員さんはキツかったですが、Excelもろくに使えず、教えてもらう姿勢で自らテキストを買って学ぼうとしない私の甘えにも問題がありました。いびられて当然だったのです。そのお局は態度は傲慢で無駄なお喋り好きでしたが、イザ、事務仕事をさせるとマルチタスクをさっくりしあげているので、教官たちから信用が厚い。学歴だけは高いが無能だった私が大学での仕事を失ったのは当然でしたでしょう。ましてや、首切りしやすい非正規ならばなおさらです。職場で仕事ができないひとには、基本的人権などないのですから。
しかし、今ならば、私はExcelデータの作り替えなどお茶の子さいさい。
勤め先では決算処理に必要な下地のデータづくりも、インボイス対応のための外注明細書も時間はかけますが、ひとりですべてつくれます。社内で誰かが教えてくれるわけでありません。正社員、しかも総務経理の責任者だからできて当たり前です。
非正規職を転々としたあの当時、Officeソフトを使いこなせなかった私は。
組織で働くことを舐めていました。正社員じゃないのだから、新人なのだから、とりあえず入社入職すれば、働くために必要なことは手取り足取り職場の上司や先輩に教えてもらえるだろうと思いこんでいたわけです。30代でこの態度では会社で落ちこぼれて当然でした。
あたりまえなのですが、非正規だろうが、正社員だろうが。
事務系ならば、そこそこ仕えてあたりまえな、Word、Excel、そしてPowerPointも。Accessとか、ほかにも社によっては使える人が欲しいアプリもあるでしょう。そうした操作はそもそも入社前から身につけておかねばならなかった。しかし、ブログ執筆でWordに文書をベタ打ち、論文書き時代も目次すら作成できなった私は、得意だったWordすらも使いこなせていませんでした。Excelならばなおさらで。
私が得意だったのは、IllustratorやPhotoshopのような画像編集ソフト。
大学院生時代の論文の画像データや、その後の企画編集職で鍛えたからです。ディスプレイ業界の企画編集職では、専任デザイナー以外にそれを扱えるのが私だけでしたので、社内では一目置かれ、経理事務の男性までもが教えを乞いにくるぐらいでした。なので、私はAdobeソフトが使えることに慢心していたのです。本当に必要なのは、彼ら経理や営業さんが培かってきた業務能力だったのに。
けれども、そうした機能も、現在ではWordに標準装備されており、Adobeソフトが使えることがステータスではなりつつあります。これはOfficeソフトもそうで、WordはGoogleドキュメントに、ExcelはGoogleスプレッドシートでも代用可能で、オンラインで共有できるようになっています。こうした新しいサービスも、派遣仕事で知った事実でした。
画像加工ができるソフトが使えるというだけで。
私はパソコンスキルがあると思いこんでいましたが、実際はそうではありませんでした。貨車の正社員として安定して働くためには、組織の中枢部にいる職種を狙う。そのために必要なスキルはとくにExcelや会計ソフトの操作力。この事実に気づいたときには、すでに私は40歳になっていました。よく、これで正社員復帰ができたものです。
l引きこもり生活が長くなると、クリエイティブごっこに勤しみたくなります。
動画やゲームの作成、タブレットのお絵かき。画像加工、原稿の編集や版下作成。極めれば実に楽しい作業ですが、現実の社会では、すぐに役に立つパソコンスキルではありません。就職活動に必要な基本的なOfiiceスキルを身につけた方が無難なのです。
そもそもデザイン系ソフトが使えても。
独立起業するならば、自分で経理作業をしたり、請求書や契約書を発行せねばならないので、WordやExcelも使えないと、取引先から信用を失います。これは高度な士業資格を取得しても同じです。いざ開業しようとしても、本に書いてあるような知識を並べたとしても、満足に書類も作れないのでは顧客は逃げてしまうでしょう。
しかも、中高年が今さら身につけても、転職活動でそこそこ待遇のいいホワイトカラーの職種にありつくは困難。田舎ならばなおさらに。だからこそ、これからしっかりとしたキャリアを築く若い皆さんにはこの真実を知っておいてほしいのです。パソコンは誰かが教えてくれるわけではなく、パソコン教室に通ってもビジネスに必要な文書作成は教えてくれたりしません。自分で目的意識をもって、具体的にどんな業務のために、どんなデータをつくって活用したいか、そのためのデザインや保守に必要なことは、というふうに綿密に組み立てないと、そのスキルは自分のものにならないのです。テキストを買って自分はこれを勉強していますよ、とITスキルアップしている自分をツイッターでつぶやく暇があったら、実地の練習を重ねていきましょう。
(2023/07/23)