陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

大正版神無月の巫女を公式でぜひとも!

2023-11-03 | 感想・二次創作──神無月の巫女・京四郎と永遠の空・姫神の巫女

(介錯 @Kai_Seven_ 2023年10月1日のつぶやきより)


2023年は神無月の巫女19周年記念!
ファンの間では10月1日が主人公の来栖川姫子と、姫宮千歌音の誕生日と認定されていますが。アニメの初放映日はSNS経由の情報によれば、10月2日なのだそうです。へ~、そうなんだ。これは最近、百合もの×ロボットアニメの食い合わせとして引き合いに出された「機動戦士ガンダム 水星の魔女」もそうらしくて。

2004年10月2日は何曜日? ウェブ調べでは土曜日だったそうです。私が当時地上波で観たKBS京都は、月曜深夜だった記憶がありますけどね。実質火曜日か?

それはともかく、今年の神無月のはじめ。
公式サイドからは嬉しいサプライズ。なんと、神無月の巫女大正編についての、つぶやき。2021年末の姫神の巫女公式同人誌「HIMEGAMI AFTER」でもほのめかされていましたが。






今回の大正版ひめちかのツイート、2019年にあったものと思われます。
これは、そもそも原作者の介錯先生の公式私設サイト介錯学園にあったラフ画をデジタルでペン入れしたもの。

この鉛筆書き原画は原作漫画第二巻が刊行された2005年5月頃と推定され。
「介錯いろいろ準備号」(というタイトルだったかな?)として、現世の姫子と千歌音が表紙を飾るものだったはず。ひぐらしのなく頃にかなにかの二次創作同人誌に附録の、4頁ほどのコピー本でした。

で、私も2005年版のそのラフ画の方を先生のHPで拝見した身ですが。
そのときは、最終頁には鍾乳洞の一面カットだけで終わっています。しかも「大正十二年夏」だったはず…。そう、現在の2023年からは一世紀前のお話なのですが、春に変更されているのですね。しかも最終コマの、快活な姫子と病弱千歌音ちゃんのかけっこラストは後年加筆されたものです。夏だったらあの関東大震災の直前なのですけども、春に前倒ししたのは何かの理由が…?

これに色がついてデジタル向けに清書されたものが、著作者のツイッターで発表されたのが、2019年。これが今年再掲載されたもののはず…。姫子がほんのり桜、千歌音が藤いろ、というパーソナルカラーに色付けされているのがポイントです。2019年だから、神無月の巫女15周年。漫画姫神の巫女のリーク情報がある前年ですね。

さらにその5年前、2009年にはこんな驚きのつぶやきも。



2009年時といえば、ちょうど絶対少女聖域アムネシアンの連載前か。
このつぶやきに、柳沢テツヤ監督も「これやりたかったですよねえ」と反応していますので、アニメ化の動きはあったのだろうと思われます。「ハザマノウタ」のアニメ化が企画倒れに終わったあとでしょうか。





でも、この2009年時の企画書ラフ画では、あきらかに姫子と千歌音は、神無月の巫女にある前世のふたりとは微妙にキャラデザが異なっていますよね。
ですから、当時は、神無月の巫女世界線と直接つながる時間軸ではなくて。京四郎と永遠の空とか、アムネシアン、あるいは姫神の巫女みたいな、平衡同時世界上のひめちかだった可能性が高いでしょう。

2009年のこの謎の下書きでは、姫子はいかにも闊達な自転車とか乗りこなしてそうな女学生。千歌音はひ弱そうどころではなくて、セーラー服に日本刀なんていう典型的な闘うヒロインモデル。洋服だから、たぶん、マリみてのリリアン女学園みたいな、お嬢さま御用達のカソリック系女学園にでも通っていそうですよね。どういう世界観だったのかしら。

もはや、2005年初出の大正版ひめちかとは似ても似つかぬふたりです。そう、だから驚きだったわけでして。
この横に探偵役の強面おじさん(狂言回し役か?)がいることからも、江戸川乱歩とか山田風太郎の小説みたいな雰囲気だったのかもしれませんね。神無月の巫女のブックレットでの発言から、脚本家の植竹須美男先生が「幻燈辻馬車」のファンだったらしいから。

大正時代と言えば介錯先生の代表作「鋼鉄天使くるみ」の舞台が大正中期、そこから大正百年の世界へ主人公の少年が飛んでいく…とか。綾小路博士とか、鋼鉄天使とか、京四郎と永遠の空との共通点もちらほら。ウィキペディアを見たら、けっこう壮大な設定のつくりこみをしていたようですが、基本、この作品、少年と人外少女とのラブコメなんですよね。神無月ワールドみたいな重さがあるわけではなし。

大正版神無月の巫女があったとすれば、実は神無月の巫女世界のような巨大ロボットではなくて。
鋼鉄天使、絶対天使みたいな等身大の人造人間とのバトルになったファンタジーだったのかもしれません。神無月の巫女原画集とかで、それぞれの時代にあった神々のすがたをとっていた、という説明があった覚えがあります。

ところで、大正版といいますか、そもそも神無月の巫女の前世編は、ひそかにファンの間では望まれてきた幻のエピソードでもありました。

2009年あたりまでの某無料掲示板運営のSS投稿掲示板やら、ピクシブやらでは、いくつかの前世ひめちかを描いたファンアートがつくられています。日本人のみならず、海外の、中国語圏(台湾人?)の方とみられる個人サイトに英語版の小説もありましたし、ピクシブに和風ファンタジーふうの同人漫画やら美麗ラストもちょこちょこありました。ウェブ上にはそれらしき痕跡が見つかるのですが、コミケに行かない私が知らないだけで、個人ファンが同人誌(エロ創作含め)として発表していた可能性もありますね。今はないのですが、戦国時代が舞台の前世のひめちか二次創作の小説が、個人サイトの字書きさんによって書かれたものもありました。

2005年頃に大正版ひめちかのラフ画が公式発表されたときは、ファンの間で話題になっていて。
当時の個人ファンサイトさんが「神無月の巫女の続編を想像しよう大会」みたいな企画掲示板がたちあがって。姫子がお嬢さまで、千歌音ちゃんはちょっと控えめな孤児だったとか、ソウマくんもどきな青年将校のフィアンセが姫子にいたとか、いかにも明治大正時代の少女漫画にありがちな設定が嬉々として語られていたように記憶しています。

もし、現在の来栖川姫子と姫宮千歌音の直線上の過去にあたる「ひめこ」と「ちかね」がいた場合。
そのふたりはどんな人物だったのでしょうか。2005年のラフ画にもとづけば、病弱でお邸のベッドでは寝てばかりの千歌音、そして陽気で明るくて恋にもアグレッシブな姫子。たとえが古いですが、車椅子の不幸な少女クララを歩かせるハイジみたいなイメージでしょうか。姫神の巫女の千華音ちゃんも強いんだけど、都会では積極的な媛子に振り回されている(笑)あたりは、前世編ひめちかに近い関係がありますよね。このふたり、本質的にどの時代でも変わらないのかも…。

神無月の原作漫画では、現世の千歌音が前世の姫子のことを愛おしく思い返し、その記憶の縛りのために世界封印の犠牲になる顛末が明かされます。
また前回の封印から時間が経っていないとあったので、わずか数十年で月の社の封印が解かれ、巫女が転生してしまったことも、社の階段をのぼる千歌音の回想から語られています。となれば、オロチの封印という義務を破ってまで、千歌音の強烈な想いが前世姫子の魂を招き寄せたのか? アニメ版では姫子はとても印象的なまぶしい笑顔で息をひきとるので、満足していそうですが。そのあと、千歌音は何年そのことをひきずったのでしょうか。その苦痛、想像するだに余りあります。

現世では姫子がわがすっかり巫女の記憶を失っていたこともあり、このふたりの前世での悲劇に対する向き合い方に格差があったわけですね。そこに大神ソウマの恋情も加わり、そのための恋愛上のイザコザがあったのですが。

じゃあ、もともと、姫子と千歌音がはじめから巫女としての使命を認識していたり、誰彼からもじゃまだてされずに素直に思い打ち明けていればどうなったか、そんな世界線があったらと思いますよね。千歌音は姫子に人生を救われたと思うほどの恩義を感じていて、けれども、世界を救うためにはその人の命を奪わねばならない。そこにはどんなドラマがあったのか。今ふたたび、公式の美麗な絵とダイナミックな演出のストーリーで拝んでみたい気がします。

大正版神無月の巫女の難しさはいわゆるゼロエピソードなので、主要人物の今後が最初からわかってしまうところですね。
でも、そこに至るまでにどんな愛憎劇があったのかをファンは知りたいわけでしょう。オロチ衆がいたとすれば、どんなメンバーだったのか、とか。どういう戦い方をしたのだとか。アメノムラクモにふたり乗り込んで、どう動かしたのかとか。舞台はやはり鄙びた寒村の天火明村だったのか。それとも、2009年のラフ画でみるに、いかにも帝国東京の、軍人たちが闊歩していて、華やかな女学生文化ただようネオ大正ロマン世界だったのか。そもそも、このふたり、どんな出逢い方をしたのか、とか。

2005年の最終コマにある鍾乳洞は、2004年の原作漫画でも登場。
アニメには登場しなかったはずですが、ここで千歌音が姫子に…というあの問題シーン。封印の社がある月砂漠とは異なるのですが、設定上、どういった関係があるのでしょうね。アニメでカズキ兄さんとユキヒトさんが発見した巫女の真実が描かれていたらしき壁画がある洞窟と同じ場所なのか。前世千歌音ちゃんがかぶっていた赤いアギトの仮面とか。

アニメの前世ふたりだと紅をひいて大人っぽいのですが。
この、というか2019年でリファインされた大正ひめちかだと、すこし幼めに見えますよね。てことは、16歳じゃないのかも? 春画を見て房中術学びましたな、いたずらっ気ありの姫子、病人にそんなけしからんことしていいんかいと思わないでもありません(爆)

当時のアニメや漫画では明かされなかった裏設定もいろいろありそうで、想像したら面白そうですね。想像するだけで一週間は楽しめそうです。

神無月の原作漫画では、天火明村と乙橘学園そのものがオロチや巫女の因子をもつ子どもたちを集めるための舞台で、神々の力を掌握して世界支配をもくろみたい豪族姫宮家の当主の狙いがあったことがほのめかされています。
大正時代編でも、同じ歴史軸だとすれば、病弱千歌音ちゃんの寝ている天蓋付きベッドはやはり姫宮家のものなので、千歌音も姫宮家の関係者ということになろうかと。前世姫子と死別したあとの、その後、生き残った千歌音がどんな人生をたどったのかも気になりますね。徴兵逃れの学生たちや、ホロコースト生還者、大災害や山岳遭難事故の救出者にまつわるメンタル不全、いわゆるサバイバーズ・ギルトを抱きながら涙ながらに幸せに生き延びようとしたのか、それとも…。喪失をのりこえた千歌音のすがたは、いってみれば、アムネシアンでも表現されなかったわけではないのですが。

私たち神無月の巫女のファンが観たい大正版神無月の巫女のすがたとはどういったものでしょうか。
気弱な千歌音ちゃんをしっかりリードするお姉さん肌の姫子。現世の凛々しい千歌音ちゃんとのギャップがある儚げな薄幸の美少女千歌音。周囲にはどんなざわめきの人物たちがとりまいていたのか。襲い掛かる試練の数々をふたりでどう乗り切って信頼を深めたか。ふたりの愛に裏切りがあって、けれども、乗り越えていった矢先に知った悲しい真実。その逃げられっこないさだめに、姫子と千歌音はそれぞれどんな決断を下したのか。そして、世界再生後にどんな結果が待ち構えていたのか。未来永代に渡る愛をどう築いたのか。

読者が遡及的に知るふたりの前世は「血まみれの真実」ではあるにせよ。
公式が発表するというのならば、やはりそれは希望に満ち溢れたラストで締めくくられるような気がします。殺し愛とかいう、昨今の猟奇的な百合ジャンルの側面ではなくてですね。そうであってほしいという、私の願いでもありますが。

たいがい公式さんが消費者サービスとしてファンの要望にこたえた続編なり外伝を出しちゃうと、コレジャナカッタ感がつのる人もいそうですけども、不満があれば自分で二次創作なり、妄想なりをつづって解消すればいいじゃない、が私のモットーです。百合ジャンルはかなり多様化して、個々人が自分の好みにあったものをいくらでも選べる時代なのですからして。

この企画、漫画なり、アニメなりで、ぜひとも実現化してほしいものですね。
来年が20周年ですから、その前振りで匂わせだったのでしょうかね。この幻の大正編を待つ20年近くばかりの間に、われわれファンも、そして公式側も、世間さまも、喪うものが多かった年月でしたね。


(2023/10/09)

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