陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

読書家の情熱が消えるとき

2024-08-17 | 読書論・出版・本と雑誌の感想

私のゆいいつの楽しみは読書。
誰彼気兼ねなくひとりでできる楽しみですし、知識欲も満たせ、生活に必要な情報も手に入ります。ウェブ上のやや偏見じみたニュースサイトより速度は落ちますが、信頼のできる識者ならば安心して読めます。不安症な自分にはぴったりです。

これまで身内が亡くなったときも、経済的に苦慮にあえいだときも、仕事を失ったときも、どんなときでも本だけは手放しませんでした。断捨離で蔵書は減らしたけども、自分の周囲からまったく活字を遠ざけたことはありませんでした。

その私が三箇月ぐらいまったく本が読めなくなることがありました。
いや、本どころか、ネット上の文章も、自分のブログでさえも。ブログはその時期、予約投稿をまばらにしていたので稼働はしていましたが、新規投稿がまったくできず。

理由は仕事上のストレス。詳しくは書きませんが、職場でひどい扱いを受けました。病院にも通い治療を受けましたが、一時期、寝込んで動けない状態が続きました。血の気がひいて倒れ込んでしまったり、ひどい頭痛で吐き気がしたり。会社は休職中にも、いろいろな嫌がらせをしてきました。

文字の詰まった小説はまったく読めなくなりました。
週に一度の習慣だった図書館通いもストップ。せめて家にある積読本を消化しようかと思っても、目が滑って読めない。内容がまったく頭に入ってこないのです。泣きたくなりました。

毎日まいにち職場のことを考え、将来を悲観して。
以前はなにか迷いがあると、図書館か書店へ答えを探しに本を尋ねたものですが、その時期は、なにか答えを与えられるのを怖かったものです。ノートに日記めいたものを書き残していましたが、字が書きなぐりで読めない。失語症に近く、同居人とも対話することすらできないままでした。

現在も多少、こうした症状は残っていますが。
やっと、小説本一冊は読み通せるようになり、感想も書けるぐらいになりました。ただ、極端にブラックな内容のものは駄目で、負荷かがかかります。

さて、この本が読めなった期間、私の慰めだったのは。
なんと、ここ数年まともに観ていなかったテレビ。バラエティやドキュメンタリー、そしてドラマが中心。電波状況のせいで映る放送局が限られているので、若い頃よく観ていた深夜アニメではなく、夜の時間帯のドラマの再放送が多いですね。

メンタル不調にくわえ、過労と共に衰えてきてしまう視力や聴力が実写の映像作品を流し見することで鍛えられた気がします。
もし今後、また本が読めなくなってきたら、図書館にあるオーディオブックを利用しようかと思っています。

十年ほど前まで文字がぎっしりつまった六法全書や資格のテキストなどを読みこなしていましたが、今となってはもう無理で。イラストや図解の多い本か、ビギナー向けのコミックエッセイ的な本を好んで借りています。

かつて、あれほど改行が多くて空白が広すぎるような本は大嫌いだったのに。
今では薄くて、軽くて、一時間ほどで読めてしまうような本ばかりを好むようになりました。自分の読書家としての高慢ちきな情熱が消えてしまったことに驚いています。嘆かわしいのは、新しい物語を読んでもあまりこころを大きく動かされなくなったことです。自分はもう読書をして成長をすることができなくなったのだと思うと悲しくなります。


(2024.06.05)














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